子どもの「記憶力」を上げる方法は? 寝る前・感情に訴える・アウトプット・・・ 記憶力向上のポイントとは

子どもと話しているとき、「よく覚えていてえらいね」と褒めたくなることってありませんか? 実際、記憶力を養うことはメリットがいっぱい。幼児期から記憶力が良いと、学校に進学したときの勉強や受験、仕事など、将来が有望になります。

記憶力は、幼児期から親がサポートしてあげることで、高めることができます。今回は、家庭教育の中で、記憶力を高めるポイントを、家庭教育コンサルタントの多田淑恵さん監修の下、ご紹介します。

「記憶力」と「暗記力」の違い

まずは、記憶力と暗記力の違いを確認しておきましょう。

記憶力とは、覚えたことを長期的に忘れないようにすること
暗記力
とは、新しいことを一時的に覚えること

このような違いがあります。

どちらも「覚えておく力」「忘れない力」ではありますが、記憶力は長期間に渡って覚えておく意味合いが強い言葉です。一方、暗記力は、ものごとを暗記してその場でそらで言えたり、一定期間だけ、例えばテストの前だけに覚えておくといった意味合いが強い言葉です。

どちらも重要な力ですが、記憶力は、暗記力を下支えする力でもあるため、特に重要です。

例えば、子どもがこれから小学校に上がり、授業でならったことを暗記して、中学校や高校受験のときまで記憶しておけば、受験に有利になるでしょう。暗記力も大事ですが、その場限りの暗記であれば、受験勉強のときにまた覚え直さなければならないなど、少々物足りないところがあります。

記憶力と暗記力は、両方を意識して高めていくと良いでしょう。

幼児期から記憶力を上げるメリット

幼児期から記憶力を上げておくことができるのであれば、子どもの将来に大きなメリットが期待できます。主に次のメリットが得られます。

学校でのテストや受験に強くなる

単純に、記憶力が上がれば、一度学んだことを長期的に覚えていることができるので、テストや受験に役立つことがわかります。学校のテストでは、暗記力が試される国語の漢字や社会の歴史などには、すぐに役立つでしょう。

また、他の暗記以外の分野でも、授業中に先生が話していたことや、本で読んだこと、親から言われて学んだことなども記憶しやすくなるので、知識量は多くなると考えられます。

学習が得意になり自己効力感にいい影響がある

記憶力が高い子どもは、テストでいい点数をとったり、親や先生からほめられたりする機会が増えるので、「自分はできる」という自己効力感も高まると考えられます。また学習意欲も高くなると考えられるため、どんどん自分から積極的に学びを深めていけるでしょう。

将来の仕事にも前向きになれる

勉強に前向きに取り組むことができれば、希望の進学ルートに進みやすくなるでしょう。例えば、「あの難関校に合格したい!」という目標を持ったときも、記憶力が高いことは有利な条件のひとつになるはずです。

そのような自信が積み重なれば、学校を卒業した後の進路にも有利となり、何事にも積極的に挑戦していけることでしょう。

信頼を得やすくなる

記憶力が高いことは、勉強や就職に役立つだけではありません。人間関係においても、記憶力は十分に生かすことができます。例えば、人との約束や、コミュニティでのルールや手順をしっかりと守ることは、子ども時代でも大人になっても信頼を得やすくなることは、間違いありません。

人が話していたことをいつまでも覚えていられる力は、多くの人の信頼を獲得でき、人間関係はもちろん、将来仕事をしたときにも有効です。

幼児期から記憶力を上げることは、これらのたくさんの有意義なメリットが得られることから、ぜひ親としてはサポートに力を注ぎたいものです。

幼児期から記憶力を上げる方法

では、どうすれば幼児期から記憶力を上げることができるのでしょうか。さまざまな方法が考えられますが、親が深く関わる幼児期には、親からの積極的な働きかけや、子どもと一緒に遊びながら進めることがポイントです。主なアプローチ方法をご紹介します。

