内閣総理大臣とは?
内閣総理大臣とは、そもそもどのような存在なのでしょうか。言葉の定義や首相との違いを見ていきましょう。
内閣の最高責任者
内閣総理大臣は、内閣の最高責任者を表す肩書です。
日本では「司法」「立法」「行政」の三つの権力が互いに監視しあう「三権分立」の仕組みを採用しています。三権のうち、行政を担当する機関が「内閣」です。
ニュースで見聞きする「総理」や「総理大臣」という言葉は、全て内閣総理大臣を指しています。また、内閣総理大臣は「首相」と呼ばれることもあります。
首相とは「首席宰相(しゅせきさいしょう)」の略で、国家の行政機関の長のことです。行政機関の名前は国によって異なるため、首相の肩書きもそれぞれ違います。
日本の場合は行政機関が内閣なので、内閣総理大臣が首相ということになるのです。
内閣総理大臣の主な仕事内容
内閣総理大臣にはやるべきことがたくさんあります。仕事の一部を取り上げ、内容を簡単に紹介します。
重要政策の決定
内閣は、各省庁を統括する国務大臣の集まりです。
内閣総理大臣は、他の大臣たちと閣議(内閣の会議)を開き、予算の使いみちや法律の運用など、国の重要政策について話し合います。閣議で決まった政策は、国務大臣が担当の省庁に持ち帰り、実行に移します。
また、閣議決定した政策を国民に広く知らせるため、記者会見を開いて説明するのも内閣総理大臣の仕事です。
会見の様子は、首相官邸ホームページでいつでも見られます。子どもと一緒に、興味のある政策について視聴してみるとよいでしょう。
国会に議案を提出
内閣総理大臣は国会議員の一人でもあるため、立法機関である国会にも出席しなくてはなりません。
内閣が政策を実行するために必要な予算や法律は、議案として国会に提出され、内容を審議することになっています。このため、内閣総理大臣には政策の基本方針や議案の内容を説明し、議員からの質問に答える役目があるのです。
国会での話し合いの様子も、テレビやインターネットで中継されます。どのようなやり取りが行われているのか、実際に見てみると参考になります。
外交を行う
外国と良好な関係を築けるように外交を行うのも、内閣総理大臣の重要な仕事です。日本の代表として各国の首相や大統領と話し合い、世界で起きているさまざまな問題の解決に取り組みます。
ひと口に外交といっても、そのスタイルはさまざまです。国際会議に出席して日本の方針を述べることもあれば、特定の国の代表者と、訪問や電話で話し合うこともあります。
発展途上国や大きな災害が起きた国への支援や条約の締結を決めるのも、内閣総理大臣の役目です。
内閣総理大臣が持つ権限
内閣総理大臣は、行政の責任者としてさまざまな権限を持っています。主な権限と行使するケースについて見ていきましょう。
国務大臣の任命権
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名されます。指名された人が最初にする仕事が「組閣」です。組閣とは、内閣のメンバーである国務大臣を選ぶことです。
内閣総理大臣には国務大臣の任命権が与えられており、自分の判断で人を選べます。国務大臣の過半数は国会議員でなければなりませんが、残りは民間人を起用しても構いません。
また、国務大臣が不祥事を起こしたり、業務を遂行できなかったりした場合は、内閣総理大臣の権限で辞めさせることも可能です。
行政各部を指揮監督
内閣は国会に対して連帯責任を負う立場です。内閣総理大臣はその最高責任者として、国会への議案提出から政策の進捗状況、成果報告までを内閣を代表して行う必要があります。
このため、内閣総理大臣には、行政各部を指揮監督する権限が与えられています。行政各部とは、内閣の下に組織されている省庁のことです。
内閣総理大臣は各省庁の長である国務大臣や長官などに対して、閣議決定に基づいた指示を出し、きちんと遂行されているかを監督します。
自衛隊の出動命令
シビリアンコントロール(文民統制)の観点から、内閣総理大臣には自衛隊の指揮権が与えられています。日本の国土や国民を守るのも、内閣の大切な仕事です。
地震や台風などの災害時や、外部から武力攻撃を受けたとき、または攻撃されるおそれがあるときなどは、内閣総理大臣が先頭に立って対策を検討・指示します。
このため、内閣総理大臣に自衛隊への出動命令を出す権限を与え、必要と判断したときに、すみやかに出動できる体制にしているのです。
基本的に命令を出す際は国会の事前承認が必要ですが、緊急性が認められる場合は承認を得ずに発令することも可能です。
内閣総理大臣の気になる疑問
内閣総理大臣になれる条件や給料など、私たちが知らないことはたくさんあります。子どもからも聞かれそうな、気になる疑問を見ていきましょう。
内閣総理大臣の決め方は?
内閣総理大臣は「内閣総理大臣指名選挙」と呼ばれる、間接選挙によって選ばれます。候補者も投票する人も、私たちが選んだ国会議員です。
ただし、候補者は文民でなければならないと憲法で定められています。文民とは軍人ではない人のことで、日本では現役の自衛官が軍人に該当します。
ほとんどの場合、指名選挙の候補者は各政党の党首です。まずは所属する政党の党首に選ばれることが、内閣総理大臣になる条件といえるでしょう。
投票と指名は、衆議院と参議院で別々に行われます。それぞれで過半数の票を獲得した人が、内閣総理大臣として指名されます。誰も過半数に達しない場合は、上位2名で決選投票を行う決まりです。
両院で違う人が指名されたときは話し合いを実施し、それでも決まらなければ、衆議院で指名された人が内閣総理大臣に決定します。
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年収はどれくらい?
内閣総理大臣の給与は月給制で、年間で4000万円ほど支給されます。大まかな内訳は以下の通りです。
・月給:約200万円
・地域手当:月40万円
・年2回の期末手当:1回につき月給の3~4カ月分
なお、国会議員に支給される月100万円の「調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)」や、寄付・政党からの助成金、講演会の謝礼や著書の印税など、給与以外の収入源も複数あります。
これら全てを含めると、年収は1億円を超えると予想されます。
内閣総理大臣の任期って?
法律では、内閣総理大臣の任期は特に定められていません。ただし、衆議院が解散したり、4年間の任期満了で総選挙が行われたりすると、内閣は総辞職してメンバーを選び直すことになります。
内閣総理大臣もこのタイミングで自動的に任期が終了するので、1回の任期は最長4年間といえます。なお、同じ人物が何度も内閣総理大臣になることは可能です。
初代の伊藤博文をはじめ、桂太郎や佐藤栄作、安倍晋三など、複数回に渡り内閣総理大臣を務めた人はたくさんいます。
政治を動かす内閣総理大臣
内閣総理大臣は行政の最高責任者として、内政だけでなく外交や防衛まで、国の政治に幅広く関わっています。事実上、日本の政治を動かす中心人物といってもよいでしょう。
内閣総理大臣を直接選ぶことはできませんが、候補者となる国会議員を選ぶのは私たち国民です。将来を担う子どもたちにも、選挙でよりよい選択ができるよう、内閣総理大臣の役割や重要性を教えてあげましょう。
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構成・文/HugKum編集部