盆踊りの由来を解説
夏になると、日本各地で盆踊り大会が開催されます。浴衣を着て一緒に円になって踊ったり、屋台でごはんを買って食べたり、日本の夏を表す象徴的なひとこまです。盆踊りの音を聞くと、だれでも夏の到来を感じられるものです。ここでは、盆踊りの意味や歴史、さらにその由来についてご紹介していきます。
盆踊りとは
「盆踊り」と聞くと、夏に行われる盆踊り大会のことをイメージする方が多いと思いますが、そもそも盆踊りとはどんなものを意味するのでしょうか?
盆踊りの意味
辞書には、盆踊りについてどんなふうに記述されているでしょうか。「デジタル大辞泉(小学館)」によると、
盂蘭盆 (うらぼん)のころに老若男女が広場などに集まっておどる踊り。本来は盆に迎えた精霊 (しょうりょう)を送り返す行事といわれる
と書かれています。
盆踊りを踊るのはいつ?
「盂蘭盆(うらぼん)」とは、仏教行事のひとつで、いわゆるお盆のことを指します。上述した辞書の記述にあるように、盆踊りはそのお盆の時期に踊るものを言います。
お盆の時期は地域によって違いはありますが、一般的には新暦8月15日を中心とした、盆の入り8月13日から盆明け8月16日までの4日間になります。これは、「月遅れの盆」といわれています。
そのほか、旧暦7月15日(新暦でいうと8月末から9月頭あたり)をお盆とする沖縄地方、新暦7月15日をお盆とする東京、横浜、静岡などの地域もあります。これらはそれぞれ、「旧盆」「新盆」といわれてます。
盆踊りを踊る意味
お盆の時期は、ご先祖様の霊が家に戻ってくる季節のため、その霊を供養する意味があります。お盆になると、仏間に提灯を飾ったり豪華なお供え物をするのも、ご先祖様の霊を迎えるための儀式。そして盆踊りも、亡くなったご先祖様の霊を迎えて供養する意味が込められているのです。
盆踊りのやぐらの意味
盆踊りでは、公園や広場などにやぐらを組んで、そのまわりを踊っていきます。このやぐらには提灯が多数飾られますが、これはご先祖様の霊を迎えるときに使われた火を再現しており、ご先祖様と会話する意味があるのです。
盆踊りの由来と歴史
「盆踊り」は、名前に「盆」が入っているように、お盆に関係する行事として始まりました。盆踊りの由来には、仏教が関係している説などがあります。
仏教の行事だった説
盆踊りはもともと仏教行事だったという説では、念仏を人々に広く覚えてもらうために念仏を音楽にあわせて唱える「念仏踊り」が、「踊り念仏」に発展していったと考えられています。鎌倉時代、一遍上人(いっぺんしょうにん)という人物が全国行脚しながら、多数の人が念仏を唱えながら踊る「踊り念仏」を広めることになったのだとか。この踊り念仏が、やがて 盂蘭盆とむすびつき、盆の時期に踊る「盆踊り」に変化していったと考えられています。
ご先祖様の霊を供養する説
もうひとつの起源に、亡くなったご先祖様や死者の霊魂を供養するというものもあります。日本では古くから、お盆の時期はご先祖様の霊が戻ってくる時期として認識されています。
お盆の行事や風習は地域によってさまざまですが、もっとも一般的な「月遅れの盆」では、ご先祖様の霊が戻ってくる盆の入り8月13日に迎え火を焚き、霊を送り出す盆明け8月16日には送り火を焚くことが有名です。それと同じように、ご先祖様の霊を迎えて供養する行事として、盆踊りも行われてきたといわれています。
娯楽や交流の場である説
