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動向が大きく変化している米国大統領選挙
米国大統領選挙まで3ヶ月となりました。最近はトランプ暗殺未遂事件、バイデン大統領の選挙戦からの撤退、後継候補ハリス副大統領の台頭など、その動向が大きく変化しています。残りの3ヶ月はトランプVSハリスの選挙戦となりましたが、現時点で両者の支持率は拮抗しています。
7月末にブルームバーグなどが公表した世論調査結果によると、大統領選の勝敗を大きく左右するペンシルベニア、ウィスコンシンなど激戦7州での支持率ではトランプ氏が47%、ハリス氏が48%となりましたが、バイデン大統領だとトランプ氏が2ポイントほどリードする展開だったことから、ハリス氏支持の声が広がっていることが分かります。また、政治サイト「リアル・クリア・ポリティックス」の世論調査によれば、全米での支持率平均でトランプ氏が47,7%、ハリス氏が46,5%とトランプ氏が上回っています。
ハリス氏は対ロシアを強化。中国とは経済分野で競争を展開
では、それぞれが勝利すれば世界情勢はどうなっていくのでしょうか。まず、ハリス氏が勝利した場合ですが、ハリス氏はバイデン政権で副大統領を務めていますので、基本的にはバイデン大統領の外交姿勢を継承していくことになるでしょう。バイデン大統領はウクライナ戦争で同国への軍事支援を積極的に押し進めてきましたが、ハリス氏もウクライナへの軍事支援の継続を強く訴え、対ロシアで欧州諸国との結束を強化することになるでしょう。
また、バイデン政権が台湾を民主主義と権威主義の戦いの最前線と位置付け、台湾への軍事支援を積極的に進めるように、ハリス氏も台湾への協力を惜しまないでしょうし、そのための日本との協力を必要しているでしょう。中国については、地球温暖化など協力可能な分野では協力を図るでしょうが、AIや半導体など先端テクノロジー分野では中国との熾烈な競争を展開していくことになるでしょう。
トランプ氏が勝利した場合、ウクライナや台湾が不利になる可能性
一方、トランプ氏が勝利した場合ですが、それによってウクライナ情勢は大きく変化する可能性があります。トランプ氏はウクライナへの軍事支援に懐疑的で、「ウクライナ戦争を24時間以内に終わらせる」「最優先で軍事支援を終わらせる」と豪語しており、実際に大統領に返り咲いてみないと分からないことですが、ウクライナはこれまでのような軍事支援を受けることができないばかりか、トランプ氏はロシア軍がウクライナ領土の一部を占領した現状での停戦、終戦をゼレンスキー大統領に迫る可能性があります。
これは台湾情勢にも当てはまります。トランプ氏は、台湾は防衛費を支払うべきだ、台湾が米国の半導体産業を奪ったなどと主張しており、トランプ再選によって米国と台湾の間に亀裂が生じ、それによって中国が台湾への圧力をいっそう強めることが懸念されます。
中国の経済的台頭を警戒しているのはどちらも同じ
さて、トランプ政権になれば、中国への輸出入停止や関税引き上げなどの貿易規制を先制的に仕掛けていくことは間違いないでしょう。これはバイデン政権でも同様でしたが、米国は中国の経済的台頭を強く警戒し、特に先端テクノロジー分野での優位性が脅かされていることを深く懸念し、中国の同じ分野での発展を阻止しようとしています。これはトランプ氏、ハリス氏のどちらが勝利しても変わらないでしょう。
この記事のPOINT
①ハリス氏が当選した場合、ウクライナや台湾への軍事支援を継続
②トランプ氏が当選した場合は、ウクライナや台湾にとって不利な展開へ
③中国のテクノロジー分野での発展を阻止する動きは、どちらが勝利しても変わらない
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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。