定期的に繰り返す

記憶力を上げるためには、まずエビングハウスの忘却曲線を知っておくことが有効です。これはドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウス氏が、人が時間の経過に伴い、記憶がどう変化するのかのメカニズムを研究して得られた考え方です。

エビングハウスの忘却曲線では、人が覚えたことをどんどん忘れていくことが示されています。覚えた瞬間から忘れはじめが始まっており、20分後には約4割忘れ、1日経つと約7割前後、忘れてしまいます

しかし反復して復習することで、早く記憶に定着させられます。つまり記憶力を上げるには、復習を効果的なタイミングで繰り返し行えるかにかかってくるのです。

そして知っておきたいのは、幼児期は大人と違って多くのことを覚えていることができないということです。そのため、大人が意識的に働きかけることがポイントになります。

例えば、「このお花は、チューリップっていうんだよ」と教えたとします。すると子どもは、その場では「チューリップっていうんだね」と覚える姿勢を示すかもしれません。けれど、そのまま何もしなければ、もしくは子どもが自ら反復しなければ、きっと覚えることはできないでしょう。

そこで、24時間以内に親が「あのお花、何ていう名前か覚えてる?」などと問いかけ、繰り返し思い出させることが有効です。覚えていなくても、「チューリップだよ」と再び教えてあげれば、反復したことになります。覚えた後、できるだけ早いタイミングに、繰り返し反復することで、記憶に定着していきます。

声に出してアウトプットさせる

幼児期は、大人と比べてものごとを記憶しにくいことをお伝えしました。そこで有効な工夫のひとつが「声に出させる」ことです。子どもが自分で「チューリップ」と声に出すことで、「自分が言葉を発している+自分の耳で聞いている」とダブルの刷り込み効果が期待できます。

また、さまざまな研究では、覚えたことを自ら何度もアウトプットすることで、記憶に定着しやすいことがわかっています。例えば、子どもが兄弟姉妹や友達に対して、「これ、チューリップっていうんだよ」と教えてあげる行為は、記憶定着に有効といえるのです。

就寝前に覚える時間をとる

復習をするのに、特に有効な時間帯があります。それは寝る前です。

記憶は眠っている間に定着するといわれているため、あえて寝る前に覚えたいことを新たに覚えたり、復習したりする時間に充てましょう。そして朝起きた後に、覚えているかどうかを確認して復習するのがおすすめです。

オノマトペをうまく入れる

幼児期は特に、「ブーブー」や「ワンワン」、「キラキラ」、「ニコニコ」などのオノマトペ、つまり擬音語や擬態語を用いると、伝わりやすくなります。子どもにとって、発音することそのものが楽しいですし、気持ちや動作が端的に表現されることが多いので、ものごとをストレートに理解しやすいでしょう。

例えば、「車」を覚えるときに「くるま」だけでなく「ブーブー」と車の走る音もセットで表現してあげると、幼児は感覚的に記憶に定着しやすくなります。

子どもに何かを教えるときには、オノマトペを上手く取り入れましょう。

興味のある分野の博士になってもらう

親としては、これからの学校の勉強や受験に役立つ知識を優先的に教えたくなりますが、無理にそればかりを教えるのはよくありません。

子どもが興味のある分野も積極的に記憶させるようにしましょう。

例えば、特定のアニメ番組が好きなのであれば、そのアニメに出てくる登場人物の名前や生年月日、洋服の色などを覚えさせて、博士になってもらうのもおすすめです。積極性が出ますし、何より楽しみながら行えることで、記憶の効率も上がります。

ゲーム・知育玩具を活用する

トランプの神経衰弱といったゲームや、記憶力を養うために考慮された知育玩具を取り入れるのもおすすめです。

これらのゲームや遊びを通じて、楽しみながら親子で記憶力アップのトレーニングができればより効果も高まると考えられます。

感情を伴った記憶を増やす

喜び、驚き、関心などの感情と結びついた体験は、記憶に残りやすいです。例えば「図鑑に載っていたカブトムシを実際に触った!」というような体験は、長期記憶になりやすいため、できるかぎり感情を伴った体験をさせてあげましょう。

