Web3.0とは何か
スマートフォンやパソコンが普及した現代、インターネットは社会のインフラとして必要不可欠です。インターネットは1990年代から急速に発展し、現在はWeb3.0という段階に到達しました。「Web3.0とはどんなもの?」と子どもに聞かれたときのために、基礎知識をおさらいしましょう。
インターネットの進化系
Web3.0は、インターネットの進化系です。インターネットの世界にはWeb1.0やWeb2.0があり、さまざまな技術革新を経てWeb3.0に進化しました。
Web3.0は「分散型インターネット」と呼ばれます。これまでのインターネットは、GAFAM (Google・Amazon・Facebook・Apple・Microsoft)と称される大手テクノロジー企業が市場を独占していました。
無料または低価格でサービスを提供することで、ユーザーの情報やデータを集め、市場をコントロールしていたのです。このような「中央集権型」のネットワークには、運営元のルールにユーザーが縛られるという問題がありました。
最新技術を活用して情報やデータを分散管理し、GAFAMの支配から脱却する試みがWeb3.0なのです。
Web3.0が注目される理由
Web3.0が注目される理由の一つは、GAFAMの独占支配に対する反発です。GAFAMはインターネットを通じて個人情報や各種データを収集しますが、それらがどこでどのように使われているのかが不透明な部分があります。
情報漏えいや不正利用のリスク、運営側の都合による利用停止の問題もあり、自分の情報は自分で管理したい人が増えているのが現状です。
日本は他国に比べて資源が乏しい国であるため、デジタルの力で産業を盛り上げていく必要があります。経済産業省はWeb3.0を大きなビジネスチャンスと捉え、デジタル庁と協力しながら普及を進めています。
Web3.0に至るまでの道のり
インターネットの歴史は、「Web1.0」「Web2.0」「Web3.0」の三つの時代に大別されます。Web3.0を理解するには、インターネットが進化してきた過程を知る必要があるでしょう。
一方通行型のWeb1.0時代
1990年代から2000年代前半は、Web1.0時代と呼ばれています。1995年に「Windows 95」が発売されたのをきっかけに、会社はもちろん、家庭にもインターネットが普及しました。
Web1.0時代のインターネットの特徴は、「一方通行型」であることです。情報の送り手と受け手が固定されており、情報は送り手から受け手に対して流れます。基本的に「コメントを書き込む機能」はまだ搭載されておらず、ユーザーはサイトの閲覧にとどまっていました。
コンテンツは、htmlを用いた「文章中心のサイト」が主流です。通信速度が遅く、サイトに画像や動画はほとんどありませんでした。
双方向型のWeb2.0時代
2000年代後半からは、Web2.0時代に突入します。Web1.0時代は情報が一方向にのみ流れていましたが、Web2.0時代では情報が双方向に流れるようになります。「閲覧型」から「参加型」に変化したともいえるでしょう。
2005年前後からは、SNSをはじめとするコミュニケーションサービスが普及し、ユーザーが自ら情報を発信する風潮が生まれます。
Web2.0時代のもう一つの特徴は、GAFAMによる情報独占です。巨大企業に個人や企業の情報が集約され、インターネットの社会は「中央集権型」となりました。
Web3.0の主な特徴
Web3.0では、Web2.0時代の欠点や問題点が克服されています。中央集権型のインターネットしか経験したことがない私たちにとって、「分散型インターネット」をイメージするのは少し難しいかもしれません。Web3.0の特徴を詳しく見ていきましょう。
ブロックチェーンを基盤とする
Web3.0には、「ブロックチェーン」という新たな技術が使われています。簡単にいえば、取引の記録を「ブロック」としてひとまとめにし、時系列にチェーンのようにつないで保管するデータベースです。
一つのブロック内の情報を変えたい場合は、後続する全てのブロックの情報を修正しなければならず、情報の改ざんや消去が極めて難しいのが特徴です。元々はビットコインなど、暗号資産を支える技術として使われていました。
取引の記録は、複数のコンピューターで分散的に処理・記録されることから、「分散型台帳」とも呼ばれています。
ユーザーにデータの所有権がある
