熱気にあふれたフリースクール『花まるエレメンタリースクール』へ! 圧倒されるほど積極的な生徒たちも「みんな最初は全く別人だった」

“メシが食える大人に育てる学校”をテーマに、2022年に開校した『花まるエレメンタリースクール』。不登校を経験した子どもたちも、ここには前向きに通い学んでいると聞き、スクールを見学させてもらって校長のHAYATO先生に話を聞きました。そこには想像を超えた、熱気にあふれた空間が広がっていました。

『花まるエレメンタリースクール』とは?

公立・私立・フリースクール・インターナショナルスクールとは違う、「新しい学びの場」「新しい居場所」となる選択肢を子どもたちへ届けたいという想いから、幼児教育・学習塾の『花まる学習会』が立ち上げた新しい学校。それが『花まるエレメンタリースクール』です。学校に通うことが難しかった経験を持つ、小学1年生から6年生までの約100人が在籍。課外授業や部活動も活発です。

校長のHAYATO先生とはどんな人?

お話を聞いたHAYATO先生
お話を伺ったHAYATO先生

林隼人さん/中学校の英語教諭を経て、サッカーやキッズチアを通じて英語を学ぶスクールや、農業を通じてお金の価値などを学ぶスクールを開校。現在は『花まるエレメンタリースクール』の校長を務める。

教室は熱気むんむん!元気な子どもたちの姿に圧倒された

“メシが食える大人に育てる学校”というテーマの通り、生徒が主体的に動くプログラムが多い『花まるエレメンタリースクール』。

今回、わたしたち取材班が訪れたときは、数週間後に行われる『クリエイティブOne day』に向け、全学年の生徒たちで話し合いをしている真っ最中でした。『クリエイティブOne day』とは、先生に頼らず、内容・スケジュール・役割を自分達で決めて過ごす1日で、当日は先生役も子どもたちが担います。

司会をしていたのは3人の生徒。「朝の会は何時からにする?」「お昼ごはんの時間は短くてもいい?」「時間短縮するにはこうするといいよね」などと投げかけます

手を挙げて意見を言う人も多く、見ている側が圧倒されるほど活発な話し合い。入学当初からみんなこんなに積極的だったのでしょうか?

HAYATO先生「癇癪を起こす、手を上げてしまうなどの問題を抱えていたり、女の子のほとんどは人間関係で悩んでいたり、ここに来る以前はフリースクールを転々としていた子もいて、みんな今とは全く別人でした。
今はみんな自分らしさをむき出しに発言したり、仲間と混ざり合ったりしていますが、しばらくは周りに気を使って遠慮して言いたいことを言えない子もいます。もちろんすぐここになじんだわけでなくて、2日で辞めたい、一週間で辞めたいと言った子もいます。
それでも通うようになって、やっと本音で語り合えるようになったり、本当の自分らしさに出会えたりなど変化があって、今はそれぞれが人生を自分事として捉え、リーダー的な役割を果たすことも。場数を踏んでほしいので、こういう場での司会は順番にやってもらっています」

生徒たちに人気のお茶班。来客へのお茶出しも生徒たちが行います。この日も美味しいお茶を淹れてくれました

先生から子どもたちへ「愛」を伝えることも

子どもたちが積極的に発言する姿にも驚かされましたが、それと同じくらいびっくりしたのが話し合い中、先生が必要以上に口出しをせず、見守っていること。また、先生も輪のなかに座っているため、アットホームな雰囲気です。

1日の最後には、先生たちが子どもたちに「愛しているよ」と素直に伝えていて、彼らにとって安心できる居場所となっていることを実感しました

多動だからこそ動かす! 行動して実際に見てみる!

教室のなかだけでなく、外に出て学ぶ授業が多いのも特徴で、フリーマーケットをやることになると、子どもたち主導で近隣の商店街に出て行ってチラシを貼ってもらったそう。

ほかにも100円で買ったペンを持って外へ出て、街の人に「いくらで買ってもらえるか」交渉するという授業も。わらしべ長者のような形で、結果1000円で買ってもらった班もあったそうです。

どんなことも通常の学校のように机の上だけで考えるのではなく、「ラーメンはどの味が人気なんだろう」と思ったら、実際に足を動かし街の人の声を聞きに行く。このときは1時間で200人に聞いたそうで、300人に聞きたいからと放課後に聞きに行った子もいたそう。

HAYATO先生「子どもはみんな多動な部分を持っていると思うんです。だから特別僕らが何かしてるっていうよりは、多動だから動かす 、行動させる。今は頭でっかちばっかり育っているので、行動して実際に見てみないと本当にわからないんで。そんなトレーニングをどんどんやっています。
人が苦手な子は特に度胸がいりますが、ひとつひとつ課題をクリアしてくと物怖じせず話しかけられるようになっていきます。全然平気になるんですよね。
そうするといろんなものに活きてきます。例えば困ったことがあった時に人に話しかけて解決する。するとそこに自信がついて『何でも自分で出来る!』となった子も多いです。
不登校だからじゃなく、悩んだ子は強いという視点で、預かった子のいいところを思いっきり伸ばそうという想いで日々子ども達と接しています」

