はみ出しちゃう子、悩んでいる子…不登校の子どもたちの「学びの場」の新たな選択肢に!『花まるエレメンタリースクール』が目指す将来像とは

さまざまな理由から小学校生活になじめず、学校に行くことが難しかった子どもたち。そんな彼らが生き生きと通っていると聞き、『花まるエレメンタリースクール』校長のHAYATO先生にお話を伺いました。現在も多くの子どもたちの居場所となっているスクールの今後の展望とは?

変わった子やはみ出しちゃう子、悩んでいる子が大好きだった!

現在、不登校の子どもたちは30万人いるとも言われています。その受け皿となるフリースクールも増えているなか、“メシが食える大人に育てる学校”として、2022年に開校したのが『花まるエレメンタリースクール』です。開校のきっかけはどんなことだったのでしょうか。

今回お話を伺ったHAYATO先生(写真中央左)

HAYATO先生 「中学校教諭のころから、やんちゃな子たち、困っている子たちがかわいくて。サッカーを教えているときも、エネルギッシュで多動な子や変わっている子、自分を出せずに悩んでいる子がいたんですけど、その子たちほど面白いし、不思議な魅力をもっていました。でも詳しく聞いてみると学校にはなじめていない子や羽を広げて羽ばたくように学んでいない子もいて。
そんな子どもたちのなかで、日本の学校では問題児扱いされていた子がいました。『海外に行ったら?』と勧めて実際にスイスへ行ったら、日本とはまったく違う(プラスの)評価をされたと聞きました。自分もアメリカに住んでいたことがあるので、国によって真逆の評価になることはよくわかったんです。

それで、そういうエネルギーを持った子が学べる場、ただただ知らないことを知るって面白いんだと羽を広げて躍動できる場、そして机の上では学べないようなことも学べる場を用意できたらいいなと思ったのがきっかけです。そこに現在の日本ではまだ馴染みのない行動力をつける授業と、人生って楽しいなぁって思える授業メインで入れたかったんです

こうして立ち上げた『花まるエレメンタリースクール』。癇癪を起こしたり手が出てしまったりする子、友人関係で悩んでいた子、IQがもの凄く高い子、博士のような知識をもった子、尖った才能を持っている子などさまざまな背景のある子どもたちが通うようになりました。

その子の魅力や強みを見つけてあげるのがプロの教育者

入学当初は問題を抱えていた子も、HAYATO先生をはじめとした愛情と熱意にあふれた先生方の元、今では学校生活になじんでいる様子。またこの春卒業した子どもたちは約4割が公立中学、約6割は私立中学、一人は岡山県にある非常に魅力的なフリースクールに通っているそうです。

そんなHAYATO先生たちの教育方針の一つが、その子の魅力や強みを見つめること。

HAYATO先生「子どもたちのなかにはADHDやLDなどの症状名をお医者さんから伝えられ薬を飲んでいる子もいて、WISCテストの結果を持ってくることもあります。そこには“こういう対応をしましょう”“こう対応すればこうなってしまう”“この子はこう言う子です”などが書かれています。
でも僕らはお医者さんでなく教育者。
目の前の子の光るものを見つけるのがプロの教育者だと思っているので、それをしっかりやろうって。

お医者さんやWISCテストでも発見できない、彼らと向き合って見えてくるピカーンと光るものを、どう拾ってそれを育ててあげるかみたいなこと。そして子どもに対して一人の人間として本音で向き合い正直にいることをこころがけています

「子どもはそのままでいいです。やらかしてもいいし、暴れても癇癪を起してもいいと親御さんたちに伝えていますし、その子の成長を考えて思うことは遠慮なく言うようにしています」

子どもの成長のためには親に意見をぶつけることも

子どもが前向きに変わるためには、親の協力も必要だと言います。

HAYATO先生ご両親ともガンガン話し合います。8割の子どもたちは僕たちの学校の空気感や先生のバイブス、学び方の違いでいい方向に変わっていきましたが、残りの2割は親御さんと思いっきり向き合っていかないといけませんでした。そのために2時間半、話し合ったこともあります。
親御さんがかっこつけずに本音を吐露した時から変わっていきます。まずその話し合いのなかで”ここがポイントだな”っていうのは見えてくるので、そこを明確にして一緒に進んでいきます。

子どもの言うことを信じすぎてしまい振り回されているケース、子どもに遠慮して素直な気持ちを伝えられていないケース、しつけが破綻しているケース、本当の課題点が見つけられていないケースなど、このような時にも僕たち先生と親御さんとで一緒にとことん話し合っています。また、全部こちらに丸投げする様子のときは、一緒に考えましょうと提案をしますね」

