アトピー性皮膚炎は、「アトピー素因」を持ってうまれた方が、外からの刺激や環境で発症するアレルギーの疾患です。「アトピー素因」は遺伝すると言われていますが、アトピーの遺伝的要素には、どんなものがあるのでしょうか。遺伝や発症の確率はどのくらいなのでしょうか。
「子供に不必要な苦痛や負担を与えない」をモットーに、子供の治療だけでなく日夜頑張るママたちの味方として信頼されている北浜こどもクリニック院長で、カリスマ小児科医の北浜直先生に、子供のアトピーの遺伝についてお話を伺ってきました。
アトピーの遺伝的要素とは
アトピーになる原因は、遺伝によるものです。アトピー素因を持って生まれてくることにより、アトピーを発症する確率が高くなります。
遺伝以外はない。アトピーはアトピーの遺伝子(アトピー素因)を持った人に発症する
アトピー素因を持っているかいないかは、遺伝以外にありません。アトピー素因をを持って生まれた方が、外からの刺激や環境が影響によって発症します。
遺伝子検査でアトピーの遺伝子の有無がわかる?
遺伝子検査でアトピーの遺伝子を持っていることがわかったとしても、その時点での治療法はありません。遺伝子を検査することは、人生設計としては意味があるかもしれませんが、医学的にはさほど意味がないと考えています。当院の場合は、治療方針に結びつかない検査は極力いたしません。
アトピーの遺伝子を持つ人がかかりやすい疾患
アトピー性皮膚炎を発症している人は、アレルギーが原因となる「喘息」「アレルギー性鼻炎」などはかかりやすくなると考えられます。但し、最近はアレルギー検査を行い、数値が出たからといって、すぐに「〇〇アレルギー」と決めつけられてしまう場合があります。また、何らかの症状があった場合、その症状だけを切り取って「〇〇アレルギー」と推測で診断されてしまうこと多いので、注意が必要です。
アトピーが遺伝する確率は?
アトピーが遺伝する確率はわかりませんが、親がアトピーの場合、子供はアトピーになる要素があると思っていた方が良いです。アトピーの発症にはスキンケアが関わってくるので、親がアトピーの子供には「小さい頃からスキンケアをしっかりと行う」という意識を持っていただくと良いと思います。
遺伝しなかった場合も。アトピーの遺伝子を持つ人はどれくらいいる?
日本アトピー協会によると、日本人の30%がアトピー素因を持っているといわれています。子供の診察をしていると、親がアトピーではなく子供がアトピーだというケースは、どちらかというと少ない傾向にあると実感しています。
母親のせい?父親のせい?子供への遺伝の確率は違う?
両親のどちらかが、ないしは両方がアトピー素因を持っていて、いずれかが持っているアトピー素因がより子供に遺伝しやすい、などということは、現段階ではわかりません。
アトピーが発症する確率は?
親が重度のアトピーだったら、子供がアトピーになる確率は上がると思います。例えば、お母さんの肌がちょっと弱いけれど、お父さんの肌は健康だったら、当然確率は低くなると思います。
発症する人の割合はどれくらい?
割合はわかりません。「アトピー素因」を持っていれば発症する確率はあがりますし、持っていても発症しない場合ももちろんあります。
発症に生活環境は関係する?
アトピー素因があって、それに生活環境や外からの刺激で発症に至るわけですから、大いに関係しますね。
アトピーの遺伝子を持っていても発症しない場合も
親が発症していなくても、「アトピー素因」の遺伝子を持っていれば子供が発症する場合もあります。
アトピーを遺伝させないことは可能か?
そもそも親がアトピー素因を持っていない場合は、遺伝しません。アトピーの遺伝は、親がアトピー素因を持っているという前提の話ですが、遺伝させないことができるのかどうかは、遺伝子の問題なのでわかりません。
しかし、アトピー素因を持っていても発症をさせなければよいので、日々のスキンケアをしっかり行うことが大切だと思います。
アトピーの遺伝子治療はできるの?
現段階では治療法はないと思うので、きちんとしたスキンケアを行い、発症させないことが重要です。
アトピーを遺伝させないためにできることってあるの?
アトピー素因を持っていても、大切なのは発症させないことです。発症させないためには、よだれや汗、汚れなどを清潔にし、スキンケアをしっかり行うことが大切です。
赤ちゃんや子供のアトピーは治るのか?
赤ちゃんや子供のアトピーは治るのでしょうか。どのような状態を治るというのでしょうか。
治る・完治ではなく「寛解(かんかい)」
アトピー素因は一生持つものなので、素因が消えることはありません。一年を通して薬も使わず、治療が必要ない状態が続いた場合は、寛解と呼んでも良いと考えています。
大切なのは発症させないこと
アトピーの遺伝については、現段階ではわからないことがたくさんあります。対処法のない遺伝について悩むより、発症させないためのスキンケアをしっかり行いましょう。
記事監修
神奈川県川崎市・北浜こどもクリニック院長。
1976年生まれ、埼玉県出身。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。2006年からは山王病院の新生児科医長務める。2010年に北浜こどもクリニックを開院。2012年医療法人社団ペルセウス設立。The Japan Times誌の「アジアのリーダー100人」に、2015年から3年連続選出されている
文・構成/HugKum編集部