日本の「子どもの幸福度」は世界何位? 幸福度の高い国の特徴は? 調査から見えてくる背景を考える

日本の子どもの幸福度はどのくらいなのでしょうか? 世界の子どもと比較して分かってきた、日本の子どもが置かれている環境や心身の健康などを解説します。子どもの幸福度を高めるために家庭で実行できる対策も見ていきましょう。

日本の子どもの幸福度はどのくらい?

日本の子どもの幸福度を知るヒントとして、ユニセフ・イノチェンティ研究所の世界的調査があります。調査対象は、経済協力開発機構(OECD)と欧州連合(EU)に加盟する43カ国です。世界と比べた日本の子どもの幸福状態をチェックしましょう。

調査した36カ国中、日本の総合順位は14位

ユニセフは2025年に「レポートカード19:予測できない世界における子どものウェルビーイング」(ユニセフ・イノチェンティ研究所)を発表しました。この報告書からは、前回の2018年調査と新しい2022年調査の結果を比べた、各国の子どもたちの幸福状態が分かります。

OECDとEUに加盟する43カ国の中で、日本の子どもの幸福度順位は総合14位でした。内訳は次の通りです。

●精神的幸福度 32位
●身体的健康 1位
●学力と社会的スキル 12位

日本はコロナ禍でも生活満足度と学力が向上した数少ない国で、前回の調査に比べると全体的な順位は上がっています。ただし、身体的健康がトップなのに対して、精神的幸福度は32位と下の方に位置するという、大きなアンバランスさが特徴です。その詳しい内容を見ていきます。

世界の子どもの幸福度ランキングとその傾向

まず、世界的な子どもの幸福状態についても押さえておきましょう。世界的傾向は日本の子どもの状況を理解する助けになります。イノチェンティの「レポートカード19」によれば、世界的な子どもの幸福度トップ3は以下の通りです。

【総合】
1位 オランダ
2位 デンマーク
3位 フランス

【精神的幸福度】
1位 オランダ
2位 ポルトガル
3位 デンマーク

【身体的健康】
1位 日本
2位 フランス
3位 デンマーク

調査された国において、以前よりも子どもの死亡率は下がり教育サポートは強化されました。一方で、生活満足度と学力は下がって、肥満などの身体的な健康問題は増えています。この問題は、2020年以降に起こったコロナのパンデミックによる学校閉鎖やロックダウンの影響が強いと考えられています。

出典:ユニセフ「レポートカード19」 |ユニセフ

分野ごとに詳しく見た日本の子どもの幸福度

「レポートカード19」における子どもの総合的な幸福度順位は、精神的幸福度、身体的健康、スキルの総合で決まります。この3種類の評価ごとに、日本の子どものアンケート結果をさらに詳しく見ていきます。日本のプラス面とマイナス面が見えてくるでしょう。

精神的幸福度は32位と低迷

「レポートカード19」における精神的幸福度は、子どもの生活満足度と自殺率を基にしています。日本が32位と低めだったのは何が原因でしょうか。

生活満足度は、生活への満足感が中間以上だった15歳の子どもの割合で表され、その国の平均的な子どもの状態を示します。2022年のアンケートによると、日本の15歳の生活満足度は71%で、世界平均の70%と同じくらいです。

前回の2018年調査に比べて数値が上がったのは、コロナによる日本の休校期間が比較的短く済み、多くの子どもが経済的に安定した家庭環境だったためといわれます。

一方で、15~19歳の自殺率は、前回の7.37%から10.41%に上がり、世界4位という高さでした。コロナ禍の影響もあったとはいえ、今後は精神的に追い詰められている子どもをどうサポートしていくかが日本の課題です。

出典:ユニセフ イノチェンティ研究所レポートカード19 ハイライト~日本の子どものウェルビーイング~

身体的健康は世界的にもトップクラス

身体的健康は、子どもの死亡率と過体重の割合で計算されます。日本の5~14歳の子どもの死亡率は以前から低く、5~19歳の子どもの過体重率も低いことが好成績の理由です。世界1位という結果は、日本の医療・健康保険制度・安全性が高水準で、食生活も健康的なことを意味します。

とはいえ日本の状況を詳しく見ると、過体重率は15.0%から16.3%に上がりました。2024年度の文部科学省による「学校保健統計」でも、肥満・やせ過ぎの子どもの割合が増えています。どちらも子どもの健康に悪影響を与えるので、食習慣への注意が必要です。

出典:令和6年度学校保健統計(学校保健統計調査の結果)PDF1、7|文部科学省

学力と社会的スキルはアップ

「スキル」の指標として使われているのは、学力スキルと社会的スキルです。学力スキルは、その国の15歳の子どもの読解力・数学的リテラシーにおける基礎力レベルで判断します。日本は前回の73%から76%と少し上がりました。問題は、家庭の社会経済状況による学力格差の拡大です。

社会的スキルは、15歳の子どもが「すぐに友だちを作ることができる」と答えた割合で表されます。日本の結果は80%(5人中4人)で、前回より改善されました。それでも、調査対象国の中で日本は29位と、依然として高い順位ではありません。

この背景には、精神的幸福度と感情スキルの低さがうかがえます。スキル全体の順位は、前回の27位から12位に大幅に上がったものの、隠れた課題は大きいといえます。

子どもの幸福度を高めるために家庭でできる工夫

日本の子どもにおける全体的な幸福度の水準と課題が明らかになってきました。子どもの幸福に影響を与える要因は、本人の行動や周りの人間関係からその国の社会資源、教育政策までさまざまです。家庭において子どもの幸福度を高めるためには何ができるか見ていきましょう。

子どもの意見に耳を傾け主体性を尊重する

2025年に発表された「レポートカード19」によれば、子どもの幸福度が1位と2位の国はそれぞれオランダとデンマークです。この2カ国は前回も同じ順位でした。いずれの国も、子どもの主体性を尊重し個性を伸ばす教育に力を入れているのが特徴です。

それに対して日本は、学力だけで子どもを評価しスポーツや芸術といった他の分野の才能をあまり評価しない傾向があります。この教育方針は、多くの子どもの自己肯定感を下げる要因と考えられます。

子どもの幸福度を高めるためには、子どもが主体的に動ける環境や個性を伸ばすチャンスを、家庭や学校外学習などで補う必要があるでしょう。

親子で気軽に話せる時間を作る

「レポートカード19」からは、子どもの精神的幸福度が親との頻繁な会話によって高まることが分かっています。また、子どもの幸福度をひどく低下させる大きな原因に「いじめ」があります。

つまり、子どもの精神的幸福度にとっては普段から親子が気軽に話せる関係性がとても重要です。子どもは親に悩みを相談しやすくなり、親も子どもの微妙な変化に気付きやすくなるので、いじめ発見にもつながるでしょう。

また、1日6時間以上のソーシャルメディア利用は、子どもの幸福度を低下させるため注意が必要です。毎日話せなくても、週末に親子でゆっくり過ごす時間を作るのも一つです。

子どもにとって精神的な幸福も欠かせない

子どもの幸福は、心理的側面、健康的側面、学力や社会スキルの面など、多面的に見る必要があります。「レポートカード19」からは、日本の子どもの多くが安全で健康的な生活を送り、平均的な学力も高いというプラス面が分かりました。

ただし、自殺率の高さに見られる精神的幸福度の低さは大きな問題で、国によるサポートが求められます。家庭でできる対策としては、日常的に親子で話すことや子どもの主体性を尊重する教育方針が挙げられます。

日々の忙しさで親子の会話が減っていると感じる場合は、これを機に会話の時間を増やしてみるのもよいでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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