「生理の貧困」ってどういう状況? イギリスでは生理用品が無課税! 現状や国の対策について考える

ニュースなどで話題になる「生理の貧困」について、詳しく知らない人もいるでしょう。生理の貧困は、女性の尊厳や人権を考えるなら無視できない問題です。
生理の貧困が起こる理由や個人で取り組める対処法、国の対策などを解説します。

「生理の貧困」は社会問題の1つ

生理の貧困について理解するには、現状を把握することが大切です。生理の貧困に陥っている人々の割合や特徴、問題視されている点などを紹介します。

生理用品の入手が難しい状態を指す

さまざまな事情から生理用品を入手できないことを、生理の貧困といいます。経済発展や工業力に乏しい開発途上国での問題だと思われがちですが、生理の貧困は先進国でも起こっている問題です。

生理用品の購入にかかる費用は月に数百円から1,000円ほどとはいえ、毎月継続する出費として重くのしかかります。収入が少ない人の中には、厳しく節約しなければ生活できない人もいるのです。

日本でも生理の貧困は起きており、2022年の厚生労働省による調査で女性の心身にさまざまな影響を与えていることが分かりました。

出典:「『生理の貧困』が女性の心身の健康等に及ぼす影響に 関する調査」の結果を公表します|厚生労働省

低所得・若年層の割合が高い

全国の18歳~49歳の女性3,000人を対象とした、厚生労働省の「『生理の貧困』が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査」によると、生理の貧困に陥っている人は18~19歳、20代以下の若年層が多くなっています。

年代別で見ると20代が最も多く、生理用品の購入や入手に苦労した経験について「よくある」と答えた人が3.7%「ときどきある」と答えた人が9.0%でした。

世帯収入別では「100万円未満」「無収入」「100万円〜300万円未満」の順に多く、収入に不安がある若年女性たちが生理の貧困に陥っていると分かります。

また、この調査結果では18歳以上の生理がある女性が対象になっていますが、一般的に初潮を迎える年齢は10〜14歳ごろです。そのことから、貧困家庭の子どもが抱える問題でもあると考えられます。

生理の貧困は女性の心身を脅かしている

生理の貧困が与えるストレスは精神的にも肉体的にも大きく、女性の尊厳や人権にもつながる問題です。

厚生労働省の調査結果によると生理用品を満足に購入できない状況下では、同じものを長く使用して交換回数を減らし、時にはトイレットペーパーなどで代用する対処法が多く選ばれていると分かりました。

また、生理用品を購入できない不安を抱えることで、プライベートの予定に参加するのを諦めたり、家事・介護・育児・仕事などに集中できなかったりするなど、生活面にも影響が出ています。

なぜ生理の貧困が起こる?

経済的に恵まれていると、生理の貧困へ関心が向かないかもしれません。しかし誰もが生きやすい世の中にするには、弱い立場の人の現状を知り問題への理解を深めることが大切です。生理の貧困が起こる理由を見ていきましょう。

経済的事情から優先順位を下げてしまう

生理の貧困が起こる理由の一つに、経済事情が厳しく生理用品の購入が後回しになってしまう実情があります。

厚生労働省の調査結果を見ると、生理用品の購入・入手に苦労した理由に「自分のために使えるお金が少ないから」「その他のことにお金を使わなければいけないから」などを挙げている人が多数を占めています。

生活をしていくためには、さまざまな種類のお金が必要です。住居費や食費などの優先順位が高いものに、少しでも多くのお金を回したい気持ちが働いても不思議はありません。

貧困の中で親の介護や子育てなど、家族の世話をしなければならない女性が「自分さえ我慢すればよい」と考え、生理用品の入手に対する優先順位を下げてしまうこともあるでしょう。

生理を話題にしにくい環境にある

生理の貧困はネグレクトや父子家庭など、環境が原因の場合もあります。子どもは生理用品の入手を保護者に頼るしかありませんが、家庭で生理に関する話題を出せず深刻な状況に陥る場合もあるのです。

