正解がわからない保育園の連絡帳。保護者側の欄には毎回、何を書いたらよいのでしょうか? そこで、連絡帳に対する疑問や不安を現役の保育さんに伺って来ました! 前編では目からウロコの話や子育て中の筆者だから胸アツになった感動話までご紹介します。
「保育園の連絡帳」はどんな風に書けばいい?
多くの保育園では、0歳~2歳児クラスに連絡帳があります。離れている間の我が子の様子がわかるので、読むのが楽しみという保護者の方も多いのではないでしょうか。
お話を伺った先生
小学館アカデミー 茗荷谷保育園
●園長 蓮田淳子先生
保育士歴20年。一般企業で5年勤務後、結婚を機に退社。2人のお子さんは幼稚園に通園させる。5年間の専業主婦を経て、資格を活かし保育士として社会復帰。現在は、長女次女ともに成人されており、お孫さんもいらっしゃるとのこと。
●S先生
保育士歴3年目。現在、0歳児クラスの担任をしており連絡帳歴も3年目。子どもへの愛情が伝わってくる連絡帳を書く先生として園長先生のお墨付き。
保育園の連絡帳の役目とは?
園長先生:連絡帳の役目とは、園と保護者でお子さんを育てるための情報共有ツールだと思っています。園からは‟園での状況”をお伝えしています。というのも、0歳~2歳児のお子さんは、保育園であったことをおうちの方にお話できないでしょうから、連絡帳を通してお子さんの様子や、今日の出来事をお伝えしています。また、保護者の方が書いてくださる「家庭での様子」欄では、保育士は‟家庭の状況”を知ることができます。
保育士に聞いた!連絡帳に書いてほしいこと
連絡帳に書いてほしいことはなんでしょうか?
S先生:お子さんの体調のことですね。お薬を飲んでいるとか、体調が悪いなどは書いておいて頂けるとありがたいです。というのも、お子さんが機嫌が悪いとき、不満があって機嫌が悪いのか、体調が悪くて機嫌が悪いのかによって、保育士の接し方が変わってくるからです。
筆者:そうだったんですね! 私は‟体調が悪い”と書くと、保育園からすぐ帰されてしまう気がして、書きづらい日もあったんです……。
園長先生:あらっ! そんなことがあるのですね。気にかけてあげられるので、書いてくださいね。
あと、食事のメニューって必要ですかね……。素敵なメニューではないと書きづらい日もあります(苦笑)
園長先生:えー!メニュー欄は、どんなものを好んでいるか参考になるんですよ!
筆者: そういうことなんですね。正直に書きます!!
ほかにも、書いておいてほしいことはありますか?
S先生:これをしたら楽しそうにしていた、などのエピソードや今ハマっていることなどを書いていただけると、保育園でもやってみようかなと思います。
筆者:エピソードですね!
園長先生:エピソードを書いて頂くとき、お子さんの話した言葉で書いて頂けると助かります。大人の言葉に置き換えずに。そうすると、保育中にお子さんと話しやすくなるんです。
筆者:なるほど!大人の言葉で書いていたかも、 参考になります。
連絡帳に書くのがNGなことは?
連絡帳に書かないで欲しいことはありますか?
園長先生:ないですよ! 保護者の方が書いてくださることに何も制限はありません。ただ連絡帳は残るものなので、深刻な内容の時はお返事を口答でしたり、お手紙で返事したりすることはあります。手紙なら保護者の方の判断で破棄していただけますし。
例えば、●●くんに押されてケガをしたようです、などお友達の名前を書いてもOKですか?
S先生:はい、大丈夫ですよ! そんなことがあったんだと気づけます。そんなときは、園長先生に相談して対応しています。
園長先生:私は、保育士が記載した連絡帳を全部見ております。また、保育士は、1日の業務が終わったら「保育日誌」を書いて園長へ提出するので、そこから様子を知ることもできます。
園長先生は連絡帳を確認するのですね。保護者に渡す前に、ここは書き直した方が良いのでは?と指導することもあるのですか?
園長先生:ありません。直してしまうと、保護者の方がご覧になったときに、これは本当に担任の●●先生が書いたのかしら?と思うはずです。連絡帳って、保育士の普段の考え方が出るんです。なので、先生によって違っていいと思っています。
筆者:そうなんですね。連絡帳から人となりが出る感じ、なんだかわかります。
筆者が胸アツになった感動した話
親の悩みを書いてもいいのでしょうか?
園長先生:もちろんです!「子どもに強く叱ってしまって…」とか「パパが単身赴任で育児が大変」など、書いてくれると子どもと接する時の参考になります。また「子どもがこんなことをして困ります」という悩みなどは、私達も長い時間預かっているので理解できます。「同じことを園でもしていましたよ、みんなで笑っています」というお返事をし「怒らなくても、笑ったらいいんだ」と思ってもらえればと思っています。育児の苦労も、笑い話にすると、力が抜けて楽しめるものなんです。
筆者:……。(感動して泣きそうになる、その1)
これまでに、びっくりした内容の連絡帳はありましたか?
園長先生:ここの園ではありませんが、真っ黒に塗りつぶした連絡帳を出してこられた方がいました。お母さんのSOSだと感じ「よかったら、お話を聞いてもいいですか?」と声を掛けました。一人で辛さを抱えているお母さんはいるものです。上から偉そうなことを言うつもりはなく、私達も保護者の方に色々と助けてもらっているので、この方が辛いんだったら何か力になれないかな、という気持ちでお声掛けしています。あ、「保育指針(※)」にも、家庭支援は入っているんですよ。(※保育所保育指針解説書 – 厚生労働省)
筆者:……。(感動して泣きそうになる、その2)
先生方は、どんなことに気を付けて連絡帳を書いているのですか?
園長先生:連絡帳は、子どもを見なければ書けませんので、連絡帳を書くために、子どもをもっと見るようになるんです。そうすると、その子その子の好きなことが分かり、次はこうしてあげよう、など思うようになります。そうすると、保育士は保育のねらい(目標)が立てやすくなることもあるんです。
連絡帳は気負わず書いて! 喜びも悩みも共有
今回取材をしてみて、連絡帳は気負いすることなく、子どものことや親のことを自由に書いてよいということが分かりました。また、取材を受けて頂いた先生方は、連絡帳を通して子どもの可愛い姿や成長を共有することを、とても楽しんでおられる様子が印象的でした。後編では、編集部員の実際の連絡帳を先生に見ていただきます。お楽しみに!
文・構成/寒河江尚子 協力/小学館アカデミー保育園