【お話を伺った先生】
目次
保育園ではどのようなオーラルケアを行うの?
筆者:現在は新型コロナウイルスの感染症対策から、保育園での歯磨きが行えていない園が多いと聞いています。これまでは、どのようなケアを行っていたのでしょうか。
1歳児と2歳児クラスは、食後にお茶を飲むことから
太田看護師:1歳児と2歳児クラスは、昼食の後にお茶で口の中のものをきれいに飲み込むことから始めます。1歳児は、まだ上手にぶくぶくうがいができません。しかし、口の中に食べ物が残っている状態はムシ歯につながるため、お茶を飲んで口の中をきれいにしています。
3~5歳児からは歯ブラシを使って
太田看護師:3~5歳児からは歯ブラシを使って歯磨きを行います。椅子に座って歯を磨き、最後に先生が仕上げ磨きを行っています。
和田先生:私の勤務する園でも3歳児から歯磨きが始まりますが、その学年の様子によってスタート時期を変えています。4月の時点で、まだ歯磨きが難しいかなという時は、看護師の先生と一緒に保健指導を行ったり、絵本を使って歯磨きのお話をしたりしながら、徐々に歯磨きに慣らして行います。
嫌がる子にうまく歯磨きを促す方法は?
筆者:歯磨きを嫌がる子に、保育園ではどのような指導を行っていますか?
声かけや歌を歌いながら
太田看護師:保育園では歯磨きをイヤイヤするお子さまは少ないんです。家と違い、お友達みんながやっているからできるんですよね。
ただ、2歳になる私の子どもはやはり嫌がります。そんな時は「歯を見せて―」と話しかけます。そして、「見えた見えたー」と言うと、得意になって歯を見せようとしてくれるので、その隙に磨いています!
並木先生:私も2歳の息子がいるのですが、やはり歯磨きを嫌がります。我が子は、好きな歌を歌うと口を開けてくれるので、その曲が終わるまでに磨いています。♪歯を磨きましょう シュッシュッシュ―という曲は定番ですよね!
習慣にしてしまうのも手
並木先生:我が家では、お風呂から出たらお茶を飲んで歯を磨く、という流れを習慣にしています。息子がお風呂から出たら、すかさずお茶と歯ブラシを用意。そのうち自分から磨くようになりました!
歯が生えていないうちから習慣をつけるのも◎
伊藤看護師:歯科医の先生に聞いたお話では、歯が生えていないうちからガーゼで口の中を拭いてあげる習慣をつけることで、大きくなってから歯磨きを嫌がらなくなるそうです。
筆者:0歳の時は何もしなくて良いと思っていました!
伊藤看護師:口の中にミルクカスが残っているので、拭いてあげると良いですよ!
歯磨きタイムを楽しく過ごすワザは?
筆者:どうしたら歯磨きが楽しく、好きになってくれるでしょうか。
ママやパパが笑顔で仕上げ磨きを
太田看護師:ママやパパが「しっかり歯磨きをしなきゃ!」と思うばかりに、怖い顔になっていることがあります。余裕の表情で、にこやかに行ってあげるとお子さまも安心しますよ。
和田先生:私は5歳児クラスの担任をしているのですが、ちょうど歯の生え変わりの時期なので、みんな歯が抜けるのを楽しみにしています。その話をすると、「お家でちゃんと磨いているよ!」「ママに仕上げ磨きをしてもらっている」と、話をしてくれます。日常の中で、歯について楽しく会話をすることも大切だと思っています。
保育園での歯磨き指導法を教えて
筆者:歯磨き指導はどんな風に行っていますか?
手作り工作で体験しながら学ぶ
伊藤看護師:私が保健指導の時に使うのは、このワニの模型。
紙コップで歯をつくり、歯の上にはムシばい菌がいます。それを、大きな歯ブラシを使って取り除きながら教えていますよ。
病院では、プレパレーションといって、治療に入る前に、発達に合わせた説明を行うことがあります。歯磨きも同様に、このような模型で楽しく教えてあげることで、「怖くないんだな!」と理解してくれます。お子さまはごっこ遊びが大好きなので、ご自宅でもぬいぐるみなどを使って行ってみると楽しいですよ。
太田看護師:私の園では、歯の絵にラミネートを施して指導しています。
ホワイトボード用のマーカーで歯の間を黒く塗り、歯ブラシでこすると消えるので、どこに汚れが残りやすいかなどを説明しやすいんですよ。
次のページでは歯磨きが楽しくなる【絵本】をご紹介!≫
歯磨きをしたくなる人気の絵本は?
