ゲーム好きなら…「ゲーミフィケーション」が自発的な学びを促す? 活用ポイントやサービス事例を解説

ビジネスや教育の場で、ゲームの要素を取り入れて対象者のやる気を引き出す「ゲーミフィケーション」が注目されています。教育に活用した場合、子どもにどのようなメリットがあるのでしょうか? 家庭学習に取り入れるコツやサービス事例も併せて紹介します。

ゲーミフィケーションとは何か

ゲームに熱中するわが子の姿を見て、「勉強もこれくらい頑張ってくれたらいいのに」と思った経験はないでしょうか?  ゲーミフィケーションが、勉強へのモチベーション向上に役立つかもしれないと、期待する人は多いかもしれません。

ゲーミフィケーションの意味や注目される背景、教育現場での現状を見ていきましょう。

ゲームの要素を別の領域に応用すること

ゲーミフィケーション(gamification)」とは、ゲームの要素をゲーム以外の領域に応用することです。日本語では「ゲーム化」と称されますが、実際にゲームをするとは限りません。

多くの人が夢中になるゲームには、以下のような特徴があります。

●倒すべき敵がいる
●ストーリーが魅力的
●自分のレベルやスコアが可視化される
●バッジやアイテム、報酬が与えられる
●仲間と競ったり、協力したりできる

これらの要素をビジネス・学習・リハビリなどの領域に取り入れれば、さまざまなメリットがもたらされます。

注目されている背景

ゲーミフィケーションは、訓練・教育・企業研修などに広く取り入れられてきました。1800~1910年代のアメリカでは、兵士の戦略的思考を鍛える「ペンシルゲーム」や、子どもが楽しみながら学べる「教育ボードゲーム」が開発されています。

ゲーミフィケーションが人々に認知されるようになったのは、2000年代に入ってからです。2011年にアメリカの調査会社が大々的に取り上げたことで、注目を集めるようになりました。

近年は、日本でもゲーミフィケーションを取り入れる企業や学校が増えています。その背景の一つには、「ICT技術の進化」があると考えられます。

近年は教育現場での導入が進む

ゲーミフィケーションは、文部科学省が提唱する「主体的な学び」の実現方法として期待されています。

勉強や宿題は「親や教師にやらされている」という感覚になりやすく、嫌々取り組む子どもも少なくありません。しかしゲームの要素を取り入れれば、興味・関心が刺激され、主体性が促される可能性があります。

文部科学省が「GIGAスクール構想」を掲げて以来、全国の学校ではICT環境の整備が進んでいます。児童・生徒に1人1台の端末が与えられれば、ゲーム形式の教材を活用した授業や家庭学習が増えるでしょう。

出典:GIGAスクール構想の実現について:文部科学省

ゲーミフィケーションを教育に活用する利点

ゲーミフィケーションはさまざまな領域に活用できますが、特に相性がよいのが「教育分野」です。授業や家庭学習に取り入れることで、子どもにどのようなメリットがあるのでしょうか?

自発的な学びが実現する

ゲーミフィケーションを教育に取り入れるメリットは、モチベーションの維持や学習意欲の向上につながることです。やらされている感覚がなくなり、自発的な学びが実現するでしょう。

ゲームには、プレイヤーを夢中にさせるさまざまな仕掛けがあります。例えば、レベルアップや予期せぬボーナスは達成感や充足感を与え、「もっと先に進みたい」という感情を刺激します。

つい後回しにしがちな苦手科目も、ボスキャラに見立てて攻略するような仕掛けあれば、自分から克服しようという気持ちが湧くかもしれません。

高い学習効果が期待できる

「勉強は疲れるのに、ゲームなら何時間でもできる」という子どもは多いでしょう。ゲーミフィケーションを活用すると、新たな知識を楽しみながら学べるため、高い学習効果が期待できます。

例えば算数ドリルがなかなか進まない子どもでも、ゲーム感覚の「算数アプリ」なら集中してよりたくさんの問題を解くようになります。難しい概念を説明する際、キャラクターを登場させてストーリー仕立てにすれば、理解がグッと深まるでしょう。

このようにゲームの要素をうまく用いることで、子どもたちの学びが加速し、学力アップにつながる可能性があります。

学習者同士の交流や協働を促せる

仲間と一緒に旅をしたり、協力して敵を倒したりできることも、ゲームの醍醐味の一つです。ソロプレーでは味わえない一体感や達成感があり、「次も頑張ろう」という前向きな気持ちが生まれます。

学校の授業にゲーミフィケーションを取り入れると、児童・生徒同士のコミュニケーションや協働を促せます。

授業中に分からない問題があると黙ってしまう子どもでも、友だちと協力したり、「分からない」と意思表示をしたりする機会が増えるでしょう。モチベーションの向上や積極性の増加により、学力アップにつながることが期待できます。

ゲーミフィケーションを家庭で取り入れるには

ゲーミフィケーションは、主に学校教育での活用が注目されていますが、家庭学習に取り入れることも可能です。ゲームの要素や仕組みを理解し、子どものモチベーションを高める工夫をしましょう。家庭学習に取り入れる上でのポイントを解説します。

