北朝鮮、中国、ロシアの指導者は、アメリカ大統領選をどうみている?【親子で語る国際問題】

いま知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回はアメリカ大統領選を、他国のリーダーたちははどう見ているか、について学びます。

世界の指導者が注視する米国大統領選

米国大統領選挙まで3ヶ月となりましたが、世界指導者たちはその行方を注視しています。米国の世界的な影響力は以前ほど圧倒的なものではありませんが、現在でも大きな存在感を示しており、その結果によって世界情勢は大きく変わる可能性があります。では、各国の指導者たちはどういった想いでそれを見ているのでしょうか。

トランプ勝利を願う北朝鮮

まず、北朝鮮はトランプ勝利を強く願っていることでしょう。トランプ時代、金正恩氏はベトナム、シンガポール、板門店と3回もトランプ氏と米朝首脳会談を実施しました。北朝鮮が望んでいるのは、米国との国交正常化、金体制の安全の保証であり、3回の首脳会談で金氏が期待する結果は生まれませんでしたが、長年敵対する米国の指導者と和解に向けて3回も対面できたのは、北朝鮮にとっては大きな成果となりました。

しかし、バイデン政権になった途端、米国の北朝鮮政策は180度変わりました。バイデン政権は、北朝鮮が核やミサイルで何かしら改善を示さないとそもそも対話に応じないという姿勢に撤することから、米朝関係は完全に冷え込んで行きました。バイデン政権の最重要課題は中国で、しかもウクライナ侵攻によってロシアも対処する必要に迫られ、北朝鮮問題は完全に後回しになり、この4年間米朝関係は何も動いていません。バイデン政権は北朝鮮を相手にせず、対北朝鮮で韓国や日本との結束を強化するので、北朝鮮はミサイル発射を繰り返すのです

ロシアもトランプの勝利を願う

ロシアのプーチン大統領もトランプ勝利を望んでいることでしょう。ウクライナ侵攻により、米国はロシアへの制裁措置を次々に発動し、米ロ関係は急速に冷え込んでいき、マクドナルドやスターバックスなど米国企業の多くもロシアから撤退していきました。バイデン政権はウクライナへの軍事支援に多額の資金を投じ、プーチン大統領としてはバイデンの後継者であるハリス氏の当選は望んでいないでしょう。トランプ氏はウクライナ支援の縮小や停止をちらつかせ、現状での和平を呼び掛ける可能性があり、ウクライナの一部領土を占領する形で和平が締結されることはプーチン大統領にとって好都合です。

中国にとっては、どちらが当選しても対立が続くことに変わりない

一方、中国の習近平国家主席は米大統領選の行方をそこまで注視していないかも知れません。なぜなら、トランプ氏とハリス氏は対立していますが、対中国という問題については両者に大きな違いはなく、新政権になっても米中対立は必ず続くからです。中国としては、まだハリス氏の方が聞く耳を持ち、地球温暖化など協力できそうな分野では交渉の余地があるとみているでしょうが、トランプ氏であれば貿易規制を懲罰的に仕掛けてくる可能性があります。世界の指導者たちが米大統領選挙の行方を注視する中、中国にとってそれは単なる政治イベントに過ぎず、今ごろは新政権との向き合い方を考えているかも知れません。

この記事のPOINT

①バイデン政権に無視されている北朝鮮はトランプ氏の勝利を願う

②ロシアも、トランプ氏が勝利すればウクライナの領土を占領したまま戦争を
終えられる可能性ある

③中国にとっては、どちらが勝利しても米中対立が続くことに変わりない

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記事執筆/国際政治先生

国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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