こんなに多くの人がいても誰もが意見を言う、それをみんなで聞いている
こんなに多くの人がいても誰もが意見を言い、それをみんなで聞いています

鉄オタが活躍し、宿泊場所までのルートを作る

夏と冬には3泊4日で林間学校があります。多くの部活動の中から鉄道好きが集まる鉄道研究部のメンバーがいることから、“鉄オタ”の彼らが主体となってバスでなく電車で行くように決めたり、どの電車に乗るかルートを作ったりすることもあるというから驚き。

そこには「子どもたちの原体験を大切にしたい」とも語ったHAYATO先生の、子どもの経験を尊重する想いが感じられます。

コミュニケーションのトレーニングも実践

勉強や活動だけでなく、子どもたちのケアも丁寧に行っています。学校を苦手になった原因として多いのが、人間関係の失敗。本音を言ったことで嫌われた経験から本音を言えない子や、自分の心を閉ざしてしまった子どもがとても多いそう。

HAYATO先生学校生活がうまくいくポイントは本音でつきあえる友だちを作れるかということも非常に大きな要素の一つ。腹心の友というか、腹を割って話せる友だちを作れるかどうかが大切なのです。

子どもたちのなかには、傷つきたくないから当たり障りのない感じで気を遣いながら友だちを作っていた子も多く、そのことで疲れてしまったケースが多くあります。なので、そこにテコ入れしていきとことん話し合っていきます。そして本音を引き出して、子ども同士の化学反応を起こすために混ざり合わせていきます。
友だちを作れれば、気持ちが楽になって、学校生活は楽しめるようになる。人生や学びも楽しくなっていくのです

6月13,14日のクリエイティブOneDayの大枠が決まりました
進行役の彼らのおかげで、6月13,14日のクリエイティブOne dayの大枠が決まりました

人間関係をどう築いていくかは、生きる上でとても大切なことですが、通常の学校ではそこまで手厚くケアしてもらうことはないような気がします。しかしHAYATO先生はしっかり手を差し伸べると言います。

人間関係の構築にも手を貸す

HAYATO先生コミュニケーションはトレーニングで上手になっていきますので、ひたすらやり続ければうまくなると思います。
だから子どもたちの関係でなにか問題があったときにどう間に入るかが肝で、上手に見ながら放っておく時、子ども同士の横のつながりを強くするために粋な計らいをする時、とことん考えさせる時など、その都度対応を見極めていきます。
どれだけ話し合うか、そして仲良くなることと同じくらいどれだけぶち当たるか、ぶち当たった時にどう仲直りするかが重要だと思いますね」

賛成意見に手を挙げる子どもたち
賛成意見に手を挙げる子どもたち

ルールは一切なし! なにかあればその都度みんなで考える

子どもたちを見てみると、大きなぬいぐるみを抱いていたり、アイデアをガンガン発言したり、カードゲームを持っている子も。かなり自由な印象を受けましたが、これにも理由があるそう。

HAYATO先生「あれはダメ、これはダメと全部禁止にすることは簡単だけど、あえてルールは作らないようにしています。すると、子どもはやらかしたり、しでかしたりします。そこから「議論」と「話し合い」が生まれます。ここがキーポイントで、そこには生きる上で非常に重要なことがつまっています。

子どもたちは最初持ち物でもなんでも全部聞いてくるんですよ。トイレに行っていいかも聞いてくる。ダメって言ったら行かないのかって。また、行動するひとつひとつも最初は聞いてきます。でも君はどう思う?自分で考えてっていう風にすると、3か月ぐらいすればほぼ自分で考えるようになります。
その上で聞いてくる質問はこちらが答えないといけないものになったり、より深い着眼点から生まれるものになったりと、質問の質が変わってくる。更にPBL(プロジェクト学習)の授業など能動的に学習することを実践していくので、自ら考え行動できる子に変わっていきます」

帰りの会では希望者が前に出てクイズを出したり、モノマネをしたりと終始にぎやか

HAYATO先生「林間学校の持ち物にしても、自分で考えてきてくださいってことにしていて、必要なものを忘れちゃったとしたら、それをどうするか考えることが重要なんですよね。そのために仲間がいるわけで、借りるのがシャイで難しくても仲間にどう頼るかを学ぶことができるとしたら、ここには成長の機会がたくさんあります。
そのうち貸し借りも出来るようになって、返す際にありがとうの気持ちを伝えるとか、子ども同士の素敵な化学反応が生まれてきます。重要なのはそういうことかなと思いますね」

実際に子どもたちの様子を目の当たりにし、以前はそれぞれが悩みを抱えていたとは信じられないくらい、仲間同士で積極的に話し合い、コミュニケーションをとり、前向きに活動する姿がとても心に残りました。次回は、HAYATO先生にスクールの今後の展望について伺います。

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花まるエレメンタリースクールの様子はInstagramでもご覧いただけます。

 

取材・文/長南真理恵 撮影/五十嵐美弥

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