京都には老舗と呼ばれる調味料専門店が多くあります。老舗の専門店を訪れることで、商品についてより詳しく知れたり、京都の文化やお店の歴史に触れたりもでき、スーパーとはまた違った楽しさや感動があります。また子どもと一緒に行くと食育にもなっておすすめです。
油一筋200年の「山中油店」
二条城の北側にある「山中油店」は、食用、建築用、美容など、あらゆる油が揃う全国的にも珍しい油の専門店です。

大通りから少し道を入り、歩いていると見えてくるのが、重厚感のある立派な店舗。創業当時の面影を残す趣のある建物は、国の登録有形文化財、京都市の重要景観建造物に指定されています。

どんな商品が取り扱われているのか、おすすめの商品や使い方、レシピなどを伺ってきました。
生産元に足を運んで仕入れる良質な油
創業以来、油一筋の山中油店では、良質な油を仕入れて販売されています。その商品は、日本全国、世界中の生産元に直接足を運んで仕入れられているもの。そのため、材料や精製工程、味わいなど、厳選された高い品質の油が揃います。

また、油の材料には、農薬を極力使わずに育てられたもの、遺伝子組み換えでないものなどが選ばれていて、安心して口にできる商品が販売されています。
油が美味しい!
食用のいろんな油を紹介していただきました。まずはパスタやサラダなどに使う、日本でもお馴染みのオリーブオイル。

フルーティーな味わいのものから、オレンジの風味のするもの、爽やかな苦味のあるものなど、たくさんのオリーブオイルが揃います。オリーブオイルと一口に言っても、こんなに種類があるんだと驚きです。
そして次に、なたね油や胡麻油、落花生油など、和食にぴったりな油。その中のコーン油は、ロングセラー商品だそうで、これで揚げ物をすると、サックサクに仕上がるんだそうです。


オリーブオイルをはじめ、いくつか実際に味見させていただきました。

たくさん油を試食させてもらいましたが、これだけ油を摂ると胸焼けしそうに思いますよね。ところが良質な油はそれが全くありません。しつこさがなくサラッとしていて、旨みをしっかり感じることができました。
それぞれ香りや味わいが異なり、油だけでこんなに美味しいとなると、どんな料理に使おうか考えるのも楽しいですね。

おすすめや人気商品は?
数ある商品の中で、おすすめの商品は「国産なたね油」と「芳香落花生油」です。
・国産なたね油

農薬を使用せずに栽培された、北海道産の菜種品種「キザキノナタネ」をじっくり焙煎し、科学的な方法を一切使わずに、時間をかけて丁寧に手作業で搾っています。素朴で風味豊かな味わいが特徴。炒め物や揚げ物など、さまざまな料理に使うことができ、素材の味を生かしたまま、香ばしく仕上げることができます。
・芳香落花生油

「芳香落花生油」は、ピーナッツからつくられる油。試食させてもらうと、本当にピーナッツの風味が! 香ばしく、ほんのり甘い落花生油は、炒め物や和え物に最適だそう。いつもの料理がグンと美味しくなる「魔法の油」と評判の油です。
食用油だけじゃない
山中油店では食用の油だけでなく、塗装用の油やスキンケアなどの美容オイルまで揃います。また店内には、山中油店や油の歴史などがわかる展示もあり、親子で訪れるのも楽しそうですね。



おすすめレシピ「芳香落花生油でつくる“ラー油”」

【材料】
・★粉とうがらし(韓国料理で使うもの)… 大さじ1
・★いりごま… 大さじ1
・★フライドオニオン… 大さじ3
・★ガーリックパウダー… 小さじ1/2
・★かつお節粉… 大さじ1
・★砂糖(あれば粉末黒砂糖)… 小さじ1
・★中華材料の花椒(四川料理で使われる中国の山椒)… 小さじ1~大さじ1
・芳香落花生油… 80ml
・はちみつ… 小さじ1
・甜麺醤(コチュジャン、合わせ味噌でもOK)… 小さじ2
・醤油… 少々
【作り方】
1.ボウルに★の材料を全て入れて混ぜ合わせておきます。
2.鍋に芳香落花生油を入れ、140℃まで熱します(菜箸の先を入れて静かに細かい泡が出てくるのが目安)。
3.2に1を少しずつ入れ混ぜ合わせます(火傷に注意してください)。
4.粗熱がとれたら、はちみつ、甜麺醤を入れ混ぜます。
5.十分に冷めたら、醤油を入れて完成です。
「本田味噌本店」
お次は味噌の専門店をご紹介。京都御所の西に店舗を構える「本田味噌本店」は、創業天保元年、約200年の歴史をもつ味噌の専門店です。
看板商品である西京白味噌は、かつて宮中に納められていたという伝統の味噌。そのほか、さまざまな味噌や、伝統の味を守りながら時代に合わせた新しい商品も開発されています。では、暖簾をくぐって本田味噌本店に入ってみましょう。


