インド総選挙でモディ首相が勝利。人口は世界一、経済力も上昇中のインド、今後の外交はどうなる?【親子で語る国際問題】

いま知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は、モディ首相が再選を果たしたインドについて、今後の外交の行方を解説します。

インドの総選挙でモディ首相が勝利

2024年64日、インドでは5年に1度の連邦議会下院(543議席)の総選挙が行われ、モディ首相率いるインド人民党など与党連合が過半数272議席を上回る293議席を獲得して勝利しました。しかし、2019年の選挙と比べ、インド人民党は60議席も減らしており、インド人民党のみでは下院の過半数に届きませんでした。モディ首相は選挙で勝利したものの、5年後の選挙に対して課題も見つかった形になります。今後はインド人民党の支持回復にも努める必要があります。

今後の外交に関するポイントは2つ

では、今後インドはどのような外交を展開していくのでしょうか。ポイントは2つあります。1つ目は、“グローバルサウスの盟主(めいしゅ)としてのインド”です。グローバルサウスとは、東南アジアや南アジア、中東やアフリカ、中南米などの途上国を束ねた総称ですが、この中でインドは盟主となることを目指しています。グローバルサウスの中には、米中対立やウクライナ戦争など大国間の争いに対して不満を抱く国々も少なくありませんが、今後の世界でグローバルサウスの影響力は高まります。
インドもそれを認識しており、昨年1月にはグローバルサウス125カ国を集めたオンライン会議を開催し、各国からヒアリングを行うなど寄り添う姿勢を示し、グローバルサウスのリーダー的存在となっています。今後も存在力を高めるグローバルサウスの盟主として、その地位向上を目指した外交を展開していくでしょう。

もう1つは、“主要国としてのインド”です。インドは伝統的に全方位外交、非同盟外交、すなわちどの国家、どの陣営とも癒着しない行動を取ります。自由で開かれたインド太平洋の実現のため、インドは米国や日本、オーストラリアと「クアッド」という枠組みに属していますが、対中国、対ロシアで結束する米国や日本、オーストラリアとは距離を置き、独自の外交を展開しています。モディ首相は2022年9月に「戦争をしている時ではない」とプーチン大統領に釘を刺したことはありますが、欧米のように対ロシア制裁は実施しておらず、エネルギー分野などではロシアとの関係を強化しています。

インドの周辺地域で影響力を高めようとする中国に対して、インドは中国へ不満を示していますが、対中国では対立や紛争を含め独自で対応する姿勢に撤し、対中国で欧米や日本などと結束する狙いはないように思われます。

経済力を増していくインドとの関係が重要に

昨年、インドは中国を抜いて世界一の人口大国となりました。また、経済力でも2025年には日本を、2027年にはドイツを抜いて世界第3位の経済大国になると予測されています。日本経済としてもインドとの関係は今後さらに重要になっていくことは間違いなく、中国経済に明るい光が見えず、経済的威圧や邦人拘束などのリスクがある中では、今後日本企業の間で、中国からインドへシフトする動きが広がっていく可能性があります。モディ首相も日本との経済関係を重視しており、日本にとって大国インドとの関係強化は大きな意味があります。

この記事のポイント

①インドの総選挙でモディ首相が再選するも、次回の選挙へ課題が残る

②今後のインドはグローバルサウスの盟主として、主要国として外交を展開

③インドは世界一の人口大国であり、経済力は第3位になる見込み。日本は今後、関係を強化することが大きな意味を持つ

記事執筆/国際政治先生

国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う

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