次期トランプ政権の「関税発動」の影響は? 日本が標的じゃなくてもダメージ受けるの?【親子で語る国際問題】

今知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は第2次トランプ政権の関税について解説します。

トランプ色が強い政権運営に

2024年11月のアメリカ大統領選挙ではトランプ氏が圧勝し、同時に行われた連邦議会選挙でも、議会上院と下院では共和党が過半数を獲得。大統領も議会も共和党のシンボルである赤で染まる「トリプルレッド」と呼ばれる状況になりました。

そして、2025年1月にいよいよトランプ政権が再発足します。トランプ氏は政権人事で1期目の経験を活かし、自らに忠誠心の高い人物を重要なポストに配置しているため、1期目以上にトランプ色が強まると多くの専門家は指摘しています。

中国やメキシコ、その他諸外国の製品に高い関税をかける見込み

トランプ政権になることで、日本企業は今日1つの大きな問題に直面しています。それが、関税です。

今から6年以上前のことですが、トランプ氏は政権1期目の時、蓄積する米国の対中貿易赤字を打開するため、2018年以降、中国製品に最大25%の関税を課す制裁措置を次々に発動していきました。安価な中国製品が米国に大量に流入することで、米国内の産業が競争力を失っていることに危機感を覚え、中国製品に高い関税を課すことで、競争力を低下させようとしたのです。

しかし、それに対して中国も米国製品に対して報復的な関税を課すなどし、米中間の貿易摩擦は激化していきました。

そして、それが再び到来しようとしています。トランプ氏は、今回の選挙戦の時から中国製品に対する関税を一律60%、その他の諸外国からの製品に10%から20%、メキシコからの輸入車に対する関税を200%にするなどと主張してきました。

最近になって具体的な関税率は異なるものの、就任初日から中国製品に10%の追加関税、メキシコ・カナダからの全輸入品に25%の関税を課す方針を示しています。メキシコへの25%は同国で自動車を製造し、米国へ輸出している中国企業が念頭にあるものと考えられますが、2025年以降、米中間では再び関税発動の嵐が吹くかもしれません。

中国で製品を作って米国に輸出する日本企業にも影響が・・・

しかし、これは日本にとっても対岸の火事ではありません。トランプ氏は日本を直接標的とした関税を発動していませんが、中国企業だけでなく、中国で製品を作り、それを米国へ輸出する日本企業も影響を受けることになるのです。

現在で言えば、そういった日本企業はトランプ氏が主張する10%の追加関税の壁に直面することになり、メキシコで自動車を生産し、それを米国へ輸出しているトヨタや日産など大手自動車メーカーは25%のトランプ関税に直面することになります。

ホンダはメキシコで生産する車の8割を米国で輸出しているとのことで大きな懸念を示しており、これより後は米国ではなく、中南米や第3国への輸出に切り替える動きが拡大するかもしれません。

今後、トランプ氏は中国を主要な標的として、さらなる関税発動に踏み切る可能性が高く、日本企業にとって今後の4年間は関税が最大の課題になることでしょう。

この記事のポイント

①トランプ氏は自らに忠誠心の高い人物を重要ポストに置き、トランプ色の強い政権に

②トランプ氏は就任初日から、中国製品に10%、メキシコ・カナダ製品に25%の関税を課す方針

③日本は直接標的とされていないものの、中国で製品を作って米国に輸出する企業は影響を受ける見込み

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記事執筆/国際政治先生

国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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