「左利き」の特徴とは? 右利きの人と何が違う? メリット・デメリットや矯正の必要性を解説

右利きの人は、左利きの人に「天才肌」「センスがいい」などのポジティブなイメージを持っているケースが多々あります。しかし、実際のところはどうなのでしょうか? 左利きの特徴や長所・短所を解説します。併せて利き手矯正の是非についても解説します。

利き手に関する基礎知識

左利きの特徴を考える前に、「利き手はいつ頃決まるのか」「右利きと左利きは何が違うのか」など、利き手に関する基本的な知識を頭に入れておきましょう。利き手に関する知識を身に付けることで、左利きに対する見方が変わるかもしれません。利き手の基礎知識を解説します。

利き手を決める要素

「何をもって人は左利きになるのか」は、今なお謎が多い分野です。

一説によると、子どもが左利きになるかどうかは、遺伝的要素が関係しているといわれています。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)が1992年に行った調査によると、両親がともに右利きだった場合に子どもが左利きになる確率は、約9.5%でした。対して、両親がともに左利きだった場合には、その確率が約26.1%まで跳ね上がることが報告されています。

人が左利きになる要因としては、環境要因も指摘されています。胎児のときの環境によって利き手が決まる可能性があるのです。また、「右脳と左脳のどちらが優位なのか」という生物学的要素も、利き手を決める要因の一つとして考えられています。

出典:The genetics of handedness,cerebral dominance and lateralization I.C. McManus and M.P. Bryden

利き手は3~4歳頃に決まる

一般的に子どもの利き手が決まるのは、3~4歳の頃といわれています。それ以前は両手を使う機会が少ないため、たとえ左手をよく使っていたとしても、左利きとは断定できません。

わが子の利き手を見極めたいのであれば、3~4歳くらいになったとき、下記のようなシーンに注目してみましょう。

・自らものを取ろうとするとき
・手渡されたものを受け取るとき
・食事中にスプーンやフォークを持つとき
・転倒しそうになって手を出すとき

このようなシーンで子どもが左手を使っていれば、その子は左利きである可能性が高いといえます。

右利きと左利きの違い

右利きと左利きの違いとして挙げられるのが、脳の使い方です。たとえ同じ世界に暮らしていても、脳の使い方が根本的に違っているため、右利きと左利きではものの見え方が大きく異なると考えられているのです。

右利きの人は主に左脳を使用するといわれています。左脳派の人は、筋道を立てて物事を考えたり、物事を分析的に観察したりするのが得意な傾向があります。言語を使って感じたことを表現しがちなのが、右利きの特徴です。

一方、左利きの人は主に右脳を使用するといわれています。右脳派の人は、直感的に物事を判断したり、創造力が求められる仕事をこなしたりするのが得意といわれています。感覚的に物事に接するのが左利きの特徴です。

参考:脳内科医が「左利きが独創的なのは宿命」と断言する理由 | すごい左利き | ダイヤモンド・オンライン

左利きの人の特徴

左利きの人には共通する特徴があります。左利きの子どもを育てている人には、左利きのわが子が持つ「ポジティブな特徴」を伸ばしてあげる姿勢が求められるでしょう。左利きの人の特徴を紹介します。

独創的な発想が得意

創造力をつかさどる右脳を積極的に使用する左利きは、他の誰にも思い付かないような独創的な発想ができるとされています。左利きは右利きとは異なる視点で物事を捉えているので、圧倒的多数派である右利きには思い付かない発想が生まれやすいといえるのです。

実際に作家や芸術家など、創造性が求められる職業には、左利きの人が多く活躍しています。彼ら・彼女らが生み出す「独自の視点」を持った創作物は、世の中の多くの人を楽しませています。発想力が求められる業界では、左利きの人は欠かせない存在です。

直感力に優れている

右脳を駆使して世の中を生き抜く左利きの人は、直感的に物事を判断する力に長けているといわれています。このような特徴が生まれる背景には、右脳と左脳の違いが関係しています。

左脳は言語で表現できる情報を蓄える部分です。言葉を使って情報を処理し、論理的に考えるのが得意なので、時間をかけて答えを出す場面で能力を発揮しやすいといえます。右利きの人はじっくり考えるのが得意といえるのです。

対して右脳は、言語化しにくい情報を数多く蓄える部分です。言語化できない情報を次から次へと引っ張り出して、「なんとなくこっちがいい!」と決断するのが得意といえます。そのため左利きの人は、瞬間的な判断が必要になったときでも迷わず「自分が正しいと感じた選択肢」を選ぶことが可能です。

スポーツで大成しやすい

左利きの人はスポーツの面でも才能を発揮しやすいといわれています。「左利きはスポーツが得意」といわれる背景には、左利き人口の少なさが関係しています。

左利きは、日本国内では約10%しかいない「珍しい存在」です。当然、スポーツの世界でも大半を占めるのは、右利きの選手となります。

左利きの選手は、右利きの選手では対応しにくい動きや、予測しにくい動きを実践できる可能性を持つ存在です。右利きの選手が多い状況下では、多くの選手が「左利きを生かした動き」に対応しにくいため、左利きは大きな武器になり得ます。

ただし、左利きでスポーツを極めるとなると、左利き用の道具を調達するのに苦労する場合があります。幼少期は親の熱心なサポートが必要になるでしょう。

強いこだわりを持っている

こだわりが強い一面を持っているのも、左利きの特徴の一つといえます。

左脳より右脳を活用している左利きの人は、圧倒的多数派の右利きの人とは異なる視点で世界を捉えていると考えられています。そのため、他人には理解しがたいマイルールを持っていることが多いのです。

