子供・大人ともに増加傾向にあるアトピー性皮膚炎の患者数。子供のアトピーには、どんな治療が行われるのでしょうか。また一般的な治療法、薬を使わない治療法、治療費など、どんな違いがあるのでしょうか。
「地域に密着したママの駆け込み寺」として患者さんが後を絶たない、北浜こどもクリニック院長でカリスマ小児科医の北浜直先生に、子供のアトピーの治療法についてお話を伺ってきました。
目次
子供のアトピー、一般的な治療法とは?
アトピーの一般的な治療法としては、「原因・悪化因子の除去」と「スキンケア」と「薬物療法」があります。「原因・悪化因子の除去」と「スキンケア」のふたつはリンクしています。
原因・悪化因子の除去
原因・悪化因子の除去については、まず「清潔にする」ことが重要です。
口周りの清潔
口の周りが赤く、湿疹が見られる場合には、スタイを外すことをおすすめしています。スタイをしていることによって、よだれが溜まり雑菌が繁殖してしまうんです。キレイに拭き取ることで清潔になり、それだけで湿疹が良くなる場合もあります。
汗・皮脂など
皮脂の取りすぎを気にして、石鹸の不使用を提唱する方もいらっしゃいますが、石鹸を適切に使うことは必要だと考えます。特に、赤ちゃんは分泌物が多いので、石鹸を使ってキレイに落とす、そしてしっかり保湿をすることが重要です。
ほこりなど
ほこりは、生活をしていれば必ず出てしまうものです。できる範囲で除去していきましょう。おすすめは、シーツと布団カバーと枕カバーを清潔に保つことです。寝具は触れる時間が一番長いので、できるだけ気を遣っていただきたいですね。
スキンケア
0歳児の間のスキンケアがうまくいかないと、アトピーが発症しやすくなると考えています。スキンケアはアトピーの発症を抑えるためにも重要になってきます。
石鹸を使って汚れを落とす
汚れを落とさないまま保湿をしてしまうと、その上から皮膚に蓋をしてしまうことになり、毛穴が詰まってより悪化することがあります。石鹸を使って、まずは汚れをキレイに落とすことが重要です。
保湿をする
スキンケア=保湿と思われる方が多いのですが、保湿をすることだけがスキンケアではありません。スキンケアの3本柱は、「清潔」「保湿」「紫外線対策」です。汗、汚れ、皮脂などを落とし、清潔にした後、しっかり保湿をして、紫外線対策を行うことが重要です。
紫外線対策も
紫外線には、「ビタミンDを作って免疫を高める」という作用もあるので、人間にとって少しの紫外線は必要なのですが、肌にとってはあまり良くありません。特に、肌荒れしているところに紫外線が当たると良くないので、夏場はしっかりと対策してほしいと思います。 赤ちゃんにも、適切な日焼け止めを塗ってあげて大丈夫です。
薬物療法
アトピーの子供の治療に、適切な方法で薬を使うことは必要だと考えます。医師の指導のもと、使うときはキチンと使う、必要のないときには使わない、というメリハリが大切になってきます。
ステロイド外用薬
ステロイドは、肌の炎症を抑えるための薬なので、アトピー治療には効果的です。通常、小児科で出すステロイドはそこまで強いものではないので、医師の指導のもと、それを適切に使用していれば問題はないと考えます。
タクロリムス軟膏
タクロリムス軟膏は、安全性も保障されていますし、ここ数年でよく使われています。タクロリムス軟膏の成分であるタクロリムスは、アレルギーの免疫反応を抑える抗炎症作用により、皮膚炎の赤みやかゆみを抑えてくれます。これを使うことによって、ステロイドを使う量も減らせたり、皮膚炎の赤みやかゆみの予防にもなります。
抗ヒスタミン薬
抗ヒスタミン薬とは、かゆみ止めの薬です。当クリニックでは使用していません。クリニックによっては処方されることもあるかもしれません。
薬を使わない治療法とは?
スキンケアを適切に行えば、ステロイドなどの薬の使用は減っていきますが、必要な場合は使用することをおすすめします。ただし、薬を使わなくても済むように、スキンケアをすることが治癒にもつながります。薬は、「悪いものだから使わない」のではなく、「使わなくてもよい肌する」ということが大切です。
薬の副作用
適切に使用すれば、ほとんどないと考えています。ステロイドの副作用については様々なことが言われていますが、医師の指導のもと、適正の量を使っていればそういうことはないと捉えておいて問題はないでしょう。
温泉療法
温泉のお湯は雑菌も多く、それらは肌にとって異物となります。温泉も海水も、アトピーには良くないと考えてよいでしょう。
お風呂に入ってはいけない?
症状がひどい場合は、「シャワーだけに」と指導することもありますが、それも程度によります。 真冬なのにシャワーだけで風邪ひいてしまうと困りますからね。状況を見て、医師の判断を仰いでください。
治療費や治療期間はどれくらいかかる?
保険内で対応可能です。子供の場合、乳児の医療証があれば、一般的なその他疾患の治療費と変わりません。
一般的な治療
治療のスタート時は、週に1回など通院の必要がありますが、治療を続けると1~2ヶ月に1回の通院になるのが一般的です。通院の間隔が空いてきても、その間ホームケアをしっかりすることが大切です。
薬を使わない治療
市販のクリームの使用については、症状によると思います。ただ、市販品は不純物が多いものもあるので、当院ではあまりおすすめはしていません。
子供のアトピー、最新の治療法とは?
子供のアトピーの最新の治療方法が研究されています。
プロアクティブ療法
プロアクティブ療法とは、ステロイドなどの薬をうまく使って、症状の出る前から予防する方法です。アトピーの症状が収まってきた子供がその状態を維持できるよう、それまで炎症があった部分にも薬を塗布します。特別な何かを使ったり、行ったりするのではなく、良い状態を保つために、症状が治まっている部分にもこれまで行ってきた治療を一定期間行うことを言います。
ブリーチバス療法
消毒に用いる次亜塩素酸ナトリウムを一定の濃度入れたお風呂に入浴する「ブリーチバス療法」という治療法もありますが、当院では実施していません。
保険外治療
当院では、保険外の治療はしません。保険内の治療で十分対応できると考えています。
アトピー治療に大切なのは継続
アトピー治療に大切なのは継続です。 そのために、医師は患者さんに中長期的な治療展望を説明する義務があると考えています。子供のアトピーは、医師と共に適切な治療を継続していくことが大切です。
記事監修
神奈川県川崎市・北浜こどもクリニック院長。
1976年生まれ、埼玉県出身。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。2006年からは山王病院の新生児科医長務める。2010年に北浜こどもクリニックを開院。2012年医療法人社団ペルセウス設立。The Japan Times誌の「アジアのリーダー100人」に、2015年から3年連続選出されている
文・構成/HugKum編集部