「三顧の礼」とは?
まずは、『三顧の礼』の読み方と意味を確認しておきましょう。
読み方と意味
この言葉は『三顧の礼』と書いて、「さんこのれい」と読みます。上司や年長者など、目上の者が目下の者のもとに幾度も出向くなどして礼を尽くし、物事をお願いするという意味の故事成語です。
「三顧之礼」とすべて漢字で表すこともあります。
由来・語源
『三顧の礼』は、古代中国の歴史書「三国志」に書かれた故事が由来となっています。
舞台は古代中国の蜀(しょく)という国。後に皇帝となる劉備(りゅうび)が、大幅に年下で当時は無名であった諸葛亮(しょかつりょう)という人物が優秀である、というウワサを耳にします。劉備は諸葛亮を軍師として迎え入れたいと考え、自ら諸葛亮の住まいを訪ねました。しかし2度は留守で会うことができず、3度目にやっと会えて招くことができたそうです。この故事から『三顧の礼』という言葉が生まれました。
「三顧」とは、3回にわたって訪問するという意味です。高い位に就いていた劉備が、年下で無名という明らかに格下の諸葛亮を3度に渡って訪ねたことから、目下の者にお願いする際に使います。
『三顧の礼』で迎えられた諸葛亮は、大活躍!
『三顧の礼』で迎えられた諸葛亮は、その後、諸葛孔明(しょかつこうめい)という名前で蜀の軍師として活躍しました。皇帝となった劉備の下で最強の軍師と讃えられ、たくさんの書物も残しています。歴史が好きな方なら、名前を聞いたことがあるかもしれませんね。
使い方を例文でチェック!
では、『三顧の礼』の使い方を例文でチェックしていきましょう。
1:彼女は、社長が三顧の礼で当社に迎え入れた人材だ
社長など地位の高い方が、自社に直接誘うなどして迎える際によく使われます。
2:卒業生のメジャーリーガーを、校長先生が三顧の礼を尽くして母校に招いた
校長先生にとっての卒業生は、スーパースターであっても教え子。校長先生が直接何度もお願いして母校に招く際には『三顧の礼』を使います。
3:三顧の礼のような対応をされたからには、断りにくい
目上の人から何度も直接依頼され、断りにくくなった状況を表す場合にも『三顧の礼』が使えます。
類語や言い換え表現は?
では、『三顧の礼』を別の言葉で言い換えたい場合、どのような表現を使うことができるのでしょう。『三顧の礼』の類語を見ていきましょう。
1:草廬三顧(そうろさんこ)
「草廬三顧」とは、『三顧の礼』と同じく、立場が上の人が礼を尽くし、優れた人材を招くことです。「三顧」という言葉でもわかるように、語源は『三顧の礼』と同じです。
「草盧」とは草ぶきの粗末な家という意味。劉備が諸葛亮の住む草盧を3度訪れたということから、『三顧の礼』のほかに「草盧三顧」という言葉も生まれました。
2:三拝九拝 (さんぱいきゅうはい)
「三拝九拝」は何度も頭を下げて頼んだり、感謝したりすることを表す言葉です。手紙の末尾に記して敬意を表す四字熟語としても使われています。何度も依頼したり感謝したりする様子は『三顧の礼』に似ていますね。
3:招聘(しょうへい)
礼を尽くして人を招く、という意味の「招聘」。大切なお客様を招く際に使われる言葉です。海外からお客様をお招きする際、ビザ申請に必要な書類は「招聘状」といいます。大切なお客様を丁寧にお招きするという点で『三顧の礼』と近い言葉と言えます。
対義語は?
『三顧の礼』はことわざなので、明確な対義語にあたる意味の言葉ありませんが、ニュアンスとして逆の意味にあたる表現をさがしてみました。
1:慇懃無礼(いんぎんぶれい)
慇懃無礼とは、表面上は丁寧だけれども、実は偉そうで見下した態度であること。地位の高い人が礼を尽くす『三顧の礼』とは反対の意味の言葉と言えそうです。
2:門前払い(もんぜんばらい)
『三顧の礼』が丁寧に迎え入れる意味であるなら、来てくれた人を失礼な態度で突っぱねる「門前払い」を対義語として挙げてもよさそうです。門前払いは、礼を尽くさない意味でも、また、迎え入れずに追い払う意味でも、『三顧の礼』と真逆の言葉と言えそうです。
3:冷遇
『三顧の礼』はその丁寧な迎え入れ方から、相手を優遇していることがうかがえます。となると優遇の対義語である冷遇は、結果として『三顧の礼』とは逆の言葉と考えられそうですね。
4:左遷
左遷は「低い地位・官職におとすこと」。低い役職におろす降格人事や、昇進や活躍の見込めない職場や僻地に赴任させることをいいます。昔の中国で右を尊び左を卑しんだところから生まれた言葉です。うやうやしく迎えて活躍できる立場に抜擢する『三顧の礼』とは逆の言葉として挙げてみました。
英語表現は?
では、『三顧の礼』を英語で伝える場合はどのような言い回しがあるのでしょうか。最後に、『三顧の礼』と似た意味の英語表現をご紹介します。
1:show(ing) special courtesy
courtesy は丁重な、という意味。show special courtesy とは「最大限の敬意を払う」「最大限の誠意を見せる」という意味になり、『三顧の礼』に近い表現になります。
2:with all eagerness
with eagerness には「熱心に」という意味があります。allを加えると「全力で」「何としても」という表現になり、『三顧の礼』にも通じる言葉です。
2:go all out
go all outには「全力を尽くして」という意味があります。お願いする姿勢としては『三顧の礼』に近いと言えるでしょう。
最後に
今回は『三顧の礼』の意味や語源、使い方から類語、対義語、英語表現までをお伝えしました。
古代中国の物語である三国志ですが、子ども向けに書かれたものもあり、学校や図書館などでも気軽に読めます。『三顧の礼』の場面も登場しますので、機会があれば読んでみてはいかがでしょうか。
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構成・文/kidamaiko