《子どもの不登校》一人では無理だった…専門家の力を借りて「不登校のカベ」を乗り越えるまで【漫画家 川口真目さん親子の体験記・後編】

息子さんの不登校経験を綴ったnote「【漫画】子どもが不登校になったのでいろんな人に頼ってみた。」を描いたイラストレーター・漫画家の川口真目(まさみ)さん。学校に行かない生活を送る中で、カウンセラーやフリースクールなど、さまざまな専門家に頼っていたそう。
川口さんへのインタビュー後編は、専門家と出会うまでの道のりや心境の変化などを伺いました。

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自分と合うカウンセラーが見つからず、メンタルを崩すことも

――カウンセラーさんはどのように探されたのですか?

川口さん:漫画には短縮版で書いていますが、実際は不登校専門のカウンセラーさん10人くらいとお会いしました。でも、なかなか自分と合う方と出会えず、私がメンタルも体調も崩してしまいました。

ネットで検索したり、学校のスクールカウンセラーさんから紹介してもらったりしましたが、「不登校克服」や「解決」など、「復学」を目的にしているところは避けました

学校に戻ることになったら、それはそれでよいですが、親がはじめから学校に戻すことを考えたら、 多分それが息子に伝わり、ますます回復が遠のいてしまうと思ったからです。 ですから、私たちの心に寄り添ってくれて、学校以外の選択肢も考えてくれる カウンセラーさんを探していました。

そんな中、もともと私が夫婦関係や仕事、育児で悩んだときにカウンセリングを受けていた心理カウンセラーの先生に話を聞いてもらうことになりました。その先生自身も不登校のお子さんを育てていたので、私も安心して本音を話すことができました。

「親の愛情が足りないから息子が不登校になったのかも…」と先生に話すと、「親の愛情と不登校は関係ない。むしろ不登校になって傷ついている子どもにはいつもより愛が必要」と言われ、心が軽くなったのを覚えています。そして、「心配よりも信頼してあげて」とアドバイスを受けました。

ただそのカウンセラーさんはその後引退されることになったため、私が体調的にも元気になったところで冷静になってもう一度不登校専門のカウンセラーさんを探したところ、すごくよい方と巡り会いました。

息子はすごく他人のことをよく見ているので、「カウンセラーさんのところへ行く」というと警戒してしまうんです。私がお金を払おうとすると「僕のためにごめんね」というほど気を遣ってしまうところもあります。それを先生に話したら、お母さんの友達という設定で来てくださいといわれ、お金も目の前で渡さなくてOKですと言ってくれました。

子どものカウンセリングは私もどんなことをするのかなと思っていたのですが、遊びやゲームを通して子どもの特性とか傾向をよく見てくださっています。

――自分に合うカウンセラーさんが見つかってよかったですね! 何も情報がない中では、どこに相談していいかわからないですよね

川口さん:そうなんです。私がこの漫画を公開したときにも、読者の方からのコメントで圧倒的に多かったのが、「子どものことを誰に相談すればよいのかわからない」というものでした

私も本当にまったく同じで、学校の先生に相談してもほとんど情報がない状態だったので困りました。学校によって、有志で不登校の親がグループを立ち上げたりしているところもあるそうです。そういうところで情報を共有できたり、つながりができたりするとよいのですが…。

「テストを受けるのが怖い」という状況から、フリースクールに通うまで

――それからフリースクールに行くようになったのですか?

川口さん:息子の今後の生活を考えたときに、親がどれくらい口出しすべきなのか迷いました。なので、私と夫の経験を交えながら息子とはたくさん話をしました。「パパはサボったりもしたけど、普通に学校に行って、働いているよ。宿題はほぼしたことないけど…」とか、「ママのように会社ではなくフリーランスの生き方もあるよ。他の人と違うことをするのはめちゃくちゃ大変だし、反対されることもあるけど、本当に好きなことならやっていけるよ」とかざっくばらんに話しました。

また、今すぐ決める必要はないけれど、学校ではなく家庭教師とかフリースクール、通信制という選択肢もあるということも伝えました。

写真はイメージです。

――フリースクールはどのように決められたのですか?