Web2.0ではユーザーは自由にコンテンツを利用・作成できますが、必ず特定のプラットフォームを通す必要があります。データの所有権はプラットフォーム側にあるため、ユーザー側は関連の利益が得られないばかりか、プラットフォーム側の一方的なサービス停止により、データが消失してしまうケースもありました。
Web3.0ではユーザーが自分のデータを暗号化し、ブロックチェーン上に保存します。データの所有権が個人に集約されるため、共有先や使い方を全て自分で決められるのです。
個人同士が直接的につながれる
Web2.0ではプラットフォームを利用するため、「アカウント登録」が必要でした。アカウント登録では、名前や連絡先のほか、クレジットカードの番号も登録しなければならないケースがあります。万一、個人情報が漏えいすれば、第三者による不正利用のリスクが高まるでしょう。
Web3.0では特定のプラットフォームを使う必要がなくなります。情報漏えいや不正利用の可能性はゼロとは言い切れませんが、ブロックチェーンの安全性は極めて高いといえます。
そのためWeb3.0では、ユーザー同士が直接的につながれます。ブロックチェーンによって、国内外の不特定多数のユーザーと安全に取引ができるようになるでしょう。
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Web3.0が各分野にもたらす変化とは?
Web3.0の中核となるブロックチェーンには多くの課題が残っており、各分野での応用はまだまだこれからです。今後Web3.0が主流になると、私たちの生活はどのように変わるのでしょうか?
教育分野
現在の学校教育は、文部科学省・教育委員会・学校が取り仕切る「ピラミッド型」です。教育課程が用意されており、教員はマニュアルに従って授業を進めます。
Web3.0が導入されると、学びがより自由で自発的なものになるでしょう。教員が教えたい授業を作成してオンラインで公開し、学生が学びたい授業を選択する仕組みも整えられるはずです。
さらに、教育機関において、学位や研究データなどの不正防止にブロックチェーン技術が使われるでしょう。
Web3.0時代は、インターネット上の仮想空間「メタバース」が登場します。日本にいながら、海外の学校のプログラムに参加できるようになるかもしれません。
医療分野
医療分野では、メタバースを活用した「オンライン診療」が登場します。患者は自宅にいながら医師の診察を受けたり、リハビリプログラムに参加したりできるようになるでしょう。
一部の病院では、電子カルテをブロックチェーンで暗号化処理する取り組みがスタートしています。患者の健康データを収集して安全に用いることができれば、それぞれに合った治療やヘルスケアを提案できます。
本人専属の「パーソナルAI」とうまく組み合わせることで、治療やケアの効果も高まるでしょう。
エンターテインメント分野
これまでクリエイターというと、一部の職業を指していましたが、将来は誰もがクリエイターとして活躍できるチャンスに恵まれます。NFT化したデジタル作品の取引により、無名の個人クリエイターでも一定の収益を上げられるでしょう。
NFT(Non-Fungible Token)とは、ブロックチェーンを用いた「代替不可能なデジタルデータ」を指します。従来はいくらでもコピーが可能なデジタルアートに、資産的な価値を与えるのは困難とされてきました。
しかしNFT化によって唯一無二のデータであることが証明できれば、リアルアートと同じように市場での売買が可能となります。今後は、メタバース内にさまざまなコミュニティーが形成され、個人間での取引が活発に行われるようになるでしょう。
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Web3.0の基礎知識は小学生にも必要
Web3.0は、Web2.0の欠点や問題を解決するために開発された次世代のインターネットです。発展途上ではありますが、今後は徐々にWeb3.0を活用した新たなコンテンツやサービスが生まれるでしょう。
現代の小学生は、デジタルやバーチャルリアリティーと親和性が高い「α世代(アルファ世代)」に該当します。これからの時代を担う存在として、Web3.0の基礎知識を知っておく必要があります。この機会に、親子でWeb3.0が描く未来を話し合ってみてはいかがでしょうか。
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構成・文/HugKum編集部