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【連載第五回】今回のテーマは「左利き」
なお:最近、学童文具を見ていると、特にハサミや定規に「左利き用」「左用」という商品をよく見かけるんですね。
他故:確かに最近増えてきましたね。
なお:でも、左利きの家族に聞くと「40年以上右利き中心の世の中で慣れてきてしまって、専用品が必ずいいかというとよくわからない」って言われるんです。
他故:なるほど。我が家も子どもが左利きですが、息子くらいの年齢だと「あ、これ使いやすい」という商品もあるようですよ。
なお:もしかするともっと小さい世代では困っている子がいるかもしれないですし、詳しい方にお話を聞いてみたいです。
他故:でしたら、左利きの方に嬉しい商品を取り扱うネットショップがありますから、お話を聞いてみてはいかがですか?
「左ききの道具店」にお話を伺いました
このネットショップでは左利きの方に嬉しくなる道具を厳選して販売しています。
オリジナルブランド「HIDARI」を展開しているだけでなく、左利きの方が使いやすくなっていたり、利き手に関係なく使いやすいものを揃えるようにしています。
学校と左利き
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左利きの場合、学校生活ではどんなことがあるのでしょうか?
左利きで困ったこと
・テストの解答欄が右側にあるので、解答記入時に問題や途中計算などの記述が手で隠れてしまってみづらい
・教室は黒板に向かって左側に窓があるので、文字を書くときに手元に影ができて見づらくなってしまう
・100マス計算でタイムを競う時、縦列の端にある数字が手で隠れてしまって不利だった
・給食のスープ用のレードルについている注ぎ口が右利き用に作られていて、使いづらい
・書道は、左手だと筆の運びが困難なため苦手な人が多い(日本語の文字の形や書き順は右手で書きやすいように作られているため)
- 私は右利きなので正直びっくりしたものもありました。でも納得できましたし、想像以上に大変では?と感じました。
- 一方でこのような安心できるお話も伺えました。
工作はさみ・彫刻刀・裁縫セットの裁ちばさみなどの道具は、今は学校の斡旋販売でも左手用を選べることがほとんどなので、まず心配はいらないと思います。
子どもたちが普段から使える商品
ここからは左ききの道具店・店長の加藤さんが選ぶ、左利きにも嬉しい学校などで使う文房具です。
HIDARI 15cm定規・30cm定規(左右両用)
左ききの道具店オリジナルブランド「HIDARI」の左右兼用定規。一般的な定規を使って左利きの方が線を引く場合、目盛りの数字の大きい方から引き算しながら引いていくことになります。この定規では左利き用と右利き用の両方の目盛りを印刷しています。
15cm定規を発売したところ「もっと長いのも欲しい」という声を受け、30cm定規が誕生しました。
【たこなおのプラスアルファ情報】
市販の定規では左利き用に目盛りがついていても補助的で文字が小さくて寂しい気持ちになることも。そこでこの商品では左利き用・右利き用どちらのメモリの数字も大きさ・フォントを揃えています。
また、15cm定規は4色から選べるのも嬉しいポイントです。多くの左利き用の道具は色の選択肢がなかったり、少なかったりするのだそうです。
BRUNNEN 鉛筆削り「Office」
右手と左手それぞれで削ってみましたが、鉛筆が回しやすい向きは右手だと時計回り、左手だと反時計回り。
その解決方法として「左手に鉛筆削りを持ち、鉛筆削りの方を回す」や「電動の鉛筆削りに任せてしまう」「左右どちらでも削れる方式のものを使う」と解決方法を見つけて乗り切ってい方もいらっしゃいますが、中には携帯用の鉛筆削りを持ってくるよう指示される学校もあるそうなので、左利き用を探している方にこの情報が届いて欲しいです。
【たこなおのプラスアルファ情報】
「左利きならこれを使うべき」というわけではなく、鉛筆を削ることで困っている左利きの方の解決策の一つとして道具を提示することで「こういう問題点があるよ」「使いづらさがあるんだよ」と気付いてもらいたいという気持ちがあり、取り扱いをしているそうです。
PAUL 子ども用ハサミ
昔に比べて左利き用のハサミは手に入りやすくなりましたが、色を選べないのが少し残念なところ。こちらはドイツから輸入している9色から選べるハサミです。
選べる9色。みているだけでワクワクします!先端が丸くなっていて安全に工作を楽しめるように工夫されていますため、お子さんの初めてのハサミにも、大人のペンケースに入れる持ち運び用ハサミとしてもぴったりです。
【たこなおのプラスアルファ情報】
左利き用と右利き用のハサミの違いは「刃の合わせ」。利き手と逆のハサミを使った場合のデメリットは、てこの原理がうまく作用せず切りづらくなること(特に布やビニールなど)。また、上にくる刃が視線を遮るため、切り取り線の上を切るというのが難しくなってしまいます。
PLUS カッターナイフ「ORANTE」
刃を出すレバーが上部中央にあるので、左右どちらの利き手の方でもシェアできるカッターです。
チャイルドロックがあることや刃に触れることなく交換ができてお子さんにも安心。左ききの道具店のイベントやオンラインストアでも人気のユニバーサルなデザイン商品です。また、色のバリエーションもかわいらしくなっています。
【たこなおのプラスアルファ情報】
ちなみにカッターナイフを出しているオルファやNTカッターの公式の発表によると、刃を裏返していれることで左利きの方が使いやすくなるようにできているそうです(大型カッターなど対応していない場合もあり)
葉っぱのトランプ
一般的なトランプでは、真ん中の他に左上と右下に数字とマークが入っています。ババ抜きをする時など、左利きが開きやすいようにカードを扇型にすると、右上が見える部分になるので数字もマークも見ることができなくなるのだそうです。
このことはあまり知られていないのではないでしょうか?