五感を使った遊びを増やす

見る、触る、嗅ぐ、聴く、味わうといった五感を使う経験は、脳を広く刺激します。例えば、においや感触を感じながら料理のお手伝いをすることで、手順を記憶しやすくなります。

また音や景色を伴う外遊びは、脳を刺激するのにおすすめで、記憶力アップにも効果的です。

親が知っておくべき日頃からの注意点

幼児期の記憶力を上げる方法を実践しながら、親は次のことに気をつけると、より効果が高まるでしょう。

親子で一緒に楽しみながら記憶力を高める

はじめのうちは、子どもがなかなか覚えられなかったり、特定の分野に苦手意識を示したりすることもあるでしょう。そんなときには無理に覚えさせるのではなく、あくまで親子一緒に楽しみながら行う方針にすることが大切です。得意分野や興味のある分野に切り替えるなどしてトレーニングしましょう。

「できた!」という体験をたくさん積ませる

成功体験は記憶にも定着しやすく、自己肯定感にもつながります。むずかしすぎない課題を与えて、「できたね! すごいね!」とほめてあげる。このような体験をたくさん積ませてあげてください。

「間違えてもOK」という雰囲気を作る

子どもが思い出せなかったことや間違えたことを責めず、「思い出そうとした努力」をほめることで、記憶への挑戦が楽しくなります。「ちょっと違ったけど、よく考えたね! もう一回やってみよう!」といったように、チャレンジする姿勢をほめましょう。

感情体験を重視する

ものごとを覚えやすくするためには、感情を伴う体験をたくさんさせてあげることも有効です。いろんな場所に出かけて、いろんなものに触れたりしながら、親が大げさにリアクションをとるなどして、子どもにさまざまな感情体験をしてもらいましょう。

例えば、大きな木の前に行ったら、「大きいね~!!」と言ってあげれば、子どもはその壮大な自然を肌と感情で実感し、本物の木というものを記憶するでしょう。何かおいしいものを食べたら「おいしいね~!」と言ってあげれば、その食べ物をおいしいものを食べる楽しさと共に記憶するでしょう。

動画視聴とうまく付き合う

子どもがスマートフォンやタブレットで動画視聴をする機会が増えましたが、長時間の受動的な視覚情報は、記憶力を逆に低下させることもあります。1日の視聴時間や内容の選定は慎重に行いましょう。

規則正しい生活をして睡眠をたっぷりとる

人は眠っている間に記憶が定着することから、たっぷりと睡眠をとることは欠かせません。そのためには、規則正しい生活リズムを身に付けさせることが必要です。

記憶力を正常に発揮するためには、安定的な心身のバランスも必要で、そのベースとなる規則正しい生活はとても大切です。

栄養バランスを考える&脳にいい食材を取り入れる

食事も重要です。栄養バランスのとれた食事を心がけるのはもちろん、脳にいい食材を取り入れるのもおすすめです。

【記憶力に関わる食材の代表的な例】

:卵黄レシチンが脳の情報伝達に関わる

大豆製品:脳の情報伝達に関わる大豆レシチンや、認知機能や記憶力に関係するグルタミン酸が多く含まれる。

サバ・サーモン・マグロ・イワシなどの魚:オメガ3脂肪酸は脳内脂肪の多くを占めるため、脳内の血行が促進され、記憶定着に良い影響をもたらす。また、DHAは脳細胞の活性化に役立つ。

[まとめ]親が意識的に関わって子どもの記憶力アップをサポートしよう

子どもの記憶力を幼児期から上げるメリットや方法、注意点をご紹介しました。

幼児期は、自ら記憶力をアップさせることがむずかしいため、親が意識して関わることがポイントです。親子そろって楽しく遊びながら行いましょう。

記事監修

多田 淑恵 さん 家庭教育コンサルタント

家庭教育コンサルタント。合同会社テラック代表。東京大学卒、同大学大学院修士課程修了。日本IBM勤務を経て合同会社テラックを設立。自ら考え行動できる自律した人を育成する教育事業を展開。監修・著書6冊。

構成・文/石原亜香利

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