わが子が「育てにくい」と感じたら、佐々木正美先生の絵本を開こう

佐々木正美先生の名言が、随所に感じられる絵本

とにかくじっとしていられない、食べ物の好き嫌いが激しい、物を投げたり壊したりして暴力的など、わが子に「ちょっと育てにくい……」と感じてしまう瞬間があるかと思います。周りの子がちゃんとしている姿を見せつけられると、いよいよ自分の育児が間違っているのではないかと思って、不安になるかもしれません。こうした育てにくさに直面して途方に暮れてしまったときは、どうすればいいのでしょうか。

そこで今回は昨年他界された佐々木正美先生の絵本『6歳のきみへ』(小学館)から、「わが子が育てにくい」と感じてしまったときに思い出したい先生の名言をいくつか紹介したいと思います。

名言1「いたずらによって、ものを考える力をたくわえている」

子どもは何にでも見境なく手を伸ばし、興味を持って追いかけます。スーパーマーケットに連れて行けば、あっちに走り、こっちに走り。陳列されたトマトをベタベタと触ったと思ったら、商品を覆ったラップフィルムに指を突っ込んで穴を開けてしまいます。

無理やり抱っこをして連れ去ろうとすると、大声でわめいて暴れ回り、身をよじって反抗します。「どうしてうちの子は、こんなにも落ち着きなく、いたずらばかりするのか」と、育てにくさを感じてしまうかもしれませんが、佐々木正美先生によると、持て余してしまうほどの言動やいたずらは、極めて正常な成長のサインなのだとか。むしろ、

<好奇心や知識やものを考える力のもとをたくわえている>

真っ最中なのだと言います。付き合いきれないと怒りを爆発させたくなるかもしれませんが、わが子の学びが着実に進んでいると思えば、いたずらにも多少は寛容でいられるかもしれませんね。

名言2「好き嫌いが強い子どもは、味だけでなく、いろいろな感覚や感受性がとても個性的」

出勤前に保育園に預けたい、夜は早く寝かせたいママからすると、好き嫌いが激しく、思ったように食事を食べない子どもにはイライラしてしまいますよね。

最初は何とか理性を保って、あの手・この手で子どもを導こうとしても、激しい抵抗が続くと、いら立ちも抑えがたくなっていきます。一口、二口しか食べていないのに、「もう食べない」などと言って子どもがさじを投げると、いよいよ「勝手にしなさい!」と堪忍袋の緒が切れてしまうかと思います。

「なんてこの子は、感受性が豊かなのだ」

しかし先生によると、食べ物の好き嫌いの激しさは、感受性の豊かさを意味しているそう。好き嫌いが多い頑固なわが子を前にしたら、「なんてこの子は、感受性が豊かなのだ」と、見方を切り替えられるといいですよね。

見守っているうちに子どもが少しでも口にしたら、できた部分に注目して、「食べられたね。すごいね」と褒めてあげるといいみたいですよ。

名言3「みんな、きょうの喜びのためにあったんだ、ということが、(卒園時と小学校の入学時に)よくわかります」

未就学児を持つママは、わが子が幼稚園や保育園を卒園し、小学校に入学する日を思い描いてみてください。筆者も未満児の子どもが2人居ますが、その子たちが卒園し、小学校に入学をする瞬間には、きっと熱い何かが胸にぐっとこみあげてくると思います。

苦労の数々も、卒園や入園の時に報われる

夜泣きがひどくて睡眠不足が続いたり、好き嫌いが激しくて途方にくれたり、いたずらがすぎて扱いに困ったりした苦労の数々も、子どもが卒園し、小学校に入学する瞬間に、全て報われたと感じられると、佐々木先生は断言しています。子どもがこの先、どれだけ立派な学校に進学したとしても、その感動や喜びは卒園時、小学校の入学時には到底及ばないといいます。

苦悩が大きいほど、きっと感動も大きいはず。そう信じて、今日も子どもと向き合えるといいですね。

 

以上、わが子が育てにくいと感じるママに対して、佐々木正美先生の名言を紹介しましたがいかがでしたか? わんぱくすぎる、天真らんまんすぎるわが子を前に「何なんだ、この子は・・・」と感じてしまう瞬間もあるかもしれませんが、

<気が散りやすく、衝動性がめだち、落ち着きなく、よく動きます。けれどもこの姿こそが、子どもらしい子どもなのです>

と先生は教えてくれています。子育てがつらくなったら、先生の言葉を思い出しながら、少しでも前向きな気持ちになれるといいですね。

【今も心に響く佐々木正美さんの教え】子どもが自立するには「甘え子育て」が必要です
児童精神科医として半世紀以上、子どもの育ちを見続けた佐々木正美先生。ご逝去から1年以上経った今も、先生の残された子育ての著作や言葉はママたち...

『6さいのきみへ』

佐々木正美・著/佐竹美保・絵
小学館
絵本の中身を知りたい方はこちら


教えてくれたのは

佐々木正美|児童精神科医

1935年、群馬県生まれ。新潟大学医学部卒業後、東京大学で精神医学を学び、ブリティッシュ・コロンビア大学で児童精神医学の臨床訓練を受ける。帰国後、国立秩父学園や東京女子医科大学などで多数の臨床に携わる傍ら、全国の保育園、幼稚園、学校、児童相談所などで勉強会、講演会を40年以上続けた。『子どもへのまなざし』(福音館書店)、『育てたように子は育つ——相田みつをいのちのことば』『ひとり親でも子どもは健全に育ちます』(小学館)など著書多数。2017年逝去。半世紀にわたる臨床経験から著したこれら数多くの育児書は、今も多くの母親たちの厚い信頼と支持を得ている。


文/坂本正敬 写真/繁延あづさ

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