はた こうしろうさん 「チャールズ・M・シュルツに憧れた少年時代」【絵本作家が紹介!私の好きな絵本】

子どもたちが大好きな絵本。その絵本を生み出す絵本作家の方々は、どんな絵本を読んできたのでしょうか?
『なつのいちにち』など、子どもの生き生きした姿をとらえた作品で人気の、絵本作家のはたこうしろうさんに、作品作りの裏話や、幼少期からの絵本との付き合い方について、お話をうかがいました。

チャールズ・M・シュルツの線画の世界に憧れて

簡潔で、省略が効いた絵が好き

子どもの頃、家には児童書が1冊だけありました。それが『エルマーのぼうけん』で、母が何度も読んでくれたこともあり、大好きでしたね。主人公の少年が、冷たい雨の日に老いた野良猫を拾った…という出だしから哀愁があってすごくいい。このモノクロの挿画に感化され、大学を卒業するまでずっと鉛筆画をメインに描いていたくらいです。家にこれしかなかったので、後で3部作だと知って驚いたのですが(笑)。小2の担任の先生が読んでくれた『モチモチの木』も強烈に心に残っています。モチモチの木に火が灯る絵は本当にきらきらと光って見えて、なんてきれいな絵本だろうと思いました。

僕には姉2人と兄が1人いて、7歳上(の)兄は絵がすごくうまくて、スーパーマンみたいな存在だったんです。小2の時にその兄が「ピーナッツ」のコミックを買ってきて、一気に夢中になって。でも好きだったのはスヌーピーよりもライナスやルーシー。もともとアメリカの新聞に連載されていた風刺漫画なのでわからない部分もありつつ、チャールズ・M・シュルツさんの線画の世界がたまらなく好きで、絵を真似たりしていました。

当時も今も、密度の濃い絵よりも簡潔で、省略が効いた絵が好みです。

忘れられない『はせがわくんきらいや』

出会った絵本に衝撃と感動。そしてなりたい自分を決めた

絵本に衝撃を受けたのは中1の時、先生が読んでくれた『はせがわくんきらいや』でした。実際に起きた事件をもとに、障害を持ったはせがわくんと、同級生のやりとりを描いた内容に、 「絵本はこんな表現ができるのか! 子供だけのものじゃないんだ!」と感動して、すぐにじっくり見せてもらいました。あの時にぼんやりとではあるけれど、こういうものを作る人になりたいと思い始めた気がします。

絵は好きで描いていましたが、思うように描けなくて。ところが高校受験が終わった中3の春休み、もう部活もないし暇だからクロッキー帳を1冊買って静物画に挑戦したら、今までと感覚が違った。階段を急に上がったみたいに、見たままに描けたんです。高校時代は和田誠さんにハマり、和田さんのようにイラストも絵本も描けるのはかっこいいなあと思って、イラストレーターになろうと心に決めました。

 

自由に描こうと思わせてくれたレオ・レオニの絵本

久々に読んだ絵本で新しい発見

大学卒業後は文房具の会社にイラストレーターとして就職し、それから独立してフリーのイラストレーターとして6年ほど広告の仕事をしました。とにかく来た仕事は全部引き受けて何でも描いたことが、今の僕の力になっているのは間違いないです。同時に、時代を先取りする広告の仕事は自分に向かないこともよくわかった。これは60歳まではできないなあと悩んでいた頃、「英語で読む日本むかし話絵本」の仕事が舞い込みました。そこで久々に絵本をいろいろ眺めるうちにレオ・レオニの作品と出会い、すごく心に刺さったんですね。中でも『アレクサンダとぜんまいねずみ』は本当に素敵なお話で、線画にこだわらず、自由に絵を描いてみようと思わせてくれた作品でもあります。

 

