【元UNHCR駐日代表滝澤三郎先生に聞く】まさに今が日本の転換期。外国人が増えている背景と直面する課題をわかりやすく解説

日本で暮らす外国人の数は、10年前と比べて約1.8倍。年々過去最多数を記録し、現在約396万人の外国人が日本で暮らしています。今年2月に行われた衆院選では、外国人に対する政策が一つの争点ともなり、これからの政策方針や共生に向けた動きに注目が高まっています。今回は、元UNHCR駐日代表で移民・難民政策について大学で教鞭を執られている滝澤三郎先生に、外国人が増えている日本の背景と課題をわかりやすく解説してもらいます。

日本の総人口の約3%が外国人。過去最多の396万人の外国人が日本で暮らしている

法務省によると、2025年6月末の在留外国人(日本に90日を超えて滞在する外国人)は過去最多の約396万人。その数は横浜市の人口(約377万人)と同じくらいにあたり、日本の総人口の約3%を占めています。諸外国に比べて総人口に対する外国人比率は低い一方、少子化による日本人の人口減少も影響し、日本で暮らす外国人の割合は増加傾向にあります。

2014年から2025年6月末までの在留外国人数の変化

子どもたちが親世代になるころには外国人比率が10パーセントを超える可能性も

日本での外国人比率は2070年までに10.8%になると推計(令和7年8月法務大臣勉強会:外国人の受入れの基本的な在り方の検討のための論点整理)されており、その割合は、現在のイタリアポルトガルでの外国人比率に相当します。

― 都心のコンビニエンスストアでは外国人の店員さんも多くなり、普段の生活の中で外国人と接する機会が確実に増えているように感じます。40~50年後には今の欧米諸国と同じくらいの比率の外国人が日本で暮らしているようになっている可能性があると知り大変驚きました。

滝澤先生:実際には、今のスピードで増えていくと2070年よりもっと早い段階で外国人比率が高くなるともいわれていて、20年後にはすでに今の欧州諸国のような外国人の割合になる可能性もあるといわれているんですよ。

― ということは、まさに今の子どもたちが30歳前後になるときにはすでに多くの外国人が日本で暮らしている可能性があるということなんですね。

滝澤先生:そうなんです。労働力不足の産業でAIやロボットの活用によって外国人労働者がそこまで増えない可能性も考えられます。しかし、日本の少子化のスピードが速まっていることも影響し、外国人比率は年々増加傾向にあります。

日本で暮らす外国人が増えている背景は? どの産業で外国人労働者が増えている?

ではなぜ日本で暮らす外国人が増えているのでしょうか? その背景には、日本で働く外国人労働者の数が年々増えていることが挙げられます。

2025年10月末において日本で働く外国人労働者数は約257万人(厚生労働省)。在留資格別でみると、10年前に比べて技能実習制度(一定期間日本で技術を学びながら働き、技術を習得し母国の経済発展を促すことを目的)を利用した外国人労働者(主に製造業、建設、農業など)や高度な技術や知識を持った技術・人文知識・国際業務に属する外国人労働者、国内で顕著な人手不足が生じている特定の産業分野(農業、漁業、林業、宿泊、介護など)で働く特定技能(2019年~)の外国人労働者が増えています。

2025年6月末在留資格別外国人の数と割合

少子化による労働人口の減少。日本の経済を支えるには外国人労働者が必要不可欠

― 日本で暮らす外国人が増えている背景を教えてください。

滝澤先生:少子高齢化により国内での人手不足が深刻化しており、2019年より国内で人手不足となっている特定の産業で働く「特定技能」の外国人労働者の受け入れが始まり、「技能実習生」に加えてこれらの産業で働く外国人労働者が増えていることが挙げられます。日本経済を支えるためには、外国人労働者を受け入れて労働力不足を補うことが不可欠な状況となっています。

― 特に人材不足の産業ですでに多くの外国人労働者が働き、経済を支えているようですね。10年前に深刻な労働力不足への対応策のひとつに、女性のキャリア継続や活躍をより推進していく動きが見られ『女性活躍推進法』が制定されましたが、それでも労働力が足りていない状況が続いているのでしょうか。