筆者:子どもに、歯磨きへのやる気を起こさせてくれるような本があれば教えてください!
伊藤看護師:『はみがきしましょ』は、歯ブラシが付属でついている仕掛け絵本。ページをめくると動物の歯が磨けるので楽しいですよ。
はみがきしましょ
和田先生:乳児さんは、『はみがきあそび』やのんたんシリーズの『はみがきはーみー』が分かりやすいですよ。幼児クラスで人気があるのは『はははのはなし』。歯が何本も描いてあるページがあるので、お子さま達が歯の数を数えて楽しんでいます。
はみがきあそび
はみがきはーみー
はははのはなし
並木先生:『はみがきれっしゃ しゅっぱつしんこう』は、電車好きのお子さまにオススメです。我が子も電車が好きなので、「しゅっぱつしんこうー」と楽しんでいます。
太田看護師:この本は、小さな子でも分かりやすいので、私も保育の中でよく読んでいます。ムシ歯が怖いから歯を磨く、というよりは、シュッシュッシュッシュという擬音がいっぱいで楽しみながら読める本ですよね。
幼児さん向けに『むしばいっかのおひっこし』も楽しいですよ。この本はムシ歯菌が主人公。歯磨きしない子のところに住み、歯を壊していきます。幼児さんになると「歯を磨かないと大変だ!」と気づいてくれるのではと思います。
はみがきれっしゃ しゅっぱつしんこう
むしばいっかのおひっこし
指しゃぶりをやめさせるには?
筆者:少し話題を変えて、お子さまの指しゃぶりに悩む声も多いのですが、保育園でされていることはありますか?
3~4歳で自然になくなることが多い
太田看護師:心配するママやパパは多くいらっしゃいますが、だいたい3~4歳くらいでなくなってくる印象です。
保育園主導でやめさせることはしていませんが、指しゃぶりは暇な時にするお子さまが多いので、遊びに誘ったり、おもちゃを渡したりしながら、気分が変わるような工夫をしています。絵本では『ゆびたこ』というものがあります。指をしゃぶっていると、たこがどんどん大きくなるというお話。3歳くらいのお子さまは、怖くなってやめるかもしれません。
ゆびたこ
カレンダーの“はなまる”でやる気に!
伊藤看護師:私の娘も指しゃぶりをしていて、なかなか卒業できなかった経験があります。「自然になくなるだろうし、娘の気持ちを尊重しよう!」と思い、待っていたのですが気づけば小学生になってしまって。そこで、指しゃぶりをしようとした時に「ちょっとお手伝いしてくれる?」と声をかけ、気持ちが切り替わるように工夫をしました。また、指しゃぶりをしなかった日に、カレンダーに“はなまる”をつけてあげると、嬉しかったみたいで。それからはどんどん“はなまる”の日が増えていき、卒業することできました。
筆者:叱ったり、強引に辞めさせたりすることなく、子どもの気持ちに寄り添いながら取り組んだ伊藤先生のお話に感動してしまいました。
みなさん、今日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
ママやパパも笑顔で歯磨きタイムを楽しんで!
看護師、保育士の先生達は、子ども達の歯磨きへの恐怖を取り除き、楽しく歯磨き習慣をつけられる工夫をしているのが印象的でした。育児や仕事で疲れている夜。子どもが歯磨きを嫌がった日には疲れも倍増しますが、まずはママやパパが笑顔になり、歌を歌ったり絵本を読んだりしながら楽しく取り組むのが吉ですね!
楽しい絵本もたくさんご紹介いただきましたので、皆さんもぜひ参考にしてみてくださいね!
保育士座談会の過去記事はこちら≪
文・構成/寒河江尚子 協力/小学館アカデミー保育園