帰りの回の終わりにみんなであいさつ
1日の終わりに、お互いに「愛しているよ」を伝えあって帰ります

一緒に過ごすことで多様性への理解が深まる

スクールにはいろいろな特性をもった子どもがいて、中には癇癪を起したり、大きな音をたてたり、叫んだりする子もいます。では、それ以外の子はそれについてどう感じているのでしょうか。

HAYATO先生ここが、社会の多様性を理解するのにいちばん重要なんですよ。癇癪を起したり、大きな音をたてたり、叫んだりする子以外の子も育っていくんです。子どもたちがどうとらえるかは、周りにいる大人次第。それをちゃんと伝えないといけない。

僕が海外に行った際、現地の人を見て、日本とはとらえ方が全然違うなと学んだんですけど、『排除する目で見る』ことをしない。これを大人がやることです。そして変なバイアスを取り除いて、気持ちよく全てを受け入れていくのです」

 

やりたいことを発表する帰りの会は大盛り上がり
帰りの会はやりたいことを発表したい子がたくさんいて大盛り上がり

HAYATO先生そしてその子に特性があれば、その話を全員にして、相談して助け合っていくのです。例えば、『今度その子が誰かを叩いたら、学校には長期間来られないかもしれない。僕も彼もそうはしたくない。でも癇癪みたいなことでなっちゃうかもしれない。みんなには何かできるかな?』って。
それを共有しただけでみんなは何か行動し、助け合ってくれる。いろいろなことが起こるので、その対応の仕方っていうのは隠さないで、どんどんみんなにもシェアしますね」

一緒に過ごすことで多様性への理解が深まるのでは? とも語るHAYATO先生。何かあっても「大目に見ようぜ」「いいじゃねえかよ」と声掛けをし、相手を受け入れることをうながしているとも教えてくれました。

学びの場に新しい選択肢を作りたい

HAYATO先生フリースクールには30年の歴史がありますが、どこもわりとモザイクのかかっている部分が多い。そこで『花まるエレメンタリースクール』はInstagramなどで発信して学校の見える化も意識しています。日本版インターナショナルスクールのように、内容はもちろん、『花メン』に行っていることをイケてるという風にしたいとも思いました。

生徒が100人いると、だいたいあのパターンだねとか、同じようなタイプの子がいるんですね。子どもたちも『僕らは花メンに出合えたから、そういう(今悩んでいる)子たちに届けたい』って言ったんです。在校生の『僕変われたよ』『私は4年間不登校だったよ』とかっていうのを見えるようにしたかったんです。人から人に伝わる何かで人が変わっていくことがあると思うので

輝ける場所もやり方によっては作れる! もっとあっていい

HAYATO先生「実際に見える化したことで、入学希望者が殺到しましたね。本当は以前のように、明日からおいでっていう風にやりたいんですが、現在の教室では難しい。そこで今は2校目を探しつつ、いずれは廃校の利用も視野に入れて500人、1000人くらいを受け入れられるようにしたいと思っています。それで過去にはみんな不登校だったんだよって人がどんどん増えて、既存の学校だけではない学びの選択肢があることが当たり前になればいいなと思っています。

僕も彼らから学んでいることばっかりで、こんなに変わっていくんだって。ダンス部があるんですけど、部員のひとりは最初極度の場面緘黙症の子で。でも見事に変わったんです。1年後にはダンス部でキラキラと踊っているんですよ。それって本人にもわからなかったことですよね。僕らにもわからないし、親御さんにもわからない。そういう物語が全員にあるんです。だから輝ける場所もやり方によっては作れる。そういう場所はもう少しあってもいいんじゃないかなって。

機内食のビーフorチキン、野球かサッカーかじゃないですけど、世の中のことはだいたい選べるじゃないですか。教育も机の上で学ぶのが中心のスタイルだけでなく、PBL(プロジェクト学習)を多く扱う、実体験を通して五感と身体全体で学ぶことも取り入れた僕たちのようなスタイルで、もう一つのスタンダードを作れないかとイメージしながらやっていますね」

以前は深い悩みを抱えていたであろう子どもたちですが、実際に会ってみるとびっくりするくらい、みんなの表情が生き生きと輝いていたのが印象的でした。そして彼らの頼もしい支えとなっているのが、子どもたちの前でも取材チームの前でも、明るくパワフルに想いを語ってくれたHAYATO先生その仲間たち。今後さらに多くの子どもたちの笑顔を増やすであろうことを楽しみに感じました。

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花まるエレメンタリースクールの様子はInstagramでもご覧いただけます。

 

取材・文/長南真理恵 写真/五十嵐美弥

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