滝澤先生:以前は、結婚や出産で30代の女性が離職する傾向が高かったのですが、徐々にキャリアを継続する女性が増えてきています。しかし、それでも人手不足で困っている産業での労働力不足問題が解消されていないのが現状です。

ベトナム人が最多。製造業、サービス業といった労働力不足の分野で

― 日本で働く外国人の傾向を教えてください。

滝澤先生日本に来る外国人労働者の出身国は、アジア各国の経済発展が大きく影響しています。以前は中国人が最多でしたが、近年ベトナムから来る外国人労働者が増えています。その理由として、中国での経済状況がよくなったことや円安の影響で、中国から日本に来る労働者が少なくなったことが考えられます。

― 海外で働く労働者は、自分の国の経済状況も大きく関係しているということなんですね。

滝澤先生:そうですね。ベトナム経済も今発展してきているので、いずれ日本で働くベトナム人も減少傾向になると思われます。近年ではネパールインドネシアミャンマースリランカからの労働者も増えていますよ。

― 東南アジアから日本に働きに来る外国人が近年増えているようですが、どのような産業で働く外国人が多いのでしょうか。

滝澤先生:日本国内で人手不足となっている産業分野、特に製造業サービス業で多くの外国人労働者が働いています。卸売業・小売業に属するコンビニエンスストアで働く優秀な留学生も多いようですね。日本語を話し、日本のルールの中にうまく溶け込みながら働いてくれているコンビニエンスストアの外国人の店員さんは日本で働く外国人労働者のモデルケースになるのではないでしょうか。

4月にミャンマーから日本に来る予定の女性実習生

家族帯同して暮らす外国人も増加傾向。外国籍の子どもたちの学校生活での課題は

過去10年間で家族を帯同して日本で暮らす外国人労働者(在留資格の種類によって一定の条件のもと家族帯同が認められている)や家族のいる永住者も増えています。文部科学省によると、公立学校における日本語指導が必要な児童生徒(日本国籍含む)は、2023年度に約6.9万人以上(令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査)。外国籍の子どもたちを含めた日本社会での共生が課題となっています。

都心の小・中学校では外国籍のクラスメイトも珍しくない

― 都心では外国人のお子さんもよく見かけるようになりましたが、家族を帯同して日本で暮らす外国人も増えているようですね。

出典:文部科学省「外国人の子供の就学状況等調査」令和6年度調査結果

滝澤先生:在留資格によっては家族の帯同が認められていて、家族のいる永住者家族を帯同して暮らす外国人労働者も増えています。都心の小・中学校では外国籍の子どもがいることがもはや珍しくなくなってきているくらいです。学校生活のなかで外国人のお友だちとの交流を通して、すでに海外の文化に触れている子どもたちも少なくありません。

外国人の子どもたちへの日本語のサポートが重要課題。学校での文化交流を積極的に

― 都心の小・中学校ではすでに転換期に入っているかのようですね。外国人の子どもが増えてきているなか、どのような課題が浮き彫りになってきているのでしょうか。

滝澤先生:日本語が話せない児童に対する日本語教育サポートがひとつの大きな課題となっています。2019年には「日本語教育推進法」が制定され、日本語教育を推進していく法律が施行されましたが、日本語教師が十分にいないこと、サポート体制が整っていないなど自治体や学校の先生の負担が大きくなっています。外国人の子どもが日本語できちんと学べるように国が自治体に対してどういう政策をすべきかということが議論されてきていますが、予算が足りていないのが現状です。

― 日本で生活するにあたって、学校での勉強のみならず社会生活でも日本語が必要になってきますよね

滝澤先生:日本で暮らす外国人が日本語を習得することで、日本社会のルール違反からくる摩擦や誤解を防ぐことにもつながります。ですので、子どもを含め日本で暮らす外国人には日本語を習得してもらうことが重要となります。また、将来多文化の社会で生きていく今の日本の子どもたちにとって、小さいころからの文化交流は異文化を理解するうえでとても大切です。学校で困った外国人のお友だちがいたら積極的に話しかけてあげたり、その子の国の文化を尋ねてみたりと、外国人のお友だちとの交流を深めてみるようご家庭でもぜひアシストしてあげてください。

日本で暮らす外国人との「秩序ある共生」への課題

多くの外国人労働者が日本経済を共に支え活躍するなか、ルール違反や近隣住民トラブルなどの表面化により、近年排外主義的な風潮が高まりつつあります。欧米諸国では移民排斥の動きがみられ外国人に対する規制が厳しくなっている中、外国人労働者が必要不可欠な日本が直面する課題とこれからは?

