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子どもが夢中になる! 名画模写とは
――「名画模写ができるオンライン動画講座」、楽しそうです! どのような内容の講座ですか?
著名な画家の7つの作品を、子どもが動画を観ながら1作ずつ真似て描いていくことができる絵画講座です。さまざまな名画と触れ合うことで、子どもの好奇心を刺激し、想像力を養います。
1レッスンごとに画家のキャラクターや表現法などを分かりやすく説明しますので、芸術家と作品についての基礎知識も身につきます。
――レッスン回数は?
1レッスンで1作品の名画模写ができるように指導し、1クールのレッスンで名画模写が7作品できます。1クールは、最初の講座紹介と進め方の説明などで1レッスン、7作品で7レッスン、合計8レッスンです。
動画講座ですから、自宅にいながら好きな時間に受講でき、子どもの送迎が要りません。遠方の方も受講できます。
――名画模写は楽しいだけではなく、子どものアート教育によさそうですね。
はい。子どもが名画の模写を通じ、アート思考を身につけていくことを目指しています。レッスンによって、直感やひらめき、感性が育つようにお手伝いします。
名画模写は子どもの個性・表現力を引き出す

――アート思考とは?
自分の個性を表現する力を育むこと、自分軸で自由に発想していく思考法です。アート思考が備わると、以下の特徴をもつ子どもに育つといいます。
- ・新しいアイデアを思いつくことが得意で、問題解決力が高い
- ・自分の感情や考えをアートで表現すること、伝えることが上手
- ・観察力が高く、多様な視点から物事を見ることができる
- ・情報を多角的にとらえ、疑問を持ち、理解しようと努める
- ・状況の変化に対応しやすく、柔軟性がある
――いいことづくめですね! アート思考に名画模写は、どんな好影響を与えますか?
作品を真似て描いていくことは、自分の個性を見つける手段になります。7人の画家の作品を通じ、子どもが自分の個性を見つけ出す手助けをし、アレンジについてもヒントを出しますので、楽しみながら、直観やひらめきの感覚が養われます。
名画の表現スタイルや技法も身につく

――レッスンで模写する名画は?
難易度順に、以下のラインナップになります。著名な芸術家の作品に触れることで、さまざまなスタイルや技法を知ることができます。
- パウル・クレー『猫と鳥』
- パブロ・ピカソ:『ふくろう』
- ワシリー・カンディンスキー:『丸と四角』
- ピート・モンドリアン:『コンポジション』
- ジョアン・ミロ:『太陽の前の人と犬』
- フィンセント・ファン・ゴッホ:『星月夜』
- アンリ・マティス:『千夜一夜物語』
――人気の名画ばかりですね! レベルが高そうに見えますが、受講生の対象年齢は?
3歳から小学6年生までを対象としていますが、あくまでも基準ですので、お子さんが対象年齢外でも興味があればご相談いただきたいと思います。

小さなお子さんは親子でレッスンを
――小さなお子さんは、どのように受講したらよいでしょうか?
未就学児、小さなお子さんの場合は、親子で一緒にレッスンしましょう。まずは動画を終わりまで見て、流れを理解したら、次は動画と一緒に描きましょう。ゆっくりと充分な「間(ま)」を取って進めますので、スムーズに受講できます。
――小学生のお子さんは?
小学生以上でコツをつかんだお子さんは、最初から動画と一緒に描き始めて大丈夫です。じっくり描きたいときは動画を止めたり、スピードを上げたいときは動画を早めたり、好きなペースで。
――レッスンはどのようにスタートしますか?
まず、模写作品の画家の性格や技法について、ゆっくりと、分かりやすい言葉で説明します。動画を「観るだけ」にならないように、講師の私が一緒に描いているように進行します。
動画を観て子どもが自由に描いて終了、ではなく、最後に「画家の技法で描けたかな?」という点を確認します。たとえば、「にじんだ感じは、表現できたかな?」など。
すると、「あ! それやらなかった~」とか「もっとこんな風に描けばこうなったかな?」という風に、子どもが自分の表現を振り返り、「もう1回動画レッスンをして、次はこう描こうかな。できるかな」と、何度も取り組んでくれます。
繰り返しレッスンでき、そのたびに異なる表現を楽しめることが動画レッスンのよい点です。質問はラインで受け付けています。

名画のアレンジは個性を引き出していく
――アレンジの描き方も指導されているのですか?
はい。好きな絵は、何度も繰り返し描くと、新しい発見があります。すると、アレンジしたくなる。模写作品に「星」が描かれていたら、「月」を足したり、猫の模写作品に「リボン」や「アクセサリー」を描き加えたり。レッスン2回目以降は、「ここに、こんなのがあったら、どんな絵に変わるかな?」と、自己流にアレンジしてほしいのです。
「楽しい!」という気持ちが大事なので、指導というよりも、「自由に描いてみよう」という流れで、子どもの発想を引き出すように心がけています。
――「自由に描いてみよう」がアート思考に繋がっていくのでしょうか?
その通りです。アート思考とは「どんな風に自分の個性を出していくか」ということ。誰もがみな同じ意見ではなく、それぞれの個性があると思うのです。でも子どもは、うまく言語化したり、表現したりするのが難しい。
そこを踏まえ、名画模写で7人の画家それぞれの性格、人生、描き方に触れていくと、描いた画家の個性が自然と分かってくる。個性の出し方、表現法というのを分かりやすく伝えられるのが名画模写と考えています。
たとえば、ルノワールの人物画は誰が見ても素敵ですが、それが「最高に上手な絵」というわけではなく、ピカソのキュビスムといった一つの正面向きの顔に横向きの顔が見える、子どものいたずら描きのような絵、それも世界中の人に愛される名画です。
表現には幅の広さがあり、「いろいろな人がいて、いろいろな描き方がある」と知り、個性をのばしてほしいと願って講座を続けています。

シンプルな入手しやすい画材でOK!
――奥深い講座ですね。ところで、道具は何を準備したらよいですか? 100円ショップで手に入るものもありますか?
作品を描く前に道具の紹介をします。特別なものは画材で、主にクレヨンと絵の具、筆、画用紙など。筆と画用紙は100円ショップのものでもOK。
色ものは100円ショップ商品では劣化しやすいので、絵の具、クレヨンは小学校で推奨しているメーカーのものがよいです。
――シンプルな道具で受講できるのですね。名画模写のレッスンでアート思考の心豊かな子どもが増えてほしいですね。

▼わかこ先生に訊く「アート教室のはじめ方」はこちら
お話を伺ったのは

横浜美術大学グラフィックデザイン卒業、中学校美術教諭免許取得。バンタンデザイン研究所イラストレーション卒、セツ・モード・セミナー卒。2004年、東京都世田谷区で幼児から高校生までの絵画造形教室【こどものアトリエ@三宿】を開講。アート大国フランスをはじめとした海外の美術教育方法を取り入れた指導を行う。2021年AmazonのKindleで『自宅でできるアート教室のはじめ方』を出版。オンラインアートクラスを開講。2022年からアート講師の養成講座を開講。
取材・文/伊藤菜朋子