子どもの頃、地獄にまつわる絵本を読んでもらい、「もう絶対に悪いことはしない!」などと震え上がったママやパパも多いはず。子どもにも受け継いでいきたい健全な心が自然と育つ絵本『地獄めぐりの橋』(青山邦彦・著/小学館)がこの夏、出版されました。
小学生の「ぼく」が、不思議な伝説のある井戸を下りると、そこは鬼達が忙しく働く地獄の世界だった。鬼につかまりえんま大王の前に連れ出された「ぼく」。あやうく炎地獄に投げ込まれそうになったところを助けてくれたのが、小野篁(おののたかむら)という人だった…。「ぼく」は小野篁さんと一緒に地獄めぐりをすることになるのですが、地獄がどんな世界なのか、その詳細がまるで見てきたかのように描かれている絵本です。
本の出版を記念して、京都市内の地獄や閻魔大王、小野篁にゆかりのある3つのお寺では『地獄めぐりの橋』のオリジナルスタンプを押すことができます。親子で楽しめる京都の歴史・地獄散策を、はるちゃん(小学2年生)とかんちゃん(幼稚園年長)が体験レポートします!
目次
地獄へ通じる井戸があるという「六道珍皇寺」へ
まずは地獄めぐりのちらしを手に入れるため、京都駅前にある京都総合観光案内所「京なび」もしくは「京都市河原町三条観光案内所」。これからご紹介していく3つのお寺にもそれぞれちらしは置いてありますよ。
京都駅から市バス206番に乗り、「清水道」で下車後、徒歩約5分。地獄にゆかりのある第一のお寺「六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)」を目指します。六道珍皇寺はあの世とこの世の境目だと言われている“六道の辻”があります。
また、このお寺にはあの世に通じているという“冥途通いの井戸”が実際に存在するのです。平安時代の歌人・小野篁はこの井戸を通ってあの世へと行き、閻魔大王の仕事の手伝いをしていたという伝説が残されています。
※井戸は「ゑんま詣」の日に特別公開されます。詳しくは六道珍皇寺のホームページをご覧ください。
地獄の苦しみを代わってくれるお地蔵様のいる「矢田寺」へ
「清水道」から市バス207番に乗り、「四条河原町」で下車、寺町商店街を約10分ほど北上すると、商店街の一角に「矢田寺」があります。
平安時代の矢田寺の住職・満米上人(まんまいしょうにん)は小野篁に紹介されて閻魔大王と出会い、地獄を見てきたと言われています。その際、炎で煮えたぎる鉄釜の中から僧侶が多くの人を助ける姿を見て感銘を受け、お地蔵様を作ったと言われています。
優しい!? 閻魔大王がいるという「千本ゑんま堂引接寺」へ
最後のスタンプがある「千本ゑんま堂引接寺(いんじょうじ)」は「河原町三条」から市バス59系統に乗り「千本鞍馬口」で下車後すぐのところに位置します。
千本ゑんま堂は小野篁が作ったお寺だと言われています。応仁の乱で惜しくも消失してしまいましたが、閻魔大王像は実物を見ている小野篁が作ったと言われているので、実際に近いであろう閻魔大王を見ることができます(※現在の像は1488年仏師定勢(じょうぜい)作のもの)。
戸田妙昭ご住職から「このお寺の閻魔大王はいい子には優しい顔、悪い子には怖い顔に見えると言われています」と教わりました。親子で「どう見えた?」などと話すのも楽しいですね。
番外編・『地獄めぐりの橋』の原画を綴織で再現している工房を見に行こう!
千本ゑんま堂引接寺から徒歩約10分のところに、『地獄めぐりの橋』の表紙絵を一年の歳月をかけて、綴織(つづれおり)で再現しようと挑戦している工房「奏絲綴苑(そうしつづれえん)」があります。京都の伝統工芸の制作風景を間近で見られる機会はそうそうありません。一般公開されていますので、さっそく行ってみましょう(※要予約)。
織物のサイズは縦1・4メートル×横1メートルで見るものを圧倒する大きさ。針山地獄や血の池地獄、火車のような乗り物で空を飛ぶ主人公と小野篁、迫力のある閻魔大王などを爪掻本綴織(つめがきほんつづれおり)で織り上げています。1日で握り拳ほどの大きさしか完成しないという精緻な作業に、大人も子どもも思わず見入ってしまいますよ。
見るだけでなく、体験することもできますよ。ふたりでランプシェード制作(所要時間1時間/3500円税込)に挑戦してみました。
京都市内を東から西へ横断しながら、京都が紡いできた歴史を感じ、地獄を通して「よく生きるにはどうしたらいいだろう?」といつもより深く話せる夏の親子時間となりました。京都の地獄めぐりは心をすくすくと育ててくれますよ。
矢田寺:京都市中京区寺町通三条上ル
千本ゑんま堂:京都市上京区千本通蘆山寺上ル 閻魔前町34番地
★スタンプ設置は8月31日(土)まで。案内ちらしは上記3つのお寺のほか、JR京都駅2階「京都総合観光案内所」に置いてあります。(ちらしはなくなり次第終了)
奏絲綴苑:京都市上京区西柳町590-8(五辻七本松西入る)