ワイン保存の基礎知識
ワインの保存といえば、ワインセラーですよね。地下セラーなどの最適な環境を保てる設備があれば、もちろん安心ですが、セラーがなければワインのおいしさが保てないわけではありません。コンビニで買うような気楽さで保存できる方法はないのでしょうか。
ごく簡単な基礎知識と一緒に、保存時のポイントをみていきます。
未開封での保存期間
熟成タイプのワインは数年〜数十年の時を経て楽しむものですが、「テーブルワイン」と呼ばれるカジュアルなワインは、長くて10年、多くは2〜3年の保存期限が一般的です。
日光はもちろん、蛍光灯の光でも変質する恐れがあるため、暗い場所での保管が基本とされています。また、コルク栓の乾燥を避けるため、湿度は60〜80%に保ち、振動のない場所での保管が良いとされています。
そんなデリケートなワインの収納は、ご家庭なら床下収納、押入れなどが適しています。
冷蔵庫ではダメなの?
理想的な温度は13〜15℃で、温度差がある場所を避けます。
頻繁な開閉による温度変化がある冷蔵庫は、決して適している環境とはいえません。強いて挙げるなら、野菜室です。ただし、他の食品からの匂い移りを避ける点でも、短期間の保存場所として考えてください。
常温での保存はどうなる?
冬の寒さ、夏の暑さのように、大きな気温変化はダメージを与えますが、気温が安定している季節ならば常温の保存でもかまいません。むしろ、頻繁に温度が変化する冷蔵庫より変化が少ない分、劣化が進まない場合もあります。夏を2回も超えるような長い保存はできませんが、半年程度は常温で保存ができます。
寝かせる? 立てる?
瓶を立てておくとコルクが乾燥して縮み、気がつかないうちに空気が出入りしてしまう場合があります。ワインの酸化が進んで味が大きく変化してしまう原因になりますから、コルク部分をラップで巻き、ボトルを新聞紙で包んでから、横にしておくのが肝心です。
また、ワインによっては、寝かせておくことでも味に深みが増していくものです。一般的には、スクリュー栓であっても寝かせて保存します。
ワインの添加物について
ワインに使用される添加物は、日本の食品衛生法によって規定されており、人体への悪影響は基本的にありません。主要なものは保存料と酸化防止剤です。
保存料
微生物の働きを抑えるソルビン酸は、ワインの再発酵も止める役割も果たしています。使用の最大値が0.2g/kgと決められ、人体への悪影響を防いでいます。
酸化防止剤
ほとんどのワインには亜硫酸塩が使われています。ドライフルーツなどにも使われるもので、酸化を抑え、新鮮な風味を保つために使われます。これがないと茶色っぽく、フレッシュさのないワインになる可能性が高いそうです。
無添加ワインとは
では、酸化防止剤を入れていない無添加のワインはどうやって新鮮さを保っているのでしょうか。醸造の過程で酸化しにくい工程を選ぶことや、瓶詰めの際に炭酸ガスや窒素ガスを充填することで酸素から守るというように、多くの努力によって保たれています。また、ぶどうの品種にも酸化に強いものがあるそうですよ。
開封後の保存方法
開封後のワインは、おいしさが増す場合もあるんですよ。開けてしまったからといって、次の日には飲めなくなるわけではありません。詳しくみていきましょう。
小さな瓶、ペットボトルに移し替えて
瓶に残ったワインが多いほうが、味の変化が少なく、残りの量が少なくなるほど、味が大きく変わっていきます。つまり、瓶の中の空気の量に影響されますから、適切な大きさの瓶に詰め替えることで、変化が少なくなります。できるだけ空気の量を少なくできるように、満杯の状態にしておいてください。
また、容器の素材によっても、デリケートなワインは味に変化があります。ですが、必ずしも味が劣化するわけではなく、味覚に強く感じられる部分が変化する程度です。ペットボトルやガラス瓶などの素材に関わらず、大きさが合う容器を臨機応変に用いて、保存してはいかがでしょうか。
冷蔵庫、または常温も
開封後のワインは基本的には冷蔵庫で保存します。温度が低く保てるため、味の変化は少なくなります。ですが、飲み慣れたいつものワインを常温で保存して、お好みの味になるのを楽しむ分には問題ありません。気温が高い分、味の変化は早く進みますから、おいしいうちに飲む心がけを忘れずに。
赤ワインの保存
酸化が進むことでおいしくなるワインは、グラスを回しながら飲んだり、デキャンタという道具を使って調節しますが、これと同じ効果が数日間は続きますよ。
飲みやすい口当たりのカジュアルなワインは、開封後にも3日程ならおいしく飲めますが、1週間を超えるといたんできます。重めのワインなら1週間程おいしいままです。味の変化が大きくなるのは、10日から2週間後。この期間を過ぎると、別のお酒を飲んでいるような変化に進んでしまいます。