クリエイティビティが求められる仕事に就いた場合、強いこだわりがプラスに働く可能性は十分にあります。何のこだわりもなく、雰囲気に任せて仕事をしてしまう人では、創造的な仕事で身を立てるのは難しいでしょう。かえって納得できるまで完成度を高める姿勢を持っている人の方が、好意的に映るはずです。

しかし、プライベートにおいては、こだわりの強さゆえに周囲から浮いてしまう恐れがあります。周囲を取り巻く大人には、左利きの子どもが人間関係に悩んでいないか、注意深く観察する目が求められるでしょう。

参考:「左利きは直感がすごい」脳内科医が断言する新事実 | すごい左利き | ダイヤモンド・オンライン

左利きのメリット・デメリット

左利きには、右利きとは異なる視点があり、長所と短所の両面があります。両方を正しく認識して、マイノリティーである左利きの人に対する理解を深めましょう。利き手が左の人が抱える長所と短所を解説します。

【メリット】右脳と左脳がバランスよく育つ

左利きとして生活する利点として挙げられるのが、右脳と左脳を均等に育めるという側面です。この利点が生まれる背景には、社会のあり方が大きく関係しています。

日本では右利きの人が圧倒的に多いので、日本社会は右利きの人が生活しやすいように設計されています。そのため左利きの人は、半ば強制的に右手も使わざるを得ません。

右手と左手両方を使用する生活は、右脳にも左脳にも均等に刺激が伝わる「脳トレ」的な側面があります。結果的に右脳ばかり・左脳ばかりが育つことなく、脳全体を活性化できると考えられているのです。

【デメリット】生活面で不便を強いられるシーンが多い

右利きの人が生活しやすいように設計されている日本社会は、左利きの利点と同時に左利きの欠点をも生んでいます。右利きが暮らしやすい世の中では、左利きの人はあらゆる場面で不便を強いられているのです。

左利きが苦労するシーンの代表例が「はさみを使うとき」です。はさみには右利き用と左利き用が存在します。もし、左利きの人が無理やり右利き用のはさみを使おうとすれば、刃の合わせ方の関係から、はさみの切れ味が大きく損なわれてしまいます。

「改札を通るとき」も左利きの人が苦労するシーンの代表例です。改札に設置されているカードリーダーは、全て右側に置かれています。交通系ICカードを読み取る際、左利きの人は腕をわざわざクロスさせています。

左利きは矯正すべき?

生活面での苦労を考えると、「左利きは矯正すべきなのかな?」と不安になる人も多いでしょう。しかし近年では、左利きを個性と捉える考え方が一般的です。利き手矯正の現状や左利きの子どもの育て方を解説します。

最近は「矯正しない」が主流

一昔前までは「左利きは矯正すべき」という考え方が根強かったものの、最近では「左利きは個性だからわざわざ直す必要はない」とする考え方がメジャーになってきています。昨今では、利き手矯正の悪影響も指摘されており、よほどの理由がない限り、実施しないのが適切とされています。

利き手矯正の弊害としては、左右を識別できなくなる「左右失認」や、とっさに声を出しにくくなる「吃音症」などが指摘されています。この他にも、右手の使用を強制されることで生じる「強いストレス」や、左手を使わないよう指導することで現れる「自己否定」などが副作用として挙げられます。

利き手矯正のやり方

弊害を承知した上で「それでも利き手を矯正したい」と思うのであれば、右脳と左脳の成長のバランスが取れてくる10歳以降に行うのが適切です。子どもの脳はまず右脳から成長し、後から左脳が成長していきます。そのため、十分に年齢を重ね、右手をつかさどる左脳が成長してからの方が、矯正に適しているといわれています。

具体的な利き手矯正のやり方は、生活の中で自然と右手を使う頻度を増やすのが基本です。例えば、「歯磨きを右手で行う」「宿題をするときは右手を使う」などの取り組みを行うと良いでしょう。

利き手矯正を実践するときのポイントは、両手利きを目指す感覚で楽しく進めることです。「何としてでも右利きにさせる」と意気込むと、子どもに過度なストレスを与えてしまう恐れがあります。

左利きの子どもの育て方

左利きを「その子の個性」として伸ばすには、適切なサポートが必要不可欠です。左利きの人はそうでない人には想像しがたい困難を抱えているため、そばにいる大人が適切にサポートしていかないと、快適に生活するのが難しくなってしまいます。

具体的には、子どもが気持ちよく生活できるように、左利き用の生活用品を用意することから始めましょう。特にはさみは工作をする際に頻繁に使用するため、専用のはさみを用意しないと、子どもに不必要なイライラを感じさせることになります。

また、家庭での座り位置を工夫するのも適切なサポートの一つです。右利きの家族が右に座り、左利きの家族が左に座れば、食事の際や作業をする際、腕がかち合わなくなります。

サポートした上でそれでもできないことがある場合には、焦らず見守ることが大切です。試行錯誤を通して成長していくわが子の姿を見届けてあげましょう。

参考:「左利きは右利きに矯正すべき?」脳内科医が明かすメリット・デメリット | ダイヤモンド・オンライン

左利きは個性! 矯正せずに伸ばしてあげよう

自分が右利きの場合、わが子が左利きだと分かったとき、「矯正」という選択肢が頭をよぎるはずです。しかし、左利きはあくまでも「個性」です。矯正せず、その子のありのままを伸ばしていくという考え方が最近は主流になりつつあります。サポート体制を整えて、わが子がのびのび個性を発揮できる環境を作りましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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