お風呂や温かい飲み物の表面から、湯気が立つことがあります。水分の蒸発に関連して起こる現象だということはなんとなく分かっても、湯気の正体をしっかりと説明できる人は多くありません。ここでは、湯気が立つ理由や同様の現象について解説します。
湯気とは
白く、雲のようにも見える湯気の正体は何なのでしょうか。その秘密を探るために、さまざまな姿に形を変える「水」について考えてみることにします。
三つの形態を持つ水
水は「液体」「気体」「固体」の三つに姿を変えられます。
1気圧の環境では、温度が0~99.974℃までは液体です。水の分子はいくつかが集まって形成しており、それぞれが時には一つの集団になったり、時には崩れたりしながら好き勝手な方向へと動きまわっています。
水が一つの形を作らず液状になっているのは、このような理由です。
液状の水に熱が加わり99.974℃になると、沸騰します。沸騰して水の分子の集団がバラバラに分かれ、分子が激しく空間を飛び回るようになったのが気体の状態です。
反対に熱が奪われ0℃以下になると、分子が運動するための熱エネルギーはとても低くなってしまいます。分子は動きを止め、お互いにくっつき合うことで固体へと姿を変え、氷となるのです。
湯気は液体
水は液体・気体・固体と形を変えるため、「湯気は水が蒸発してできるものだから気体だろう」と考える人がいます。しかし、正解は「液体」です。
水は蒸発して水蒸気になると、空気中に隠れて見えなくなります。暖かい部屋に水を入れたコップを置いておくと、目には見えませんが、水は少しずつ蒸発して少なくなっているのです。
加わる熱が大きければ大きいほど、水はたくさんの水蒸気となって空気中にまぎれていきます。温められて気体となった水は、温度が同じかそれ以上であれば目に見えないままです。ところが、冷やされてしまうと、空気に隠れ続けていられず液体に戻ろうとします。
こうして液体に戻った状態の水が湯気の正体です。
水蒸気は気体
「湯気=水蒸気」と思っている人は少なくありませんが、「湯気は液体、水蒸気は気体」というはっきりとした違いがあります。
沸騰するやかんの口を見ると、勢いよく白い煙のようなものが噴出しているのをよく目にします。このような光景から、湯気と水蒸気はどちらも気体だろうと考えてしまうかもしれません。
しかし、水蒸気は湯気と違い、水が温められて気体となり「空気中に隠れている」状態です。一方、白く目に見えている湯気は空気に隠れているわけではないため液体だと分かります。
ちなみに、近くに水がない場所でも空気中に水蒸気は必ず含まれており、その量によって決まるのが「湿度」です。
湯気の不思議
湯気について考え、メカニズムを知っていくうちに「なぜだろう?」と疑問が浮かぶことがあります。湯気に関する不思議な点について掘り下げてみましょう。
どうして空気に浮くの?
ここまでに、「湯気は液体」だということを説明してきました。しかし、湯気を見ているとフワリと浮いているように見えます。液体ならば下に落ちるはずなのに、なぜ浮くのでしょうか。
いくつもの分子が集まっている液体の水に熱が加わると、分子は一つずつバラバラに離れ、あちこちに飛び回ります。熱が高ければ高いほど、分子のエネルギーは大きくなっていく仕組みです。
その後、気体である水蒸気となって空中に隠れていきますが、バラバラになった分子に勢いがあるため上に向かって進んでいきます。
上昇した状態で急に冷まされると、水蒸気が瞬時に湯気となって白く目に見えるようになります。つまり、気体として上昇している水蒸気が部分的に白い湯気となるため、浮いているように見えるのです。
消えてしまうワケ
空中にただよう湯気は、しばらくすると姿を消してしまいます。なぜ見えなくなってしまうのでしょうか。
気体から液体となった湯気ですが、湯気の粒の表面から徐々に蒸発していきます。蒸発すれば気体となるため、当然目には見えなくなります。
表面から少しずつ蒸発していくと湯気の粒はどんどん小さくなり、最終的には全て水蒸気となって空中に隠れていくので、湯気が消えたように見えるという原理です。
身の回りに起こる同じ現象
白い煙のようなものが見えるという点では、湯気の他にもいくつか同じ現象が起こります。身の回りにある二つの例を、具体的に見てみましょう。
寒い日の息が白くなる
寒い日に呼吸をしたり会話をしたりすると、息が白くなることがあります。なぜこのような現象が起こるのでしょうか。これは、沸騰したやかんの口から湯気交じりの水蒸気が出てくることと同じ理由で説明できます。
口から発せられた温かい息がとても冷たい空気に触れると、大気中にある気化した水が液体に戻ろうとします。そして、空気から隠れていた水が姿を現し、目に見える白い息となるのです。
霧が出る
朝霧はよく晴れた寒い日に出やすいものです。雲が厚いと地表の温度の逃げる場所が限られるため、気温があまり下がらない傾向があります。
一方、よく晴れた日は雲で遮られていないので、熱が広い場所へと逃げていきます。地表の温度が奪われ、特に明け方にとても寒くなる日が訪れるのはこのためです。
気温が低いと、大気中の水は気体から液体へ戻ろうとします。そして、無数の小さな水(水蒸気)が液体へと変わるとき、辺り一面に霧として姿を現すのです。
湯気と水蒸気は似て非なるもの
温かいお風呂の表面から立ちのぼる湯気を見て、「蒸発したものだし、浮いているから気体だろう」と考える人は多いかもしれません。しかし、湯気と水蒸気は似ているようで明確な性質の違いがあります。
液体・気体・固体と姿を変える水の特性を理解して、液体である湯気について確かな知識を備えておきましょう。
文・構成/HugKum編集部