川口さん:これは本当に運がよかったのですが、小4の夏休みに入った頃、もともと息子が通っていた塾の先生から、「これからフリースクールを開校したいと思っている」と言われました。それで9月から少しずつそこに行き始めましたが、最初は行ける日と行けない日を繰り返していた感じです。でも、先生たちがすごくサポートしてくださり、10月くらいからはほぼ毎日通っていましたね。朝からではなかったのですが、13時から18時くらい、遅い時は21時くらいまで行っていました。

でもこれは本当にレアケースだと思います。私もいろいろ調べたり、見学に行ったりもしましたが、息子が外に出られない状況だったら家に来てくださる家庭教師のような方にお願いするのもよいなと考えていました。

――フリースクールではどんなことをしていたのですか?

川口さん:母体が塾なので、もちろん勉強はするのですが、通い始めた頃の息子はまだ精神的に回復できていない状態だったので、誰かにジャッジされることが怖くてテストを受けたがらなかったんです。

先生もそんな状況を理解してくださり、塾のお手伝い、例えば掃除とか授業の準備とか買い物などを一緒にやらせてもらったり、幼稚園児に授業を教えるアシスタントのようなことをさせてもらったりしていました。そうしているうちに自信を取り戻してきたのか、テストも受けられるようになりました。

写真はイメージです。

もともと「子どもたちの”好き”を伸ばす」というような方針の塾だったので、息子に合っていたのだと思います。先生からは、「親は今の子どもの状態を見ていると、ずっとこのままなんじゃないかと思ってしまうかもしれませんが、そうではなく、先に親が信じてあげてほしい」と言われました。

「学校に行ってほしい」とか、「受験に合格してほしい」とかではなく、「この子だったら何があっても大丈夫」というのをまず信じるのが先だと。そうやって自分のマインドを変えることで、その気持ちは子どもに伝わると言われました。

子どものことを信じるって頭ではわかっていてもなかなか難しくて…でも、それを意識するようになってから、息子が「今日はフリースクールに行く」「今日は休む」とか、自分のことを自分で選択できるようになってきたように感じます。親が信じることって本当に大事なんだなと思いましたね。

現在はフリースクールと学校に通学中。専門家に頼ったから自分の意識を変えられた

――ソウくんは現在はどのような生活を送っていますか?

川口さん:今息子は小6で、春からは中学生になります。フリースクールにも行っていますが、 7、 8割は学校に行っています。4年生の3学期から少人数の補修クラス(息子の学校はマンモス校で、教科ごとの補修クラスがありました)に少しずつ出席するようになりました。今は理解してくれる担任の先生のクラスになり、学校に通っています。

写真はイメージです。

――ソウくんの気持ちにも変化があったのでしょうか?

川口さん:今振り返って言ってくれるのですが、不登校になった頃はよく悪夢を見たそうです。ママとパパは自分のことを好きでいてくれるし、ひどいことも言わないけど、どこか不安だったみたいです。「僕だけ学校に行っていないから」と…。

でも学校に行けない期間に、息子以上に私が一緒に楽しんでいる姿を見たときに、「僕のために気を遣ってるんじゃないんだ」とわかり、不安がなくなっていったと言っていました。

私は今、元不登校だった方に取材をしているのですが、すごく相手の気持ちを受け取ってしまう子とか、気を遣ってしまう子って多いんですよね。もちろん全てではないですが、「親に迷惑をかけちゃいけない」と思っている子も多いみたいなんです。

うちの息子もまさにそうなので、親が子どもを信頼し、積極的に楽しむ姿勢を見せるのはよかったと思います。

ただ、私がそう思えるようになったのはカウンセラーさんやフリースクールの先生、専門家の方や学校の中で理解してくれた先生に頼ることができたからであり、一人では絶対無理だったと思います。

――ありがとうございました。川口さんは現在不登校の経験を綴った本も執筆されているそうですね。ぜひ多くの方に届いてほしいです。

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お話をうかがったのは

川口真目|イラストレーター・漫画家
ズボラな主婦のエッセイ漫画家。著書『名もなき家事妖怪』『子育てしながらフリーランス』、『ゼロからわかる お金のきほん』。好きなものはゲーム、苦手なものは家事。
X(旧Twitter) @kawaguchi_game
note  川口真目(Masami Kawaguchi)
インスタグラム @kawaguchi_game

文・構成/平丸真梨子

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