「杓子定規」の意味はわかるけど、なぜ「杓子」と「定規」? 語源、使い方、類語、対義語、英語表現までを解説

「融通のきかないやり方や態度」を表す『杓子定規』。杓子って何? なぜ定規に? など言葉の由来から正しい意味を知り、正しく使いましょう。この記事では、『杓子定規』の読み方や意味から、語源、類語、対義語、英語表現までをご紹介します。

「杓子定規」とは?

まずは、『杓子定規』の読み方と意味を確認しておきましょう。

読み方と意味

この言葉は『杓子定規』と書いて「しゃくしじょうぎ」と読みます。すべてのことを1つの標準や規則に当てはめて処置しようとする、融通のきかないやり方や態度を表す言葉です。

「杓子」ってどんなもの?

杓子

杓子とは、ご飯や汁ものをすくうために作られた道具です。現在でも、ご飯をすくうしゃもじを「杓子」と呼ぶ場合もあります。

杓子定規』の由来・語源

定規

『杓子定規』はそもそも「杓子を定規として使う」という趣旨の言葉。杓子の柄は、古くは木で作られており、使いやすいようにたいてい少し曲がった造りになっています。曲がった杓子を、定規として使おうとしても、正しく線を引くことはできませんよね。

その様子から「そもそも正しくないものやできごとを基準として用いる」様子を『杓子定規』と表現したのが始まりと言われています。

しゃもじも杓子の一種

ご飯をよそうために使う「しゃもじ」も、実は杓子の一種。「しゃくし」の後半を略して「文字」を付けた、女性が使う言葉が広まったものです。

しゃもじ(上)、おたま(下)

また、汁をすくうのに使う丸い杓子は「お玉杓子」。「お玉」と略して使うこともあります。どちらも曲がった造りになっていて、定規としては使えませんよね。

使い方を例文でチェック!

では、『杓子定規』の使い方を例文でチェックしていきましょう。

1:緊急時に杓子定規な対応をしていては間に合わない。

災害などの緊急時には、平常通りの手順を守って対応していては間に合わないことも多々あります。そのような場合に、融通が利かない対応を揶揄する表現として『杓子定規』が使われることがあります。

2:物事は杓子定規にはいかないよ。

「そもそも正しくないものやできごとを基準として用いる」という語源から、「1つの基準にこだわって、物事を決めようとする」ことを注意するため『杓子定規』が用いられることも。

3:あの人はなんでもかんでも杓子定規な人だ。

「杓子定規な人」とは、自分の基準にこだわる「融通の利かない人」「柔軟さがない人」「頑固者」という意味でも使われます。

類語や言い換え表現は?

では、『杓子定規』を別の言葉で言い換えたい場合、どのような表現を使うことができるのでしょう。『杓子定規』の類語を見ていきましょう。

1:判で押したように

同じことの繰り返しで、変化がなく、決まりきっている様子を表す慣用句です。「融通が利かない」「柔軟さがない」点では『杓子定規』に近い言葉と言えます。

2: 例外なく

どんな事情があっても特別扱いはしない、という「例外なく」という表現。すべてのことを一つの標準や規則に当てはめようとする『杓子定規』に似ています。

3:四角四面

ひどくまじめで堅苦しい様子を表す四字熟語、「四角四面」。「融通が利かない」というイメージを表す言葉としては、『杓子定規』の類語として挙げられます。

4:石部金吉

『杓子定規』な人を指す語としては「石部金吉(いしべきんきち)」という言い方があります。これはいかにも硬そうなイメージの「石」と「金」を人名っぽく表現した言い方で、頑固で融通の利かない「石頭」の人を表します。

対義語は?

『杓子定規』の対議語には以下のような言葉があります。

1:臨機応変(りんきおうへん)

1つ目は『臨機応変』。その時その場に応じて、適切な手段を取り、フットワーク軽く行動する様子を表す言葉です。融通が利かない『杓子定規』に対して、融通が利く表現としてよく使われます。

2:融通無礙(ゆうづうむぎ)

『融通無礙』とは、規則にとらわれず自由に意見や行動し、のびのびとしている様子を表す四字熟語。状況に応じた処理や解決ができることを表しています。1つの標準や規則に当てはめようとする『杓子定規』とは反対の意味として使われます。

3:当機立断(とうきりつだん)

『当機立断』とは、機会をうまくとらえて、素早く決断することを表す四字熟語。「当機」は機に臨むこと。そこにすぐにという意味の「立」、決断するという意味の「断」を合わせてすばやく決断する、という意味になります。柔軟さがない、例外を認めない『杓子定規』の対義語として使われます。

英語表現は?

では、『杓子定規』を英語で伝える場合はどのような言い回しがあるのでしょうか。最後に、『杓子定規』を言い表せる英語表現をご紹介します。

1:He is a stickler for rules and regulations.

「彼はいつも杓子定規だ」
”stickler for”という表現は、「○○にうるさい人」という意味。例文を直訳すると「彼はルールや手順にうるさい人だ」となり、『杓子定規』な人と言い換えられそうですね

2:Can’t you think more flexibly?

「君はそんな杓子定規な考え方しかできないのか?」
flexiblyという単語は「柔軟に」という意味。例文では「もっと柔軟な考え方ができないの?」となります。頑固で融通の利かない、『杓子定規』と言えそうです。

3:go by hard‐and‐fast rules

「かたくなに規則に従う」という意味の英語表現です。規則やルールに当てはめて処置しようとする『杓子定規』と同じ表現だと言えそうです。

4:Joseph

固有名詞では「堅物」「融通の利かない男」を指す Joseph(ジョセフ)という言い方もあります。『杓子定規』な人を指す「石部金吉」に通じるものがありそうです。

『杓子定規』の意味と由来を知って、優しく使いましょう。

今回は『杓子定規』の意味や語源、使い方から類語、対義語、英語表現までをお伝えしました。

どちらかというとネガティブな表現で使われがちな『杓子定規』ですが、対義語や由来を正しく理解すればコミュニケーションのきっかけになるかもしれません。しゃもじやお玉を見ると、『杓子定規』の由来を言いたくなってしまうかも?

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構成・文/kidamaiko

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