「高を括る」とは?
芥川龍之介の有名な小説『羅生門』にも登場する「高を括る」という言葉。なんとなく意味は知っていても、正しい意味を聞かれたら、自信を持って答えられないという方も多いはず。まずは、「高を括る」の意味や、語源を解説していきます。
読み方と意味
「高を括る」とは「たかをくくる」と読みます。意味は、「見くびる」「程度を甘く見る」です。相手の力量や、物事の程度をざっくりと見積もり、「どうせ、たいしたことないだろう」と侮ることをさします。このように、「高を括る」は、相手のことを見下すというネガティブなニュアンスが含まれる言葉です。
そもそも、「高を括る」の「高」とは何なのか、気になったことはないでしょうか? この「高」とは、「残高」や「収穫高」などと使われるように、金額や物の見積もりをあらわす言葉。また、「括る」とは、「予測する」「まとめる」の意味です。この2つの言葉をあわせて、「物事の程度を見積もる」という意味になります。
由来・語源
「高を括る」のもともとの語源は、お米の生産高からきているといわれています。昔の日本では、その土地の生産力を、お米の量であらわしていました。これを「石高(こくだか)」と言います。
この「石高」の量によって、国の規模を判断し、さらには相手の兵力までも予想していたのだとか。「石高」を低く見積もり、相手のことを見くびってしまったために、戦に負けることを「高を括る」と言うようになったそうです。
使い方を例文でチェック!
「高を括る」の意味を理解したところで、どのように使えばいいのか例文を見ていきましょう。日常生活でも使える表現ばかりですので、覚えたらぜひ、すぐにでも使ってみてください。
1:高を括って油断していると、失敗するよ。
「高を括っている」と、物事を甘く見ているために失敗する羽目になることが多いです。そうした結果にならないよう、教訓の意味を込めて使うのにぴったりな言葉ですね。
2:得意科目だからといって、高を括るのはよくない。
「高を括る」は、物事を甘く見ている相手のことを非難したり、戒めたりする気持ちを込めて使えます。この例文では、「得意科目だからといって安心していると、テストで赤点をとるよ」ということを言っていますね。
3:大丈夫だろうと高を括っていたら、試合に負けてしまった。
「高を括る」は、自分の行いとしても使える言葉です。物事の程度を甘く見積もってしまったため失敗したときや、痛い目にあったときに使ってみましょう。例文を見ると、簡単に勝てる相手だと思って油断していたせいか、予想外に負けてしまい、後悔しているようすがうかがえます。
類語や言い換え表現とは?
続いて、「高を括る」の類語を紹介します。それぞれ例文も紹介しますので、参考にしてみてください。
1:侮る
「侮る」とは「あなどる」と読みます。意味は、「軽く見てバカにする」「相手のことを下に見る」などです。「物事や相手のことを軽く見るな」という教訓の気持ちを込めて、「侮るなかれ」という使い方もされます。「侮る」も、「高を括る」と同様に、相手を見下すという否定的なニュアンスを含むので、類語として使えるでしょう。
例文:子どもだと思って、侮るなかれ。
2:蔑む
「蔑む」の読み方は「さげすむ」。「他人を自分より価値が低いものと見下す」という意味です。相手の能力が自分より劣っている、価値が低いとみなす際に使われます。「蔑む」の語源は、「下げ墨(さげすみ)」。「下げ墨」とは、「墨縄をつり下げて、柱などの傾きを調べること」「推し量ること」という意味。この言葉が転じて、「蔑む」という言葉が生まれたのだそうです。
例文:他人を蔑むような言葉を使う先輩は、後輩から敬遠されている。
3:軽んじる
「軽んじる」とは、「価値があるものとして見ない」「大切に考えない」という意味です。現代では、「軽んじる」のほうがよく使われますが、「軽んずる」とも言います。ちなみに、「軽んじる」の反対の言葉は「重んじる」で、「価値のあるものとして見る」「尊重する」という意味です。
例文:約束を軽んじてばかりいると、友達を失ってしまうよ。
対義語は?
「高を括る」の対義語にあたる表現には、「買い被る」「過大評価する」「敬う」などがあります。それぞれ意味を見ていきましょう。
1:買い被る
「買い被る(かいかぶる)」とは、「実際の価値よりも高く購入する」「人のことを実際以上に高く評価する」という意味です。もともと前者の意味で使われていたのが、やがて「ある人物のことを実際の能力以上に評価する」という意味で使われるようになりました。
例文:ポテンシャルに期待して重要な仕事を任せたが、買い被っていたようだ。
2:過大評価する
「過大評価」の読み方は「かだいひょうか」。「過大評価する」で、「物事を実際よりも高く評価する」という意味になります。「大きすぎること」という意味の「過大」と、「物事の価格や価値を見定めること」という意味の「評価」をあわせて成り立っている言葉です。
例文:Aさんは自分のことを過大評価している。
3:敬う
「敬う(うやまう)」とは、「尊敬する」「相手のことを尊いものとして大切に扱う」といった意味を持ちます。いっぽう「高を括る」は相手のことを見下し、粗雑に扱っているさまをあらわす言葉ですから、相手のことを大切に扱うという意味の「敬う」は、まさに反対の言葉といえるでしょう。
例文:対戦相手を敬うことは、スポーツマンシップに欠かせない要素だ。
英語表現は?
「高を括る」とは日本語独特の言い回しですが、英語で言いたい場合には、「見下す」や「見くびる」などの意味を持つ英語を使ってみるといいでしょう。
1:look down on
「look down on」とは、「見下ろす」という意味のほか、「人を見下す」「軽蔑する」という意味も持ちます。ちなみに、反対の意味の「尊敬する」は、「look up to」です。
例文:Don’t look down on him.(彼のことを見下すな)
2:underrate
「underrate」とは、「見くびる」「過小評価する」という意味の英語です。人や能力、物事などに対して使われます。
例文:He underrated the difficulty of the task.(彼は仕事の難しさを見くびっていた)
最後に
「見くびる」「程度を甘く見る」という意味の「高を括る」。物事や相手のことを軽く見ていると、痛い目にあいかねません。何事もしっかりと準備をしたり、正しく見定めたりして、失敗しないように注意したいものですね。
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構成・文/結野雅美(京都メディアライン)