ペットが亡くなったらすぐに連絡
ペット葬儀社の利用方法に関する最初の疑問は、連絡のタイミングではないでしょうか。
亡くなった瞬間から犬や猫は当然、過酷な現実として腐敗が始まります。ペット葬儀社に依頼する場合、どのようなタイミングで連絡を入れればいいのでしょうか。
「ペットの亡くなり方もさまざまですし、ご家族の中におけるペットの存在感もご家庭によって異なるため一概には言えない部分があります。
例えば、病気にかかっている高齢のペットを飼っている場合、心構えとして事前にご連絡くださる方もいらっしゃいます。
一方で、行方不明になっていたペットが死後、時間が経過した状態で発見され、ご連絡をくださる方もいらっしゃいます。
ただ、一般的には、どこのペット葬儀社を利用される場合でも、ペットが亡くなってすぐのタイミングになるのではないでしょうか」(宮嶋さん)
お別れから葬儀まで。遺体の安置が必要かどうか
連絡を入れた後は、どのような流れで葬儀まで進んでいくのでしょう。
「仏式の葬儀を基本とする弊社の場合、ペットが亡くなってから納棺、ご葬儀、火葬、お骨拾い(納骨)、供養という流れになります。その中で、葬儀までの期間に遺体の安置が必要かどうかで流れが異なってきます。
例えば、勤務があるためペットの死後すぐに葬儀が行えない場合は数日間の遺体安置が必要になります。また、実家を出た子どもたちが、実家のペットの顔を最後に見たいから葬儀を待ってほしいという場合は、1週間程度などと遺体安置の期間が長くなります。
過去にあった例で言えば、海外留学中の娘さんの帰国を待って葬儀するために1カ月半、遺体を安置したケースもありました。
その期間の長さに応じて安置場所(自宅か葬儀社か)の選択が必要になります。
仮に夏場であっても、1~2日などと短い期間で、ご自宅での安置をご遺族が希望された場合は、安置の方法をお伝えします(※詳細は後述)。必要に応じて、ご遺体のサイズに適した発泡スチロールの容器とドライアイスをこちらからお届けするケースもあります。
安置が長期間に及ぶ場合は、ご自宅での安置が難しくなるため、ペット葬儀社の安置所で遺体を預かり、-30℃以下で安置する方法をお勧めします。
いずれの場合も、安置期間の終了後にご葬儀へ入ります」(宮嶋さん)
自宅での具体的な安置方法としては、小型犬の場合、500ミリリットルのペットボトル4本に水を入れて凍らせ、1本は胸に、1本は背中に沿って置き、タオルを被せ、直射日光を避けた場所に安置するやり方が例として挙げられるとか。
安置を開始して半日が経過したら、残りの凍ったペットボトルを冷凍庫から取り出し、先に使用したペットボトルと入れ替えます。この作業を繰り返せば夏場でも2日くらいは腐敗が防げるそうです。
いざという時のために、ペットを飼育する人は頭に入れておくといいかもしれません。
8割程度の飼い主が個別火葬を選ぶ
安置期間を経て葬儀に向かうとの話がありました。ペット葬儀社における葬儀そのものはどのような流れ・段取りになるのでしょう。
「弊社の場合は基本、仏式になります。読経が30分あり、ご家族の名前、ペットのお名前の読み上げがあり、お焼香があり、弊社の側からお言葉を最後に伝えさせていただきます。
ご要望に応じて、神式やキリスト教式などで葬儀を行う場合もあります。無宗教の場合ももちろんあります。
ただ、ペット葬儀の場合、葬儀の宗教的スタイルはそれほど重要ではありません。むしろ、火葬方法の違いが重要になってきます。弊社では、個別火葬と合同火葬があり、料金も異なります。
個別火葬は、文字どおりペットを個別に火葬するため、火葬後にお骨を拾い上げられます。
一方で、合同火葬の場合は、他のペットとお骨が混じるため、自分のペットの遺骨を拾い上げられません。
30年前は、合同火葬を選ぶ飼い主が7割程度いらっしゃいましたが、8割程度の飼い主が今では個別火葬を選ばれます。
かつて、ペット葬儀社を利用される際に、ちょっと言葉は悪いですが、遺体処理を目的とする(遺体を処理したいだけの)お客さまが多かった時代もありました。
しかし今は、人とペットの距離がとても近くなりました。恐らく、どこのペット葬儀社でも、個別火葬を選ぶ飼い主が多いのではないかと思います」(宮嶋さん)
手を合わせるためのハードルを上げてはいけない
一般的な流れは分かりました。では、葬儀に欠かせないお金の問題、マナーの問題などはどのように考えればいいのでしょうか。
「弊社の場合、合同火葬なのか、個別火葬なのかで料金が異なります。
さらに、ペットの大きさでも料金が上下します。弊社の例ですが、1キロ未満の子犬の場合、合同葬(納棺・生花・葬儀・合同火葬・合同供養)では18,000円(税別)、個別葬(納棺・生花・葬儀・個別火葬・お骨袋)の場合は23,000円(税別)となります。
プラスして、お経を上げる場合は、読経料として3,000円をお寺さんへ、個別納骨を希望される場合は、納骨料金(年間)が別途で発生します」(宮嶋さん)
上述の料金や読経料の支払い場面では、人間の葬儀で求められる作法も特に存在しないそう。普通の封筒にお金を入れて手渡してもいいし、場合によっては裸の現金で支払っても構わないと宮嶋さんは言います。
「人間の葬式と違って参列者は通常、飼い主家族だけです。手を合わせるハードルを上げてはいけないと私どもは考えていますので、人間の葬儀に参列する時のような作法は存在しないと考えていいと思います」(宮嶋さん)
服装についても同様で、礼服などを用意する必要はないのだとか。
「服装についてもよく質問を受けます。『普段の服装でお越しください』と私どもは毎回伝えております。お数珠も必要ありません。
それでも、喪服を着用し、お数珠を持って来られる方も当然、いらっしゃいます。その方々に『着てくるな』とはもちろん言いません。しかし、普段の格好で来られる方が一般的です。
服装や作法などより、供養で手を合わせる行為そのものが大事だと私どもは考えています。
肉体はなくなっても脳裏に、ペットとの思い出が残っていると思います。その姿を思い出しながら手を合わせると、悲しみはもちろん消えませんが、ほっとしたような、やり遂げたような、何かを悟ったような感じに皆さまの顔つきが変わります。
来る時は悲しみに暮れていたはずなのに、葬儀を終えた後は、ご家族の皆さまが『ありがとうございました』と私どもに声を掛けてくださいます。この姿、この言葉を糧として私どもも仕事を続けています。
なので、作法などは気にせず、周りの目も気にせず、葬儀に到るまでの間に思いのたけを口にして、心の底から手を合わせて、気持ちに区切りを付けていただければと思います」(宮嶋さん)
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以上が、ペット葬儀社に関する基礎的な情報になります。ペットの死を弔う行為は、ペットのためというよりも、残された人たちの区切りのためにあると宮嶋さんは語ります。
まだ、お別れは遠い先の話と感じる飼い主も、ぜひ参考にしてみてください。
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取材・写真・文/坂本正敬