コメ不足の要因とは
コメ不足の要因は複数あります。代表的な要因として「コメの市場縮小」「インバウンド需要の増加」「コメの割安感」の3点について解説します。
国内で食べられるコメの減少
1人が1年に食べるコメの消費量は近年減少傾向です。加えて人口減少の影響もあり、全体の消費量も減っています。
国内での売れ行きの減少に伴って、主食用のコメの収穫量も減少傾向にあります。市場が小さくなってきていることから、急な需要の増加でコメが不足しやすい状況となっていました。
インバウンド需要の高まり
コロナ禍後、日本を訪れる外国人客が増加しています。2024年の訪日外国人客数は、コロナ禍前の2019年と比べて15.6%増加しています。
高まるインバウンド需要も、コメ不足に影響しているといわれています。訪日外国人客の増加により、コメの消費量が増えるためです。
訪日外国人客を対象とした調査によると、日本滞在中の食事では、寿司・天ぷら・ステーキ・焼肉などを食べるケースが多く見られます。
いずれも、ごはんが必要な料理であり、ごはんと共に提供されることが多いため、コメの需要の高まりにつながっていると考えられます。
出典:訪日外客数(2024 年12月および年間推計値)|日本政府観光局
:訪日外国人からみた日本の“食”に関する調査|農林中央金庫
食料品値上げによる割安感の高まり
原材料・燃料費・資材費・運送料などの高騰や円安の影響により、食料品の値上げが相次ぎました。特に小麦の値上がりにより、主食となるパンや麺類の価格が上がったことが、コメ不足につながっています。
パン・麺類の値上げで、これまでよりコメの割安感が高まりました。国内では賃上げの動きが広がっているものの、全ての人の給与が物価上昇に追いついているわけではありません。
家計のやりくりのために、割安感が高まったコメを選ぶ人が増え、需要が拡大していると考えられます。
新米が出回っても高いのはなぜ?
8月ごろから始まったコメ不足は、当初新米の出回る10月ごろには収束するといわれていました。それに伴い、コメの価格も下がる予想がされていましたが、実際のコメの価格は高い水準で推移しています。
2024年のコメの収穫量は2023年より多いため、通常であれば価格は下がるはずです。それにもかかわらず高い水準のまま推移しているのは、買い付け価格が上がっているためです。
買い付け競争の過熱により、JAをはじめとする主要な集荷業者では、買い集められたコメの量が2023年より少なかったといわれています。このような買い付け価格上昇の影響から、小売のコメ価格も高いままとなっています。
コメ不足は今後どうなる?
コメ不足は今後どうなっていくのでしょうか? 今後の動向を知るために、農林水産大臣の見解や、備蓄米の放出について見ていきましょう。
「買い急ぐ状況ではない」との見解
2025年3月7日に行われた記者会見で、農林水産省の江藤大臣は「現時点では買い急ぐ状況ではない」との見解を示しています。
2024年の生産量と在庫を合わせると十分な量があるため、コメが不足する心配はないといえます。
また2025年はコメの作付面積が増える見込みとなっており、生育が順調であればコメ不足は解消に向かっていくことが期待できます。
備蓄米の放出が始まる
農林水産省の発表によると、2025年3月3日週のコメの小売価格は5kgで4,077円です。前年同期比で99.3%の値上がりしているコメの価格帯を正常化することを目的に、備蓄米の放出が始まりました。
1回目に入札された備蓄米は3月下旬ごろから流通し始める見込みです。また、2回目の入札も発表されています。合計21万トンの備蓄米が流通すれば、供給量の増加により上昇が続くコメの価格に歯止めがかかることが期待できるでしょう。
また2回目までの備蓄米放出で、コメの小売価格の安定に対する効果が出ない場合には、さらに追加で備蓄米の放出が行われる可能性があります。
コメ不足は今後の情報も要チェック
コメの市場は食習慣や人口減少により縮小していました。そこへ訪日外国人客の増加や、コメの割安感などによる需要増加が起きたことから、コメ不足が引き起こされました。
2024年は前年よりコメの収穫量が多く、当初は新米の流通が始まれば、コメ不足もそれに伴う価格の上昇も落ち着いていくと考えられていました。ただし実際に新米が流通しても、買い付け価格の高まりから小売価格は上昇し続けています。
小売価格の正常化に向けて備蓄米の放出が始まっており、どの程度の効果が表れるか注目されている状況です。
あわせて2025年はコメの作付面積が増える見込みとなっています。コメ不足の状況を把握するために、稲作やコメの流通に関する情報をチェックしていきましょう。
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構成・文/HugKum編集部