また、太鼓や笛の音楽にあわせて踊る盆踊りは、娯楽的な意味もあります。現代のように娯楽がたくさんあるわけではなかった時代、盆踊りは人々の楽しみのひとつで、村の結束を強める役割もあったと考えられます。また地域の人々が集まり、人と交流したり再開したりする場でもあるでしょう。
日本三大盆踊りの特徴
盆踊りにはいくつかの種類があり、特に「日本三大盆踊り」として有名なのが次の3つです。
阿波おどり
かつて「阿波国」と呼ばれた徳島県を発祥とする盆通りが、阿波おどり。400年もの歴史がある、日本を代表する盆踊りのひとつとして広く知られています。阿波おどりの踊り方は時代とともに変化していき、現代では大きくわけて3つのスタイルが主流。荒々しく高く飛んだり激しく蹴り上げたりする「阿呆流」、ゆったりとしたテンポで優美に踊る「娯茶平流」、おおらかで陽気な「のんき流」があります。
西馬音内の盆踊り
秋田県羽後町の西馬音内(にしもない)盆踊りも、日本三大盆踊りのひとつ。独特のカラフルな伝統衣装を身にまとった女性たちが編み笠を手に踊る様子は圧巻。なんと700年以上の歴史がある伝統的な盆踊りです。人口わずか1万4000人ほどの小さな町ですが、盆踊りの時期には3日間だけで10万人以上の観光客が訪れ、町がひときわにぎわいます。
郡上おどり
岐阜県郡上市八幡町で400年以上続く「郡上おどり」は、夜通し徹夜で踊ることで有名。盆踊りの期間は7月中旬から9月上旬と、かなり長い期間行われますが、もっとも盛り上がるのは8月13日から16日までの4日間。この間は夜の8時頃から翌日の朝まで踊り明かします。観光客の飛び入り参加ももちろんOK。疲れたら休憩しながら、とことん踊りまくる楽しさがあります。
多様化する昨今の盆踊り
時代の移り変わりとともに、音楽や踊りが変わってきた盆踊りはもあります。日本三大盆踊りや、盆踊りの定番の曲として有名な「東京音頭」など、民謡にあわせて踊るものもありますが、現代風に変化している盆踊りもあります。
例えば、氷川きよしの楽曲「きよしのズンドコ節」、子どもたちに人気のキャラクター、ドラえもんが登場する「ドラえもん音頭」、荻野目洋子の楽曲「ダンシング・ヒーロー」、ボン・ジョビの「Livin’ On A Prayer 」を流すなど、現代の人々も楽しめる音楽も使われています。
盆踊りの踊り方
盆踊りを踊りたくても、踊り方がわからず参加できない…という方もいるかもしれません。まわりの人を真似しながら、少しずつ始めてみましょう。
「輪踊り」と「流し踊り」
盆踊りはいくつか種類がありますが、一般的なのがやぐらのまわりを踊り手が輪をつくるようにまわりながら踊っていく「輪踊り」。またパレードのように、踊り手が列となって会場を進みながら踊っていくのが「流し踊り」です。徳島県の阿波踊りでは、輪踊りも流し踊りも両方のスタイルがあります。
「右回り」と「左回り」
輪となって踊る輪踊りでは、輪を右回りに進むのか、左回りに進むのかわからなくなるかもしれません。これは踊りの種類ごとに決まっているもので、地域ごとに異なる場合もあります。周囲の人を見て、その方向とあわせて踊るようにしましょう。
地域や種類によって踊り方は違う
盆踊りは各地域ごとに発展してきた歴史があるので、踊り方や楽曲もさまざま。地方ごとにそれぞれのやり方があります。
盆踊りで夏のだいご味を楽しもう
盆踊りは、日本ならではの文化で夏らしさを全身で体験できる行事です。盆踊りが行われていたら、ぜひ恥ずかしがらずに参加して踊ってみましょう。また盆踊り大会が行われなかったとしても、盆踊りの曲をかけて夏のひとときを楽しんでみるのはいかがでしょうか。
あなたにはこちらもおすすめ
文・構成/HugKum編集部