「席巻」とは?
ニュースやビジネスシーンでもよく聞く「席巻」という言葉。見聞きしたことはあるものの、詳しい意味を聞かれるとわからない… という方も多いのではないでしょうか。まずは、「席巻」という言葉について、意味や読み方、由来を紹介しましょう。
読み方と意味
「席巻」とは、「せっけん」と読みます。「せっかん」「せきかん」などと間違えて読まないように注意しましょう。
「席巻」は、「席捲」と書くことも可能で、意味は同じです。しかし、広く使われているのは「席巻」のほうでしょう。
「席巻」の意味は、「激しい勢いで、勢力の範囲を広げること」。圧倒的なスピードで勢力を伸ばし、周囲を支配していくようすを表す言葉です。例えば、「新作の映画は、世間を席巻した」などと使い、この場合は「新作の映画は瞬く間に世の中に広まり、人気になった」という意味合いになります。
「席巻」は、「席巻する」「席巻した」「席巻している」などと、「する」と一緒に使われることが多いです。「席巻する」とは、「勢いよく勢力を広げる」という意味になります。
由来・語源
続いて、「席巻」の言葉の由来を見ていきましょう。「席巻」は、中国の歴史書『戦国策(せんごくさく)』に語源があるとされています。
当時、中国の秦は、領土が広大なうえに兵士数も多く、強国でした。その秦について触れた一文が「席(むしろ)を巻くように、領土を獲得していくだろう」というもの。
「席(むしろ)」とは、藁などを編んでつくった敷物のこと。席(むしろ)を片端からくるくると巻いて掌中におさめる様子から、「勢いよく勢力を拡大する」という意味の「席巻」という言葉ができたそうです。
使い方を例文でチェック!
「席巻」の意味がわかったところで、具体的な使い方を見ていきましょう。
「席巻」は、人によっては「ややかたい」という印象を与えることもありますが、ビジネスシーンだけではなく日常生活でも用いることができます。例文を参考に、様々な場面で使ってみてくださいね。
1:A社の画期的な新商品は、市場を席巻している。
「席巻」は、ビジネスシーンでよく使われる言葉です。この例文は、珍しい機能や新しい技術などを携えた新商品が市場に広く知れ渡り、圧倒的シェアを占めているようすを表しています。なお、「席巻する」は、じわじわ浸透するというよりは、急速に浸透するというニュアンスです。
2:80年代を席巻したアイドルの曲が、店内に流れていた。
例文1では、ビジネスシーンにおける例文を紹介しましたが、例文2では日常的な場面で使える例文を紹介します。「80年代を席巻したアイドル」は、80年代に一世を風靡したアイドルということ。昔の曲を街中で耳にすることがありますが、それだけ当時人気を博していたということなのでしょう。
3:『鬼滅の刃』は、漫画市場やアニメ市場だけではなく、映画市場をも席巻している。
子どもだけではなく大人からも人気の『鬼滅の刃』。もともと漫画だったのが、テレビアニメ化され、そして映画化もされました。激しい勢いで人気を集めていくようすは、まさに「席巻」という言葉がぴったりです。
類語や言い換え表現は?
「席巻」の類義語には「一世を風靡する」「もてはやされる」「脚光を浴びる」などがあります。類語や言い換え表現を知っていると、語彙が増えて表現力もアップしますよ。ぜひこれを機会に、類語も一緒に覚えておきましょう。
1:一世を風靡する
「一世を風靡する」の読み方は、「いっせいをふうびする」です。
「一世」とは「その時代」、「風靡」とは風が草木をなびかせるさまから、「広い範囲にわたって、従わせること」という意味。つまり、「一世を風靡する」で、「その時代で、圧倒的に流行ること」を表すのです。「その歌手は一世を風靡した」などと使われます。
2:もてはやされる
「もてはやす」とは、「多くの人が話題にあげる」「多いに褒める」という意味。「もてはやされる」とは、「もてはやす」の受け身形ですので、「多くの人から賞賛されること」「話題になるほど広く知れ渡っているさま」を表します。
「席巻」も、多くの人が話題にあげるほど、広い範囲に勢力をふるっている状態といえますので、似たニュアンスで使えそうですね。
3:脚光を浴びる
「脚光を浴びる」は、「きゃっこうをあびる」と読みます。言葉の意味は、「世の中の注目の的になる」。世間の注目を集めているようすが「席巻」と似ていますね。例えば、「最年少プロゴルファーとして、脚光を浴びた」などと使われます。
英語表現は?
「席巻する」を英語で表現したい場合、「sweep」や「take〜by storm」が使えます。それぞれの英語の意味や使い方を紹介しますので、海外の方とやり取りする際に役立ててくださいね。
1:sweep
「sweep」は、「掃く」「さっと動く」「押し流す」などの意味を持つ単語です。「sweep over the whole of Europe」で、「ヨーロッパ中を席巻する」という意味になります。
2:take〜by storm
「take 〜 by storm」は、「〜を席巻する」という意味のフレーズです。「〜」の部分には、例えば「world(世界)」「Japan(日本)」など、場所を表す言葉を入れて使いましょう。「That singer took the world by storm.」で、「あの歌手は世界を席巻した」という意味になります。
「席巻」と「圧巻」の違いは?
「席巻」と、似ている言葉に「圧巻」があります。「圧巻」の読み方は「あっかん」で、意味は「物事の中のもっとも優れた部分」です。「席巻」の意味は、「激しい勢いで、勢力の範囲を広げること」ですので、「圧巻」とは意味が異なります。
両方とも、漢字の「巻」が使われているので、間違えて使う人もいますが、類語でもありませんので、混同しないように注意しましょう。
最後に
「激しい勢いで、勢力の範囲を広げること」という意味の「席巻」について、言葉の意味から英語表現、由来まで解説しました。
語源となった「巻物をくるくる巻いていくようす」を頭の中でイメージすると、「席巻」という言葉が持つニュアンスをより理解できるでしょう。ビジネスシーンから日常生活まで広く使える言葉ですので、意味を覚えたらぜひ積極的に使ってみてください。
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構成・文/結野雅美(京都メディアライン)