「高校無償化」制度をご存じですか? 公立と私立でどう違う? 概要・要件や自治体独自の制度も紹介

「高校無償化」とは、具体的にどのような制度を指すのでしょうか? 対象者の条件や、制度の概要を解説します。
自治体によっては独自の制度を設けていることもあり、居住地の制度確認も必要です。主に、東京都・大阪府の制度についても確認しましょう。

高校無償化の概要

 

文部科学省では、「高等学校等就学支援金制度」を実施しており、一定の要件を満たす人は高校の授業料に充てるための支援金が支給されます。公立高校と私立高校で、どのような違いがあるのかを見てみましょう。

公立高校無償化の概要と要件

公立高校に通う生徒が要件を満たした場合、「高等学校等就学支援金制度」によって、公立高校の授業料である年額11万8,000円が支給されます。

要件を満たしているかどうかは、「保護者などの市町村民税の課税標準額×6% – 市町村民税の調整控除の額」で計算が可能です。両親2人分の収入合計額で計算し、計算結果が30万4,200円未満であれば、支援金支給の対象です。年収の目安としては、おおよそ910万円未満とされています。

あくまで、910万円は目安であり、子どもの人数や両親の働き方によって実際の年収目安は異なります。例として、両親が共働きで、高校生の子どもが1人、中学生以下の子どもが1人いる場合、世帯年収の目安は約1,030万円未満です。

私立高校無償化の概要と要件

私立高校に通う生徒が要件を満たした場合、「高等学校等就学支援金制度」によって、私立高校の平均的な授業料である年額39万6,000円が支給されます。

私立高校に通う生徒への支給額が39万6,000円になったのは、2020年4月からのことです。ただし、支給要件は公立高校と異なります。

要件を満たしているかどうかは、「保護者などの市町村民税の課税標準額×6% – 市町村民税の調整控除の額」で計算が可能です。両親2人分の収入合計額で計算し、計算結果が15万4,500円未満であれば、支援金支給の対象です。年収の目安としては、おおよそ590万円未満とされています。

あくまで、590万円は目安であり、子どもの人数や両親の働き方によって実際の年収目安は異なります。例として、両親が共働きで、高校生の子どもが1人、中学生以下の子どもが1人いる場合、世帯年収の目安は約660万円未満です。

出典:2020年4月からの「私立高等学校授業料の実質無償化」リーフレット

東京都・大阪府の高校無償化制度

東京都と大阪府では、文部科学省による「高等学校等就学支援金制度」に加えて、独自の支援を行っています。どのような支援があるのか、基本的な概要を確認しましょう。

2024年に新制度が開始

東京都と大阪府では、2024年から新しく、所得制限なしで高校の授業料に充てる費用を支給する制度が始まっています。

国の制度では年収目安910万円までの世帯が対象ですが、東京都と大阪府では、国の制度に加えて、自治体の負担で支援金が受け取れる点が特徴です。

制度の内容は自治体ごとに差がありますが、大阪府の場合、公立高校に通う生徒は「国公立高等学校等授業料無償化制度」によって授業料に充てる費用分が支給され、私立高校などに通う生徒は、「私立高校等授業料無償化制度」によって授業料に充てる費用分が支給されます。支給を受けるためには、それぞれの制度に申請が必要です。

出典:よくある質問について(私立高校生等への授業料支援・令和6年度新制度)/大阪府(おおさかふ)ホームページ [Osaka Prefectural Government]
所得制限なく私立高校等の授業料を支援|東京都

東京都の補助は最大48万4,000円

東京都では、「私立高等学校等授業料軽減助成金」として、私立高校などに通う生徒に年額最大48万4,000円が支給されます。

保護者が東京都内に在住していることが要件で、子どもが都外に進学する場合も対象です。

国の制度では39万6,000円ですが、東京都の制度では48万4,000円が上限です。世帯年収を問わず、授業料相当分が48万4,000円まで支給されます。

国の制度の対象となる人が両方の支援金を受け取るには、国と東京都両方に申請が必要です。国の制度の対象外となる人は、東京都に申請します。

公立高校に通う生徒も、世帯年収目安910万円を超え、国の制度の対象外となっている世帯は、東京都に申請すると、自治体の負担で公立高校の授業料分が支給されます。

出典:都立高等学校等における授業料の実質無償化について | 東京都立三鷹中等教育学校 | 東京都立学校

大阪府の補助は段階的に拡大予定

大阪府では、段階的に補助を拡大していく予定です。

2024年度から2025年度にかけては、対象の私立高校などに通う生徒に対し、授業料相当分が63万円まで支給されます。63万円を超える分は、保護者の負担です。

2026年度には、63万円を超える分も大阪府が負担し、完全無償化を目指しています。

保護者が大阪府在住であることや、対象の高校に在学していることなどが主な要件です。

出典:⼤阪府の⾼等学校等の授業料無償化制度について
令和6年度以降に段階実施する授業料支援制度について/大阪府(おおさかふ)ホームページ
府立高等学校の授業料と就学支援金について/大阪府(おおさかふ)ホームページ