生理用品が欲しいと口に出すのを恥ずかしいと思う子どもや、周囲に助けを求めるべき状況だと理解できない子どももいます。

各家庭だけでの問題ではなく、生理に対してオープンにしにくい社会の風潮も生理の貧困に関係しています。改善するには、社会全体の理解不足をなくすことが大切です。

生理の貧困をなくすには

生理の貧困は、社会全体の問題です。個人や社会が生理の貧困をなくすためにできることを見ていきましょう。

生理への理解を深める

生理の貧困をなくすには、生理に対して正しい知識を持ち、社会全体で取り組んでいくことが重要です。理解不足が差別の助長や、多様性の否定につながることもあります。

「男の子は生理について知らなくてよい」「男性に話すのは恥ずかしい」などと考えてしまいがちですが、先入観を持たずに事実を客観的に伝えることが大切です。

生理について家庭内で話せる環境づくりをするなど、個人でもできることから取り組んでみましょう。言葉での説明が難しい場合は冊子や絵本、動画などを使って教育するのも一つの方法です。

生理用品の購入費用を軽減する

経済的事情から生理用品の入手が困難になっている実情を考えれば、購入費用の負担をできるだけ抑えることは、生理の貧困をなくすために効果的です。

生理用品は生活必需品であるにもかかわらず、日本では10%の消費税がかかっています。イギリスでは、ネットでの署名活動をきっかけに生理用品の無償配布や課税廃止が実現しました。

日本でも多くの人々がネットでの署名活動に参加したり、国会議員に手紙を書いたりすることで生活必需品にかかる税率の軽減を訴えるなど、できることはあります。現状を変えるには、自分も国民の一員だという意識を持って行動することが必要でしょう。

生理の貧困に対するさまざまな取り組み

生理用品に軽減税率が適用されないなどの問題はあるものの、国は生理の貧困を放置しているわけではありません。地方公共団体や企業などで、どのような取り組みをしているのか見ていきましょう。

地方公共団体などで生理用品の提供が進む

近年は生理の貧困に対する独自の取り組みや、交付金などを活用した取り組みを行う自治体が増えつつあります。

市役所や福祉センターなどで、生理用品の入手に困っている人に無料配布している自治体もゼロではありません。また都立高校では、2021年9月から全ての女子トイレに生理用品が設置されるようになりました。

男女共同参画局は、2023年7月18日時点で生理の貧困への取り組みを実施・検討している自治体の数は950と発表しています。しかし全国にある約1,700の自治体のうち、やっと半数を超えた程度であることを考えると、まだ十分とは言えないでしょう。

出典:「生理の貧困」に係る地方公共団体の取組(第4回調査 2023年7月18日時点)概要|男女共同参画局

企業による「奨学ナプキン」

奨学ナプキンとは、生理の貧困に向き合う企業の取り組みです。奨学生に選ばれると、1年分の生理用品が無償提供されます。

対象者は、生理用品の入手に困っている小・中・高校生、専門学校生、大学生などの学生です。生理のある学生であれば誰でも応募できますが、応募にあたってアンケートの回答などの条件があります。

2022年4月に取り組みを開始して以降、これまでに累計1万4,000件を超える応募がありました。若年層への生理用品の無償化に対する反響の大きさが見て取れます。

生理に関する啓発動画の公開

日本産科婦人科学会は生理の貧困に関する取り組みとして、生理に関する啓発動画を作成・公開しています。

クイズ形式で生理への理解を深められる内容になっていて、教材としてもおすすめです。クイズの答えは産婦人科医によって分かりやすく解説されているので、生理に対する知識が深まります。

生理用品の用意の仕方や清潔な使い方といった、初めて生理を迎える人への実践的な情報から、体の変化や生理に関連した症状、生理休暇などについても詳しく理解でき、世代や性別を問わずに勉強になる内容です。

参考:日本産科婦人科学会の「生理の貧困」に関する動画 ~生理のウソ・ホント?~

生理の貧困を理解し誰もが生きやすい社会に

生理の貧困が起こる理由は、経済的な事情や生理への理解不足などです。その問題によって、立場の弱い子どもや女性が心身の健康を脅かされています。

生理について口にすべきではないという風潮をなくし、生活必需品に軽減税率を適用させるなど、社会全体として取り組めることは少なくありません。

生理の貧困は女児がいる家庭だけの問題ではなく、社会全体の問題として扱われています。家庭でも生理について話せる雰囲気を作り、多様な人が生きやすい社会のために何が必要かなどを話し合ってみましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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