大好きな自然をテーマに描く

一番好きで知っている自然と生き物を伝えていく役割

絵本作家になってからは、『ピンク、ぺっこん』といった、僕が大好きな自然をテーマにした村上康成さんの作品、『はなのあなのはなし』などユーモアのある柳生弦一郎さんの絵本に惹かれます。中学生になった息子が小さい頃は、よく絵本を一緒に読んでいて。特に『3びきのこぐまさん』は、90年前の作品なのに今見ても新鮮で、 “おぶう “(お風呂)といった今は使わない日本語の響きが、息子に大ウケでした。
絵本を描く際は、伝えるべき主題にどんな言葉、絵がふさわしいかとまず考えます。だから僕は毎回絵のタッチが変わるんです。今後は自然や生き物を題材にした絵本をもっと作りたい。一番好きで知っていることなので、それを伝えていくことはひとつの役割かなと思っています。

はた こうしろうさんのおすすめ絵本

子どもの頃に読んだ絵本

『エルマーのぼうけん』

 

ルース・スタイルス・ガネット(作)ルース・クリスマン・ガネット(絵)

渡辺茂男(訳) 福音館書店 本体1200円+税

どうぶつ島の囚われたりゅうの子の話を聞いたエルマーは、その子を助ける冒険の旅へ。半世紀以上愛されている名作シリーズ1作目。

『モチモチの木』

斎藤隆介(作) 滝平二郎(絵) 岩崎書店 本体1400円+税

豆太には家の前の大木が、夜にはオバケに見えるのだった…。大好きなじさまを助けるため、少年が恐怖心を乗り越えていく感動作。

『はせがわくんきらいや』

長谷川集平(作) 復刊ドットコム 本体1600円+税

体の弱いはせがわくんを「きらいや」と言いつつ受け入れていく同級生を描いた傑作。手書き文字と力強い墨絵にドキッとさせられる。

 

創作に影響を受けた絵本

 

『アレクサンダとぜんまいねずみ』

レオ・レオニ(作) 谷川俊太郎(訳) 好学社 本体1456円+税

持ち主にちやほやされる玩具のねずみがうらやましかったねずみのアレクサンダ。でもある日、その玩具が捨てられているのを知り…。

『ピンク、ぺっこん』

村上康成(作) 徳間書店 本体1300円+税

春に生まれたヤマメの子を主人公に描かれた生き物たちの営み。自然の美しさから厳しさまでを親子で味わえる、村上康成の代表作。

『はなのあなのはなし』

柳生弦一郎(作) 福音館書店 本体900円+税

鼻の穴は何のためにあるの? 身体に関するユニークな絵本で知られる作者が、意外と知らない鼻の役目や機能をわかりやすく解説。

お子さんと一緒に読んだ絵本

『3びきのこぐまさん』

村山籌子(作) 村山知義(絵) 婦人之友社
本体1700円+税

1924年~28年に雑誌「子供之友」に連載。こぐまの兄弟とゆかいな仲間たちがあれやこれやと大活躍する、12編の絵ばなし集。

子どもたちにおすすめの絵本

 

『しりとりのだいすきなおうさま』

中村翔子(作) はたこうしろう(絵)

鈴木出版 本体1200円+税

身の回りにあるものが何でもしりとりに並んでいないと気がすまない王様のお話。子どもが楽しみながら言葉を覚えるのにピッタリ。

『なつのいちにち』

はたこうしろう(作)
偕成社 本体1000円+税

暑い夏の日、クワガタのいる山をめざしてぼくは走った。真っ白な陽射し、草の匂い、ページから溢れ出す夏を体感できる1冊。

 

はたこうしろう
1963年兵庫県生まれ。京都精華大学美術学部卒業。絵本の他、挿画、イラスト、ブックデザインも数多く手がけ、『ちいさなかがくのとも』(福音館書店)のロゴデザインとシリーズ装丁などを担当。著書に『なつのいちにち』(偕成社)、『むしとりにいこうよ!』(ほるぷ出版)、『」クーとマーのおぼえるえほん」』シリーズ(ポプラ社)、『ショコラちゃん』シリーズ、妻・おーなり由子との共著『あかちゃんとのあそびえほん』シリーズ(ともに講談社)など。http://www.koshirohata.net

提供/『おひさま』2017年8/9月号 イラスト/松栄舞子 文/宇田夏苗

 

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