その他の高校就学支援や助成金

高校無償化に向けて、国が実施する授業料無償化制度以外にも、さまざまな支援が行われています。東京都・大阪府以外の自治体が実施する支援や、授業料無償化以外の支援についても確認しましょう。

東京都・大阪府以外の独自支援も

各自治体では、それぞれ独自の支援を実施しており、基本的に国の制度と併用が可能です。

例えば、神奈川県の場合、目安として年収700万円未満の世帯に対し、対象となる私立高校などの授業料・入学金などを支援する制度を実施しています。多子世帯の場合は、目安として年収910万円未満の世帯が対象です。私立高校に通う場合、国の支援は年収目安590万円未満のため、国の制度が対象外になる人も自治体の支援を受けられます。

保護者と子どもが神奈川県内に在住し、県内の対象高校に通っていることが主な支給の要件です。

神奈川県のように、自治体によって国の制度に上乗せする制度を実施しているケースがあるため、利用できる制度があるか居住している自治体の動向を確認しておきましょう。

出典:学費補助金について – 神奈川県ホームページ

奨学給付や補助制度も充実

国の制度には、授業料分の支援金を支給するだけでなく、奨学給付や補助制度もあります。

例えば、家計急変への支援として、各自治体は授業料の減免などを実施しています。自治体によって要件が異なるため、入学時に就学支援金制度の対象になっていない場合は、何らかの制度が使えるか確認してみましょう。

そのほか、生活保護受給世帯や住民税非課税世帯に対しては、授業料の支援以外に奨学支援も実施されています。教科書代や修学旅行費用などに充てることも可能です。

また、一度高校を退学し、学び直しの機会を設けたい人に対して、就学支援金と同等の支援金が支給される制度もあります。

出典:その他の修学支援策:文部科学省
高校生等奨学給付金:文部科学省

高校無償化に関するQ&A

「高等学校等就学支援金制度」や、自治体独自の制度には気になる点もあります。疑問点を解消するために、気になる疑問と回答も確認しましょう。

Q:都道府県外に進学する場合は対象?

国の制度である「高等学校等就学支援金制度」の対象となっている場合、保護者が居住している自治体と子どもの進学先の自治体が異なっていても、支援金が支給されます。

しかし、自治体の制度は、各自治体でルールが異なるため注意が必要です。例えば、東京都の場合は子どもの進学先が都外であっても対象ですが、神奈川県の場合は県内の対象高校のみに限られます。

進学先によっては、居住している自治体の制度を利用できないケースもあるため、高校進学前に確認しておきましょう。

出典:学費補助金について – 神奈川県ホームページ
所得制限なく私立高校等の授業料を支援|東京都

Q:授業料以外にかかる費用はある?

現在の「高校無償化」は、主に授業料の負担を軽減する制度です。しかし、高校に通う場合、授業料以外にかかる費用もあります。

例えば受験料・入学金・教科書代・課外活動費・食費・交通費などは、保護者または生徒が負担しなければなりません。生活保護受給世帯や住民税非課税世帯に対しては授業料以外の支援もあるものの、現時点で「完全無償化」ではない点は把握しておきましょう。

とはいえ、授業料は高校生活にかかる費用の多くを占めているため、大幅に必要な費用が軽減されていることは事実です。

出典:2.調査結果の概要|文部科学省

Q:大学は無償化になるの?

現状、大学の無償化は行われていませんが、低所得者向けの授業料減免支援は始まっています。国が実施する制度には返還不要の給付型奨学金や、授業料が一部減免されるなどの支援があり、金銭面で進学を迷っている学生が進学しやすいよう、サポートを受けられるのです。

また、2024年度からは修学支援新制度の改正が行われ、低所得者だけでなく多子世帯や私立大学の理工農系に進学する学生への支援も広がっています。改正によって、世帯年収600万円程度の中間層も給付型奨学金や授業料の減免を受けられるようになりました。

また、2025年度以降は、子ども3人以上の世帯に対して、大学・短期大学・高等専門学校(4・5年)・専門学校の授業料・入学金を無償化する制度が開始される予定です。所得制限はありませんが、子ども3人以上が同時に扶養を受けていることが条件となっており、年の近い子どもが3人以上いる家庭が対象となっています。また、対象の大学が決まっているため、支援を受けるには対象校への進学が必要です。

出典:高等教育の修学支援新制度:文部科学省

高校無償化制度の活用で進路の幅が広がる

国は、一定の年収未満の世帯が対象となる「高等学校等就学支援金制度」を実施しています。国の制度によって、高校の授業料に充てる費用が給付されるため、実質無償化と同等の仕組みです。

自治体によっては国の支援に上乗せして、所得制限なく授業料に充てる費用を負担しているところもあります。

しかし、高校に通う上でかかるのは授業料だけではありません。授業料以外の費用はかかるため、ある程度の備えは必要です。今後、子どもに対する手当が充実する可能性もありますが、子どもの進学にかかる費用は準備しておくほうがよいでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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