葉っぱのトランプは先端が葉っぱ型にとんがっていて、上部中央に数字とマークが入っています。これならば左右どちらが利き手でも便利に使うことができます。
【たこなおのプラスアルファ情報】
こちらは文具でも、左利き用を意識して作られた製品でもありませんが、かわいらしい見た目でかつ機能的、左右どちらの手で使っても楽しめるトランプだと確信して取り扱いを始めた商品なのだそうです。
大人の左利きさん向けの商品も教えていただきました
左ききの手帳(2024年版は9月発売予定です)
2020年版からスタートした手帳です。
日にちや曜日の情報が全て右寄せになっています。これは、左手で記入するときに手で情報を隠してしまわないようにするための工夫です。また、表紙を上にしたときに左側が開くようになっているのですが、これは左手の親指で時系列通りに開けるようにする工夫です。
【たこなおのプラスアルファ情報】
初めは不思議な感覚を受ける方が多いですが、使っているうちに「頭がスッキリする感じがして快適」「いつも挫折していたが、この手帳は続けられている」など、リピーターが多くいらっしゃるそうです。
HIDARI ユニバーサルメジャー
オリジナルブランド「HIDARI」の巻き取りメジャーです。一般的なメジャーでは、左手で本体を持って測ると数字が逆さまになってしまいます。
こちらは、表が左利き用・裏が右利き用の目盛りをプリントしているので、どちらの手で持っても使いやすいメジャーです。
なので、白いおもて面は左利き用、黄色い裏面は右利き用と左右どちらが利き手の方でも使えるメジャーです。
【たこなおのプラスアルファ情報】
逆さまになっていても数字は読めますが、やはりどこか見づらさを感じてしまいますよね。その点をシンプルな解決法でクリアしたところに魅力を感じる商品です。
日本では10人に1人が左利き:「左利きはその方の特徴の一つ」
今回お話をお伺いした加藤さんによると、調査方法により若干のブレはありますが、一般的には日本人の10人に1人は左利きなのだそうです。かつては右手を使うように矯正されることが多かったのですが、現在は身長の高い・低いや運動神経の良さや勉強の得意・苦手と同じように一種の「その人の特徴」と捉えることが増えてきました。身近に左利きがいない保護者の方は戸惑われることもあるかもしれませんが、必要以上に不安がらずにあたたかくサポートしていただけたらと思います。
終わりに
「左利き用」という道具は確実に増えています。では、左利きのお子さんにはすべて左利き用を揃えた方が良いのでしょうか? 加藤さんはこう教えてくださいました。「お子さんをよく見てどんなことに困っているのかをよく知ること。そしてそれが左利き用の商品で解決できるのであれば使ってみる」左利きだからといって特別扱いする必要はないのです。両親が右利きでも左利きのお子さんは生まれます。お子さんを見守り、知り、考えてみることが一番大切です。それは左利きに限ったことではありません。困っているならば解決方法を考え、使える道具があるなら使う。
このお話は、今回のインタビューで得た一番の学びでした。
お話を伺ったのは
左ききの道具店 店長の加藤さんでした。
たこなお文具情報室 Instagram
静岡県浜松市生まれ。
【ブンボーグA(エース)】としてもSNSで活動中。
きだてたく氏、文具王・高畑正幸氏とともに、文房具のことを話し始めると止まらないトークライブユニット「ブング・ジャム」を結成。定期的にトークライブを行うほか、雑誌連載、ムック本での文具情報コーナーへの参加など活動。文具三賢人の一人である。筆記具やノート、その他持ち運ぶことのできる文房具全般に興味を持っている。文房具について語りだすと止まらなくなる。
北海道札幌市生まれ。
ラジオパーソナリティを軸として、動画出演&編集、Webマガジンへの執筆など広範囲で「文房具」情報をご紹介する【文房具プレゼンター】として活動。社会人になったときに両親から贈られた万年筆に、黒以外の様々な色のインクをいれて使えることを知り、一気にインクコレクター(インク沼)になる。ご当地インクが特に大好物。一人ムスメ(2015年生まれ)の母親としての視点から文房具を観察し、レビュー記事を執筆している。
過去の連載はこちら
第一回 筆入
第二回 お名前付け
第三回 鉛筆
第四回 消しゴム
文・構成/たこなお文具情報室(他故壁氏・ふじいなおみ)