本田味噌の看板商品「西京白味噌」
本田味噌の看板商品である「西京白味噌」は、宮中にも納められていたという白味噌。創業時より守り抜かれた伝統の醸法で丹精込めてつくられていて、きめが細かく上品な甘さが特徴の味噌です。


一般的な味噌に比べて塩分が少なく、まろやかな甘みが特徴の白味噌は、京料理には欠かせない調味料。特に京都で食べられている正月の雑煮には、白味噌が使われます。

白味噌のほかにも、さまざまな味噌が販売されています。大豆や米麹の粒が残っているものや、コクのあるもの、軽やかな味わいのものなど、たくさんの種類の中から好みの味噌を見つけてみてください。

子どもも興味津々の量り売り
店内に並ぶ味噌は、量り売りされています(基本的に500gか1kg)。しゃもじで味噌を量りながら、樽から容器に詰めてくれる様子は、一緒に来店した子どもも興味津々で見ているそう。


今はスーパーなどでパッケージに入った味噌を選ぶことが多く、量を量りながら買うことは少ないですよね。しかも、味見をして自分好みの味噌を買うなんて、子どもだけでなく、大人もわくわくする体験。
「実際に味見すると意外とお子さんのほうが渋い味噌を選ばれるんですよ!」と教えてくださいました。親子でお好みの味噌を探してみてはいかがでしょうか。
西京白味噌でスウィーツ

甘味が強い西京白味噌は、和菓子にも甘味料として使われてきましたが、バターなどの乳製品とも相性がいいんです。
そこで開発されたのが、西京白味噌を使った、フィナンシェやダックワーズなどの洋菓子。ほんのり味噌の風味がするスウィーツは、一度食べると病みつきになる美味しさです。

この西京白味噌を使った洋菓子は、本店や限られた店舗でしか購入できないため、店舗を訪れてぜひ味わってみたいものですね。
本格味噌汁が手軽に味わえる商品も
本田味噌本店の味噌と具材をフリーズドライにし、焼き麩で包んだ「一わん味噌汁」。お椀に割り入れて、お湯を注ぐと、風味豊かな本格味噌汁を味わうことができます。
白味噌や赤だし、赤味噌などの種類があり、それぞれに合わせた具材が使われています。軽く日持ちもするのでお土産にもぴったりです。


おすすめレシピ「西京白味噌たれの白玉団子」

【材料】
<白玉団子>
・白玉粉… 125g
・ぬるま湯… 100g
<西京白味噌たれ>
・西京白味噌… 大さじ2
・みりん… 200g
・水溶き片栗粉… 適量
・きな粉… 適量
【作り方】
1.ボウルに白玉粉を入れ、ぬるま湯を少しずつ加え、耳たぶくらいの硬さになるように混ぜ合わせます。
2.1の生地を約20個になるように分け、丸めます。
3.鍋に湯を沸かし、2を入れて茹でます。
4.茹で上がったら、冷水にとり、ぬめりを落とします。
5.ボウルに西京白味噌を入れ、みりんを少しずつ入れながら混ぜます。
6.5をフッ素樹脂加工のフライパンに入れ、弱火~中火でとろみがつくくらいまで煮ます。
7.半量くらいになったら、水溶き片栗粉を入れ、とろみをつけて冷ましておきます。
8.器に白玉団子を入れ、上から西京白味噌たれをかけ、お好みできな粉をかけたら完成です。
専門店でしか味わえない楽しみや感動がある
さまざまな商品が一気に揃うスーパーとはまた違い、商品について詳しく聞けたり、自分好みの商品をじっくり探したりできるのが、専門店の魅力ではないでしょうか。
今回ご紹介した「山中油店」と「本田味噌本店」は、どちらもそれぞれの商品一筋の老舗専門店です。京都を訪れたら、ぜひ足を運んで「ほんまもん」を味わってみてください。
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構成・文・写真(一部を除く)/松田慶子(京都メディアライン)