ゴールと課題を設定する

ゲームには必ずゴールがあります。ゴールに到達する過程には乗り越えるべき壁があり、それらを一つ一つクリアしていくことでレベルアップできる仕組みです。

家庭学習においても、明確なゴールと課題を設けましょう。例えば「算数のテストで100点を取る」というゴールを設定したならば、「九九を暗記する」「ドリルを1日2ページ解く」といったゴールにつながる課題(クエスト)を設けます。

課題は、ゴールに到達するための「下位目標」です。スモールステップで小さな成功体験を味わえるようにすると、モチベーションを維持しやすいでしょう。

進捗やスコアを可視化する

ゲームでは、スコア・ランキング・ステージ数などが表示されるのが一般的です。それらを可視化させることで、自分の現在の立ち位置や全体像を把握できます。

家庭学習においても、進捗やスコアが一目で分かる仕組みをつくりましょう。例えば「九九を最後まで言えるようにする」という目標を立てた場合は、「成果カード」を作成し、各段をクリアするごとにスタンプを押します。

自分が努力した結果がスタンプという形で積み上がっていくので、もっと先を目指そうという気持ちが芽生えます。

報酬やフィードバックを与える

ゲームの世界では、敵を倒すたびにアイテムやコインなどの報酬が得られます。プレイヤーは自分の成長を実感すると同時に、獲得した報酬を糧にして、さらなる困難に立ち向かっていきます。

家庭学習でも、課題をクリアするごとに報酬を与える手が有効です。例えば成果カードのスタンプが10個たまったら、子どもにご褒美を与えます。ご褒美として、親や教師からの前向きなフィードバックがあれば、達成感だけでなく自己肯定感も育まれるでしょう。

ただし、外部からの働きかけで行動を促す「外発的動機付け」は、あまり長続きしません。外発的動機付けをきっかけに、いずれはご褒美などなくても自ら課題を設定してクリアしていけるような、「内発的動機付け」へと移行させる必要があります。

ゲーミフィケーションのデメリット

ゲーミフィケーションは、子どもの教育に必ずしもプラスになるとは限りません。メリットだけでなく、デメリットをきちんと理解した上で取り入れましょう。

必ず効果を発揮するとは限らない

ゲームをするのが好きな子もいれば、あまり好きではない子もいます。ゲーミフィケーションは人によって合う・合わないがあり、取り入れたからといって必ず効果を発揮するとは限らないのが実情です。

また、内容に興味が持てなければ、途中で飽きてしまう可能性があります。期待した効果が発揮されないばかりか、学習意欲が下がってしまうケースもゼロではありません。子どもの性格や好みを把握した上で、活用するかどうかを決めましょう。

ルールを決める際は、「どんなルールがあるといい?」と子どもに意見を聞くことが重要です。親や教師が勝手に決めると納得感が得られにくく、すぐに飽きられてしまいます。

適切な課題を設定するのが難しい

ゲーミフィケーションでは、目的を達成するために必要な行動を「課題」として設定します。課題は個々のレベルに合わせ、難しすぎず簡単すぎないものでなければなりません。

複数の児童・生徒が学ぶ教育現場では、課題設定の難易度調整が難しいことが指摘されています。高すぎる課題を設定すれば挫折する子どもが増え、逆に課題が簡単すぎれば学習意欲が低下するでしょう。

レベルにばらつきがある場合は、難易度別のコースを選べるICT教材を使用したり、徐々に課題の難易度を上げたりする工夫が求められます。

ゲーミフィケーションを活用したサービス事例

ゲーミフィケーションを活用したサービスは多岐にわたります。子どもの学習をサポートするeラーニング教材もあれば、地域の課題解決に役立つゲームもあります。具体的なサービス事例を見ていきましょう。

すらら

小学生から高校生までを対象とするeラーニング教材です。AI機能が搭載されており、個々の理解度に合わせて学習を進められるのが特徴です。

学習過程では、クリアすべきミッションが「卵」の形で提示されます。ミッションをクリアして卵を割ると、アバターとポイントが獲得できる仕組みです。

一定のポイントがたまれば好きな報酬と交換できるため、「頑張ればよいことがある」という体験を積み重ねられます。ほかの学習者とチームを組んで学習できる、「チーム競争機能」にも注目です。

出典:すらら |【公式】株式会社すららネット

メイキット(make it!)

地域の中にある「資源」を使い、地域の声の要望に応える「アイデア」を発表するカードゲームです。地域の魅力や課題の再発見につなげるのが狙いで、教育機関のフィールドワーク教材としても活用されています。

具体的には4~6人で一つのグループを作り、「まちの声カード」「まちの資源カード」「まちの魅力カード」を組み合わせて、思い浮かぶアイデアを出していきます。フィールドワーク(散策)と組み合わせることで、より多くの気付きを得られるでしょう。

出典:メイキット|まちなか発想ゲーム on Strikingly

ゲーミフィケーションを取り入れて目標達成!

ゲーミフィケーションを教育に取り入れた場合、学習者のモチベーションが向上する可能性があります。うまく活用できれば、苦手分野の克服や学力アップが期待できるでしょう。

家庭学習にゲーミフィケーションを取り入れるときは、ご褒美でやる気を引き出しつつも、「学ぶのが楽しい」「これを実現したい」という内発的なモチベーションを高める工夫をする必要があります。

ゲーミフィケーション機能が搭載された教材も開発されているので、参考にして普段の学習に取り入れてみるのもよいでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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