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完璧じゃなくても何とかなる、と気づくように
――「復職式」はどのようにスタートしたのですか。
荒川桃子さん(以下、同):きっかけは、人事部のひとりが「かつて復職したとき、周りから取り残されていると思った。同じような思いを復職者が思うかもしれないので、そう感じさせない受け入れ方をしたい」と思ったことです。
復職の時期は人それぞれで違うから、復職社員どうしで悩みを共有しにくいですよね。そこで、戻るタイミングで顔を合わせられるようなイベントが誕生しました。
2017年に開始して、2026年4月に10回目を迎えています。今回は専門家を招いて、参加者からのお悩み相談を実施しました。オイシックスが10年間実施してきた復職支援プログラムの内容と、復職式で授与してきた復職証書のテンプレートは公式noteにてご覧いただけます。

――10年間で変化はありましたか。
会社全体としては、男性の復職メンバーが増えてきていて、男女ともに社員の育休取得率100%を継続しています。
私自身も長女が14歳、長男が10歳なのですが、大きく変わりました。第1回目の復職後は、全部100%で頑張らないと! と気負いすぎていたんです。長女はあんまり野菜を食べてくれなかったから、そのことですごく悩んでいました。
でも、4歳を迎えたタイミングで、急にほうれん草が食べられるようになって(笑)、時間が解決することもあるんだな、と気づきました。
あとは他の復職しているママと話して「みんな、そんなもんなんだな」と感じることが増えて、完璧じゃなくても何とかなる、と思うようになりました。
――どんなことを「完璧」じゃなくしたのですか。
全部ママがやる、ということです。
たとえば、お風呂をわかすのは子どもにやってもらっています。面倒くさがられたときは「このかわいい入浴剤を入れてみない?」とか「このおもちゃ、お風呂で遊ぼうよ」とか言いながら(笑)。
玄関の靴を並べるのは、長男の役目です。モチベーションを上げるために、チェックシートを導入しました。できたときはコマをひとマスすすめることができて、「チェックボックス表」「タスクチェックシート」などでAmazonで検索すると、かわいいものがたくさんあります。
他にも、自分のことは自分でやらせるようにしています。子どもって、意外と自分でできることが多いんですよ。
子どもが失敗を経験することは「悪いことじゃない」
――何をお子さんたちは自分でやっているのですか。
長女は学校の弁当を自分で作っています。もちろんいきなり作れるようにはならないから、夏休みの間に少しずつ一緒にやったりして、ステップアップしていきました。
長男は、保育園時代から準備は持ち物も含めて自分でやっています。もちろん失敗はつきもので、前に替えの下着を忘れて、保育園の下着を履いて帰ってきたこともありました。

――新しい下着を買って、保育園に返さなきゃいけないですよね。
はい。でも、大したことじゃない。返せばいいんです(笑)。長女が寝坊しているときも、叩き起こしたり、学校まで送ったりは、私はしていません。学校に連絡はしますけどね。
仕事をしていると、失敗なんて山ほどあるじゃないですか。子どもにとっても、失敗を経験することは悪いことじゃない。それをお母さんの罪悪感につなげる必要はないんです。もちろん、他の人に迷惑をかけない範囲で、ですけどね。
自分の母親を「当たり前」だと思ってしまう
――大人が「頑張りすぎなきゃいけない空気感」について、何が原因だと思いますか。
ママもパパも、自分の母親にしてもらったから、でしょうね。自分のお母さんの姿が正しい、それが「当たり前」だと思うんです。
あの頃と違って仕事をしているママが多いし、全く同じクオリティでやるのは無理なのに、頑張ろうとしちゃう。
私は年間100人くらいにインタビューさせていただくのですが、「夕飯には絶対に5品を出す」という方もいました。彼女にとっては頑張ってるわけじゃなくて、当たり前なんです。

