お話を聞いたのは
さかなのおにいさん かわちゃん
1990年5月生まれ、大阪府出身。さかなの生態や海の大切さをオモロく伝えることで、子どもの好奇心を育てる活動をしている。テレビ東京「シナぷしゅ」のイラスト・作詞・作曲・歌を手掛け、「ツッコミたくなるおさかな図鑑」など著書も多数。全国の情報番組やラジオDJとしてメディアも出演中。
おすしが食べられなくなる!?いま海で起きている3つの問題
このままだと、おすしが食べられなくなるかもしれない!?いま海ではどのような問題が起きているのでしょうか?
温暖化で海の温度が上昇
1つ目は、温暖化により、海水温が上昇する現象「海洋熱波」が起きています。海の温度が上がったらどうなるかというと、寒いところや冷たいところで生息する魚たちがいられなくなりますよね。
例えば、ヒラメは27度くらいが限界なので、それ以上熱くなっていくと瀬戸内海などでヒラメが獲れなくなっちゃうんです。そうすると、今食べてるお魚は海の平均温度がどんどん上がっていくと食べられなくなる。もう会えなくなるかもしれない。
また、温暖化が進んだことで生き物の生息域がどんどん変わってきています。例えば、伊勢海老が三重県の伊勢志摩より東北で獲れるようになっています。ほかにも海の温度が上昇することで海水中の酸素量が減り、魚が大きくなれない。また、海水中に二酸化炭素が溶けこんでしまうことで、もともとアルカリ性である海の水質が酸性に近づき珊瑚や貝類の生育不良が起こります。
このままだと、魚だけではなくてホタテなどの貝類も食べられなくなってしまいそうですね。
魚を獲りすぎている!?乱獲の問題
2つ目は、魚が増えていくスピードを勝って人間が魚を獲りすぎている、乱獲の問題です。海は、大きな水たまりなのでこのまま魚を獲り続けたらいなくなっちゃうんですよ。それで、ルールを決めましょうということで漁業規制が行われています。
漁業規制とは、例えば卵を持っている時期のカニを獲らないようにする、禁漁期間を設ける、漁業で使う網の目を大きくすることによって小魚を逃がすなど水産資源を守るための決まりです。魚群探知機などを使って混獲(対象魚種以外の海洋生物を捕獲してしまうこと)を防ぐなど、さまざまな技術が取り入れられています。
ゴミ問題
3つ目は、ゴミの問題です。毎年、ジャンボジェット5万機分のプラスチックが海に流出してると言われています。海に流出してる海洋プラスチックは、アジア諸国が 80% 以上を占めているというデータがあります。そして2050年には、海洋プラスチックごみは魚の量を上回ると予想されています。
海に流れたビニール袋をクラゲと間違えてウミガメが食べてしまい、喉を詰まらせて死んでしまうことも起きています。これは他人事ではなくて、海のゴミを魚が食べて、人間が食べて…僕たち人間の体の中にも大体レジ袋1枚分くらいのプラスチックがもうすでに体に入っているそうです。それが、人体にどんな影響を及ぼすのかわからないということも大問題なんです。
海を守るために私たちができること
海で起きている問題を解決するために、私たちにはどのようなことができるのでしょうか?
環境のことを考えて選ぶ
選択することがすごく大事です。例えば歯磨き粉や洗濯洗剤、スクラブ洗顔など私たちが日常的に使うものにプラスチックが入っているものがあって、お風呂などからそのままどんどん海に流れて珊瑚にダメージを与えたりもするんですよ。
そこで、プラスチックフリーなものを選ぶというのもひとつの方法ですよね。
普段の食事で魚をたべるときに、正しく獲られた魚、正しく養殖された魚を選んで食べることも大切です。「魚が減っているなら、食べなければいい」ではなく、食文化を守ることも大事なんですよね。
では、どのように魚を選べばいいのかというと、スーパーなどで販売されている魚のパックに「海のエコラベル」が貼ってある商品があります。MSC認証は、水産資源と環境に配慮し適切に管理された、持続可能な漁業で獲られた天然の水産物。ASC認証は養殖水産物に対するエコラベルになります。どちらの認証も、水産資源や海洋環境を守るために厳しい取り組みをクリアした商品がラベルを表示できます。
ルールを守る
基本的に海ゴミの8割は都会で落としたり、風で飛ばされたゴミなんですよね。排水溝は必ず海につながっているので、そこから流れていってしまうのです。ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てる、捨てる場所がないなら持って帰るようにしましょう。
そして、ゴミの分別のルールを守るということも大切です。ゴミ問題の話しになると、どうしても「プラスチック=悪」というようなイメージがついていますが、そうではなくてプラスチックがあるから生活が便利になったし、プラスチックはヒーローなんですよ。だから、ヒーローのまま生まれ変わってもらう、資源として再利用できるようにすることが大切です。
知ること・興味を持つことが未来につながる
子どもたちとSDGsについて伝えるときには、順番が大切だとかわちゃんは言います。おさかなのおにいさんとして活動する、かわちゃんの子どもたちとの向き合い方について教えてもらいました。
SDGsとの向き合い方
さかなのおにいさんとして、いろんな教育現場、幼稚園保育園、小学生のお子さんたちに会いに行くんですけど、ほとんどの子がSDGsを知っているんですよね。だけど、その子たちの中にはローマ字をまだ知らない子もたくさんいて、それなのにSDGsだけ知っているというのが大人の思想を押し付けられている感じがして、どうなのかなと思っています。
子どもたちにいきなり、「SDGs17個の目標達成しましょう!」と課すのではなく、お寿司が好きとか、魚を見ることが好きな子たちが、その好きなものを守っていくためには、どうしたらいいのか? 知ることから始めるという順番が大事だと感じています。
ポジティブに問題を解決していく
僕は、子どもたちが魚を好きになるきっかけを関西人としてできる限りおもろく伝える活動をしています。そして、魚を好きになった子たちに向けて、サマースクール・ウインタースクール、講演会などをやっています。
イベントを通して子どもたちと環境活動を行っている人たちがつながって、みんなのやさしい気持ちが広がっていったらいいと思います。
【ビンゴで楽しくゴミ拾い】
僕は釣りも好きなのですが、ゴミがあまりに多すぎて釣り場がどんどん閉鎖されていってるんですよ。それで、ゴミを拾うのが楽しくなるようなポジティブなコンテンツがあったらいいな!ということで、ビンゴをつくっています。
自分の身近な問題から興味を持って、ポジティブに解決をしていけたらいいですね!
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取材・文/やまさきけいこ 撮影/五十嵐美弥