高まる社会的不安。これからどうなる?

― 日本で暮らす外国人が増えると暮らしや社会にどのような影響が出てくるのでしょうか。

滝澤先生:まさにここ数年で一部の外国人によるルール違反や法律違反に対して社会的な不安が高まってきています。定住支援や子どもたちの支援といった受け入れ体制が十分整備されていないまま、日本で生活する外国人が急速に増えてきたことも一つの要因かと思われます。最近では、イスラム教のモスク建設や墓地問題がニュースになっていましたが、日本ではすでに40万人を超えるイスラム教徒が住んでいると推計されており、今後宗教問題は大きくなる可能性があると思われます。

― 「外国人」に対する社会的不安は日本で暮らす外国人労働者に対してだけではなく、ここ数年海外からの観光客の著しい増加や一部のマナー違反、外国人による事件や犯罪の報道が目立つようになったことも少なからず影響しているのでしょうか。

滝澤先生:やはりそれはあると思いますね。オーバーツーリズムによる公共交通機関への影響やマナー違反は特に都市部で日常生活をするうえで感じやすくなっていることも影響していると思います。

日本が外国人を受け入れるうえで一番難しい点は、社会受容性だと思っています。技術的な言葉の違いだけでなく異文化をもつ人との交わりがあまりなかったこともあり、どのように国民の理解を得ながら受け入れることができるのかが問われているのかと。日本社会の強みはルールを守るといったことで安定していた国でもあり、外国人が嫌いというより、ルールを守らない・理解しない人が嫌いということが根底にあると思います。

2023年に埼玉県川口市で起きたクルド人による騒動や地域住民との摩擦は、日本でルールを守ることがいかに大切なのかということを外国人に理解してもらうきっかけとなり、今後の日本の外国人政策を変える契機にもなったのではないかと思いますね。

― 移民を多く抱えるアメリカや欧州では移民排斥の動きが近年みられます。すでに多くの外国人が暮らすようになっており、また人材不足で外国人労働者が必要不可欠となっている日本ですが、これからのどのように変わっていくと滝澤先生はお考えでしょうか。

滝澤先生:まさに今、日本は岐路に立っていると思われます。日本は欧米諸国が抱えているような移民問題は絶対に避けたいという強い決意がうかがえます。出入国管理の強化や規制、国民が不公平に感じない制度づくりを通して日本型の外国人政策モデルを作りだすことで、この転換期をうまく乗り越えていくことができるのではないかと私は思っています。

後編では日本の子どもたちに今必要とされているスキルや経験について伺いました

子どもが国際問題に関心をもつきっかけづくりを家庭から。これから求められる「議論できる力」と「コミュニケーション能力」とは? 【滝澤三郎先生(元UNHCR駐日代表)教えて!】
インタビュー前編はこちら 日本と海外で国際問題に対する関心の差 海外に比べて日本社会は国際問題に対する関心が低い傾...

取材・文・構成/菅 摂子 (取材日:2026年1月8日)

お話を伺ったのは

滝澤三郎先生 ケア・インターナショナル ジャパン副理事長

カリフォルニア大学バークレー経営大学院修了(法学修士・MBA)。元国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日代表、国連大学客員教授、東京大学特任教授を経て、現在東洋英和女学院大学名誉教授、ケア・インターナショナル ジャパン副理事長。主な出版物は、『難民を知るための基礎知識』(編著、明石書店、2017年)、『世界の難民をたすける30の方法』(編著、合同出版、2018年)、『「国連式」世界で戦う仕事術』(集英社新書、2019年)など。

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