白ワインの冷凍
白ワインの保存は赤ワインと変わりありませんが、白ワインは冷凍もできます。味の変化はあまり感じられません。一方の赤ワインは、含まれる成分の多さから、澱の沈殿やえぐみが強まるなどの変化が生じます。
冷凍する手順は、冷凍用保存袋に詰め、漏れ防止のためにトレイに乗せたり、ビニール袋で二重にしてから冷凍庫へ入れます。または、製氷皿を使ってもいいですね。
解凍は自然解凍で溶かし、冷えた状態で飲むのがおすすめです。暑い日には氷のまま白ワインに浮かべても素敵です。
おいしさを保つためには、1週間程度で早めの消費を心がけてください。
スパークリングワイン
炭酸が含まれているワインを保存する際は、専用の替え栓「シャンパンストッパー」があります。3〜4日はシュワシュワが残ります。
ただし、瓶の中身があまりにも少なければ、炭酸は抜けてしまいます。詰め替えれば対策になりますが、泡の有無は気にせず、味や香りの劣化がないうちに味わうとよいですよ。
ワイン保存のおすすめグッズ
飲み残しのワインの保存は、各国共通の悩みです。様々なグッズが販売されています。
Kloveo シャンパンストッパー
飲み残したシャンパンも、数日間楽しみたい時には必需品です。
iMakim’sシリコン製 ワインストッパー
コルクを開けた後に代用できるキャップがあります。
プライベート・プリザーブ
窒素ガスを充填する方法はご家庭でも簡単にでき、1週間をめどに保存ができます。
劣化したワインの使い道
どうしても飲みきれないまま期限が近づいたワインは、料理に使って楽しみましょう。
ミートソース
ちょっと多めに作って冷凍も可能。パスタはもちろん、他のおかずにリメイクするのにもぴったりです。
◆材料
(大人4人分+子ども4人分)
合いびき肉 400g
【A】
玉ねぎ 1個
セロリ・にんじん 各1/2本
にんにく 1片
赤ワイン 1/4カップ
オリーブ油 大さじ2
【B】
トマトの水煮(ホール) 1缶
水 大さじ4
顆粒スープの素 小さじ2
【C】
ケチャップ 大さじ2
中濃ソース 小さじ1
塩 小さじ1/2
スパゲッティ 300g
※麺は大人2人分+子ども2人分
◆作り方
【1】【A】はみじん切りにする。
【2】鍋にオリーブ油を熱し、【1】を弱火でじっくりと炒める。玉ねぎが透き通っ てきたらひき肉を加え、ほぐすように炒める。
【3】 肉の色が変わったら赤ワインを注ぎ、アルコール分が飛んだら【B】を加え、ヘラでトマトをつぶしながら中弱火で30分煮る。最後に【C】で味を調える。
【4】スパゲッティをゆでて器に盛り、【3】をかける。
教えてくれたのは
島本美由紀さん
料理研究家・ラク家事アドバイザー。 忙しい主婦に向けて、身近な食材でパパッと作れるおいしい時短レシピを考案。テレビや雑誌を中心に活躍。暮らし全般のハッピーもプロデュース。
『ベビーブック』2017年5月号
蒸しパン・りんごのコンポート
ホットケーキミックスにただ「入れる」だけ!簡単に2品ができ上がるお手軽スイーツ。
◆材料
(フライパン26cm)
【A】
ホットケーキミックス 150g
卵 1個
牛乳 1/2カップ
サラダ油 大さじ1
かぼちゃ・さつまいも 各適量
りんご 1個
氷砂糖 1かけら
白ワイン 大さじ1
※材料の分量は、大人4人分(子どもは大人の1/2人分)が目安です。
◆作り方
【1】ボウルに【A】を入れて混ぜ、シリコンカップに流し入れる。
【2】かぼちゃ、さつまいもは、よく洗い皮ごと小さくいちょう切りにする。
【3】【2】を【1】に入れる。
【4】りんごは皮をむいて、食べやすい大きさに切る。
【5】フライパンに【3】を入れ、【4】のりんごと皮を並べ入れ、りんごの上に氷砂糖を置いてワインをふる。水1カ ップを注いで、ふたをし、中火で10分加熱する。
*りんごのコンポートの彩りに、りんごの皮やミントを飾っても。
◆ポイント
野菜は生のままホットケーキミックス生地に入れればOK。りんごは皮も入れて、ほんのりピンク色に仕上げる。
教えてくれたのは
阿部剛子さん
日々の暮らしの中から生まれた炊飯器レシピやフライパン活用レシピを公開して人気。2児のママ。
『ベビーブック』2013年1月号
デリケートなワインでも気楽に保存を
デリケートなワインは産地や種類も多いため、個別で扱いが変わります。そのため、保存方法も一概には言い切れないのが実際です。基本的には、数日間ならおいしさを保てる飲料です。極端な環境は避け、数日のうちに飲み切るようにさえすれば、おうちでのお楽しみ時間を損なうことはないでしょう。毎日の暮らしを彩るお酒として、日々の変化を感じることも、古代から私達を魅了し続けてきたワインの魅力なのかもしれません。
構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)