小学校低学年で「身長が伸びすぎる」「胸や睾丸が発育する」侮ってはいけない思春期早発症。脳腫瘍の可能性も【実話|医師監修】

思春期が早まり、7歳6ヵ月までに乳房がふくらんだりする「思春期早発症」。今西洋介先生(ふらいと先生)は、2024年6月登録者限定のニュースレターで『助産師の妻が青ざめ、自分の右手の震えが止まらなかった話』と題し、娘さんの思春期早発症について発信しました。今西先生に、娘さんの思春期早発症に気づいたきっかけや思春期早発症の特徴、治療などについて教えてもらいました。

今西先生の娘さんも思春期早発症に

今西洋介先生(以下、今西先生):この話は、妻と娘の許可を得ているので話しますが、わが家には、助産師の妻と3人の娘がいます。少し前の話になりますが、小学1年生の娘と入浴していた妻が、お風呂から出てきて真剣な表情で「ちょっといい? 話がある」と言うのです。「どうしたの?」と聞くと、妻は神妙な面持ちで「小学1年生の娘に思春期による身体の変化がきている」と…。すぐに「思春期早発症」だと思いました。

 思春期早発症は、早くから乳房の膨らみや陰毛が生えるなどの症状が

今西先生:一般的に思春期の時期は、女の子は10歳ごろ、男の子は12歳ごろが目安とされますが、思春期早発症はそれよりも早く思春期が来る病気です。

思春期早発症の主な症状

<男の子>

9歳までに精巣(睾丸)が発育する

10歳までに陰毛が生える

11歳までにわき毛、ひげが生える、声変わりをする

<女の子>

76ヵ月までに乳房がふくらむ

8歳までに陰毛、わき毛が生える

106ヵ月までに初経がある

最も注意が必要なのは、脳腫瘍などが原因のとき

今西先生:「思春期が少し早く来るだけでしょ?」と思うママ・パパもいるかもしれませんが、思春期早発症の中には、脳腫瘍などが原因のことがあります。

思春期早発症は、比較的女の子に多い病気です。

インタビュー内容よりHugKum編集部作成

思春期早発症の原因は、「中枢性」と「末梢性」があり、「中枢性」は脳腫瘍などが原因のこともあります。「中枢性」と診断された子どものうち女の子は約30%、男の子は約60%が脳腫瘍などが原因です。私も以前、思春期早発症の症状があり、脳腫瘍だった男の子を看取ったことがあります。

「末梢性」は副腎や性腺の病気が原因です。

親子で一緒におふろに入ったりして、家庭で早期発見

今西先生:思春期早発症は脳腫瘍などが原因のこともあるので早期発見が必要です。親子で一緒におふろに入って子どもの体をチェックしてください。「小学生になったから、親子でおふろには一緒に入っていない」という場合は、「胸が痛い」「陰毛が生えてきたみたい」など子どもからの報告を聞き逃さないようにしましょう。

小学校低学年で身長が伸びすぎるときは思春期早発症を疑って

今西先生:ほかに思春期早発症の問題点は、そのままにしておくと将来的に低身長になりやすいことです。

先に紹介した「思春期早発症の主な症状」のほか、小学校低学年で身長が急に伸びすぎたときも思春期早発症が疑われます。目安としては67歳の1年間で男女とも約6cm身長は伸びますが、それよりはるかに上回る場合は思春期早発症を疑い、かかりつけの小児科で相談しましょう。

なかには恥ずかしがって受診を拒む子もいるかもしれませんが「成長が少し早いだけだよ。でも病院で診てもらおうね」と受診の必要性を伝えてください。

治療をしなくてもよい場合もあるので、担当医とよく相談を

今西先生:思春期早発症と診断されたら、担当医と治療についてよく相談してください。

治療は、①性ホルモンの過剰分泌を抑えて症状の進行を遅らせる、②骨が成熟するのを抑制して、身長の伸び止まりを防ぐことが目的で、4週に1回、医療機関に通い注射をします。ほかには血液検査なども行い、治療は数年続きます。

 最新の研究では、次のことがわかっています。

1)7歳以上で思春期早発症の進行が比較的ゆるやかな場合は、必ずしも治療が身長の伸びに影響を与えるわけではない

2)治療を行ってもすべての子どもが同じようによい結果を得るわけではない

 ほかには副作用として①女の子は初経がある(一時的な症状)、②注射した部位が硬くなったり、赤く腫れたりするも。また治療が保険適用外となる場合もあります。

将来の身長を予測して、治療を考えても

  • 今西先生:なかには「親が小さいから、子どもは低身長でも仕方ない。治療をしなくてもいいのでは?」と考えるママ・パパもいるかもしれませんが、計算で子どもの将来の身長を予測することができます。

男の子は、 (両親の身長の合計+13)÷2

女の子は、 (両親の身長の合計-13)÷2

将来の予測身長と現在の身長の差を見て、治療をするか検討してもいいでしょう。

デリケートな診察もあるので、医療機関選びは慎重に

今西先生:思春期早発症の治療は、一般的に思春期が来る時期(女の子は10歳ごろ、男の子は12歳ごろ)まで続けることが多く、長期におよびます。プライベートゾーンを診るなどデリケートな診察もあるので、医師との信頼関係が必要です。

また子どもの身長を伸ばしたいからと、最近は美容クリニックで成長ホルモン治療を受ける子どももいるようですが、子どもの病気は小児専門医に診てもらうのが基本です。ママ・パパには、医療機関を選ぶときそうした視点も持ってほしいと思います。

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記事監修

今西洋介先生(ふらいと先生)
新生児科医、小児科医。小児医療ジャーナリスト、一般社団法人チャイルドリテラシー代表理事。著書に『新生児科医・小児科医 ふらいと先生の子育て“これってほんと?”答えます』(西東社)など。小児医療など子どもの問題をSNSで発信する。

取材・構成/麻生珠恵

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