東北の知恵「ひっつみ」って? 作って楽しい 食べておいしい伝統料理で心も体もあたたまる

雪深い東北地方では、寒い冬を乗り切るために温かい汁物が欠かせません。ひっつみはそんな生活の中で生まれ、親しまれてきた料理です。小麦粉でこねた生地を、ちぎりながら煮込む調理過程を詳しくみながら、ご家庭の食卓で楽しむ方法をご紹介します。

具材と生地を柔らかく煮込んで味わう「ひっつみ」は、お子さんと一緒に家族で作ると楽しい料理です。手でちぎって煮込んだ生地には、だしの風味が染み込み、素朴な味わいがあります。

豊富な種類の具材を一緒に煮込むことで、栄養バランスもよく仕上がります。年間を通して親しまれていますが、特に寒い季節には、体を温める料理として重宝されています。それでは、このひっつみについて詳しくみていきましょう。

「ひっつみ」ってどんな料理?

東北地方で親しまれている郷土料理のひとつ、「ひっつみ」とは、どんな料理なのでしょうか?

「ひっつみ」の定義と特徴

ひっつみは、小麦粉を水と混ぜてこねた素朴な生地を手でちぎり、熱々の汁物に入れて煮込む東北地方の郷土料理です。煮込まれた生地は独特のモチモチとした食感になり、汁の旨味を吸収して優しい味わいに仕上がります。

具材は鶏肉や季節の野菜(にんじん、ごぼう、大根など)、各種きのこ類がよく使われます。だしの取り方や味付けは、地域や家庭ごとにさまざまなバリエーションがありますよ。

郷土料理としての歴史

ひっつみの歴史は江戸時代まで遡り、東北地方の庶民の食卓に親しまれてきました。特に岩手県をはじめとする東北地方の農村部では、冷涼な気候条件による米の不作に備えて、大麦や小麦、そばなどの穀物も栽培していました。

このような粉類を水で練って調理する「しとねもの」文化は、限られた食材から栄養価の高い食事を生み出す知恵として発展しました。ひっつみは、そうした背景の中で生まれた代表的な料理です。

地域による呼び名の違い

「ひっつみ」という名前は、方言で「手でちぎる」ことを意味する「ひっつまむ」「ひっつむ」に由来します。

岩手県と青森県では「ひっつみ」と呼ばれますが、地域によって「とってなげ」「はっと」「きりばっと」とも呼ばれます。

作り方や味付けには若干の違いがあるものの、いずれも小麦粉の生地をちぎって煮込む料理で、戦時中や食糧不足の時代にも庶民の食を支えてきました。

ひっつみの作り方

ひっつみは、家庭で手軽に作れる料理として受け継がれてきました。農作業の手伝いに来てくれた人々や、多くの人が集まる地域行事でもふるまわれたそうです。

生地をこねてちぎる作業はお子さんのお手伝いにぴったりですので、ぜひ家族で楽しみながら作ってみてください。

基本の生地の作り方

まずは生地の作り方からみていきます。

・材料

(4人分)

小麦粉  200g
水  約100ml
塩  ひとつまみ

・生地の作り方

【1】ボウルに小麦粉と塩を入れ、中央をくぼませて水を少しずつ加えます。最初は箸で、真ん中から輪をかくように混ぜます。

まとまってきたら手でこねていきます。

【2】体重をかけながら押すようにして、耳たぶより少し柔らかい程度の固さになるまでこねます。湿らせた布巾やラップで覆い、30分から1時間ほど休ませます。

ひっつみへの仕上げ

できあがった生地を使って、熱々のひっつみに仕上げていきます。具材は鶏肉、にんじん、ごぼう、しいたけ、ねぎが定番ですが、季節の食材を取り入れるのもおすすめです。

・材料

(4人分)

だし汁(昆布とかつお節) 800㏄
しょうゆ 大さじ3
酒 大さじ2
塩 少々

鶏もも肉 100g
酒 小さじ1.5

ごぼう 1/2本
にんじん 1/3本
大根 5㎝
しいたけ 2本

・作り方

【1】鶏肉を一口大に切り、酒をまぶしておきます。

【2】ごぼうをささがきにし、水にさらしてアクを抜きます。にんじんを乱切り、大根をいちょう切り、しいたけを薄切りにしておきます。

【3】鍋にだし汁を入れ、具材を加えて加熱します。アクを丁寧に取り除きながら煮込んでください。

【4】野菜が柔らかくなったら調味料を加え、味を調えます。

【5】休ませていた生地を、手でちぎりながら汁に加えます。3~4cm角を目安に、平たく食べやすい大きさにちぎり入れてください。

手に水をつけると、くっつきにくいです。
手に水をつけると、くっつきにくいです。

生地は均一な厚さにのばすよりも、不揃いにちぎることで食感の違いを楽しめるので、お子さんが作業する場合は、のびのびと取り組ませてあげましょう。

生地が浮き上がってきたら、食べごろのサインです。

保存方法と翌日の食べ方

翌日に食べる場合は、生地と汁とを分けて保存し、食べる直前に加えることで食感を損なわずに楽しめます。また、汁に漬けたまま一晩置くと味がよく染み込み、より深い味わいを楽しむこともできますよ。

ひっつみアレンジ

鶏肉の旨味がたっぷりのひっつみ汁ですが、最近ではご家庭の好みに応じて、カレー味や洋風、中華風などさまざまな味にアレンジして楽しまれています。

冬は体を温める汁物として親しまれ、夏にはナスやトマトを使ってさっぱりと、秋にはきのこや山菜を加えて風味豊かに楽しめます。

通販情報

ひっつみ用の粉や、茹でた生地とだし汁のセットも販売されています。

ひっつみ3種セット しょうゆ 味噌 鶏塩 各1人前

数分の調理時間で温かい郷土の味が食卓に並ぶ、スープとひっつみのセットです。具材はお好みの野菜や肉類を自由に加えることができ、ご家族の好みに合わせてアレンジ可能です。

【ふるさと納税】岩手郷土料理 ひっつみ鍋 250g×3個

電子レンジで温めるだけで、ふっくらとした生地と深い味わいのひっつみ鍋ができあがります。冷凍商品なので長期保存が可能で、忙しい日の夕食に便利なストック食材としても重宝します。

素朴な温かみを味わうひっつみ

ひっつみは、シンプルな材料ながら奥深い味わいと豊かな伝統をもつ東北の郷土料理です。小麦粉の生地を手でちぎって加えるという調理法には、厳しい環境を乗り越えてきた人々の知恵と工夫が詰まっています。地域や家庭ごとに異なる味付けや具材の組み合わせも、この料理の魅力です。

心も体も温めてくれるひっつみを、ぜひご家庭で作って、その素朴で深い味わいを楽しんでください。

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構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)

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