――パパとママで「当たり前」が違うと衝突が起きそうです。
お互いの価値観は崩せませんからね。「夫がお酒を飲むから、どうしても5品は必要だと言われる」という方もいました。だから、2品はお惣菜にするとか、宅配サービスを導入するとか、価値観は尊重したまま、何とかやるしかない。
うちでも食洗機や食器乾燥機、ロボット掃除機などの家電を導入しています。特におすすめしたいのが、スタンドドライヤー。その前に座るだけで髪を乾かしてくれるんです。ガジェット好きのYouTubeチャンネルを見て知りました。
便利家電導入は「子どものため」「減価償却」で説得
――家電は値が張りますが、どうやって導入に至ったのですか。
「私が楽をするため」と言うと説得力が弱いから、相手と共有できること、たとえば子どもを理由にしました。料理の時間が減れば、子どもに本を読める時間が増えるとか、保育園の帰りに公園に寄れる余裕ができるとか。
あとは、「減価償却」で説明しました。10万円と聞くと高いけど、それを10年毎日使うと、1日あたり数十円で済みますよね。会社の資産はこの考え方を使って買うから、家でも応用しました。
抵抗されたら「だったら、私の家事にも時給をください」と(笑)。

――家電導入の他に、頑張りすぎない工夫はありますか。
家族で分担することです。子どもができないことは、夫にもやってもらう。
料理の他に家事で問題になるのは、清潔さの物差しなんです。お風呂上がりに使ったバスタオルは毎日洗うべきか、3日で1回でいいのか。シーツは週に1回洗いたいのか。頻度が少ない方が、高い方に合わせることになりますよね。
そういうときは「シーツをはがすのと付けるのはあなたがやってね。洗うのは私がやるから」と交渉しちゃいましょう。掃除機は毎日かけるべきだと言われたら、「週の半分は私がやるから、残りはあなたがやってね」とか。
あとは、家事を全部リストアップして、好き嫌いで分担するのも手です。
――夫から「年収が低い方が家事をやるべき」といわれて分担できないという話を聞きます。
家事を時給1500円にして換算すると、総額ではその夫より高いんじゃないですか? でも、それを伝えると喧嘩になりますよね(笑)。
家事をリストアップするのにはもうひとつ理由があって、それを時給に換算してみて、自分の年収に足してみるんです。「これだけ働いているんだ」と、自分を認めてあげると、自己肯定感があがりますよ。
まずは週に2回だけ、完璧を手放してみる
――惣菜や外部サービスを使うと「手抜きをした」と自己肯定感が低くなってしまいませんか。
毎日じゃなくて、週2回とか、大変なときだけ使えばいいんです。
私も料理がしんどくて、冷凍弁当を使ったことがあります。毎日続けてたら、一週間後に夫から「さすがにやめて」と言われて中止になりましたが(笑)。でも「月曜と水曜は子どもの習い事があるから、惣菜にする」とか、子どもが理由なら、相手も納得するし、罪悪感もそんなに抱きませんよね。
あとは、主菜と副菜はデリバリーでも味噌汁だけ作ったとか、ミニトマトだけは自分で洗って出したとか、工夫すれば心のバランスが取れます。
でも、料理においては、ある程度は完璧を手放していいんです。体重が増えていれば大丈夫。他の人と比べる必要はありません。
――頑張りすぎて疲れてしまいがちな方たちに、メッセージをお願いします。
「手を抜いてしまった」と自分を責めてしまうなら、いっそ「手抜き」という考え方すら手放しちゃいましょう。もっとゆったりして、気軽に構えて、目の前にいる子どもと向き合う時間を増やしていいんじゃないかな。
私も、もっとはやく完璧を手放して、子どもたちが小さい頃に、たくさん絵本を読んであげればよかったな、と思っています。
目の前の子が元気でいれば、それでいい。そんなに頑張らなくていいんですよ。
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お話を聞いたのは
オイシックス・ラ・大地株式会社 サービス開発本部・デリOisix プロジェクトマネージャー。イベントプランナー、雑誌や書籍のライター、エディターを経験後、2013年に仕事と育児を両立できる職場を求めて、旧らでぃっしゅぼーやにキャリア入社。社長直下でOisixのサービス開発を経験後、より自分の強みを発揮できる環境を求めて退社、2023年6月にオイシックス・ラ・大地にカムバック。2児のママ。
この記事を書いたのは
三菱UFJ銀行の法人営業、ユーザベースのセールス&マーケティングを経て独立。ビジネスやマネーの取材記事から、恋愛小説まで幅広く執筆。2025年よりフランスに拠点を移し、フランス企業の日本進出支援(ローカライズ)やフィクションの翻訳にも携わる。3児の母。
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