春・夏の甲子園の特徴とは
春の甲子園・夏の甲子園は、どちらも高校野球の全国大会の通称です。まずは、それぞれの大会の特徴をおさらいしましょう。
「春」の甲子園
春の甲子園は、1924(大正13)年に毎日新聞社の主催で始まった野球大会です。正式名称は「選抜高等学校野球大会」ですが、開催当初は学校の制度が現在とは異なっていたため、「選抜中等学校野球大会」と呼ばれていました。
なお、第1回大会の会場は甲子園球場ではなく、愛知県名古屋市の「山本球場」です。山本球場は後に「JR東海八事(やごと)球場」となって社会人野球に使われましたが、1990年(平成2年)に閉鎖されています。
第2回以降は甲子園球場に舞台を移し、1942~46年(昭和17~21年)の戦争による中止を挟みつつも、2023年(令和5年)に第95回を迎えます。第95回大会の開催日は、3月18日(土)から14日間の予定です。
参考:第95回記念選抜高等学校野球大会|公益財団法人日本高等学校野球連盟
「夏」の甲子園
夏の甲子園の正式名称は「全国高等学校野球選手権大会」です。春の甲子園よりも早い1915(大正4)年に、朝日新聞社の主催で始まりました。開催当時は「全国中等学校優勝野球大会」と呼ばれており、第1回大会には10校が参加しています。
このときはまだ甲子園球場が存在せず、大阪の「豊中グラウンド」が会場でした。しかし、高校野球は大変人気があったため、豊中グラウンドでは観客を収容しきれなくなります。
第3回大会からは約6,000人を収容できる兵庫県西宮の鳴尾(なるお)球場に移りますが、それでも足りず、新たな会場として甲子園球場の建設が決まったといわれています。
2023年に第105回を迎える夏の甲子園は、8月6日(日)から17日間の日程で開催される予定です。
参考:第105回全国高等学校野球選手権記念大会|公益財団法人日本高等学校野球連盟
大きな違いは出場校の決め方
春・夏甲子園の大きな違いは、出場校の決定方法にあります。どのように決まるのか、仕組みを紹介します。
春の甲子園は「選抜」
野球に限らず、全国大会は地方予選を勝ち抜いた団体や個人が出場するのが一般的ですが、春の甲子園には地区予選はありません。前年秋の地区大会の成績や地域的バランスを考慮し、選考委員会が出場校を決める「選抜」方式です。そのため、春の甲子園は「センバツ」とも呼ばれます。
まず、北海道・東北・関東・東京・北信越・東海・近畿・中国・四国・九州の10地区から28校が選ばれ、「21世紀枠」「明治神宮枠」で選ばれた4校をプラスした、計32校が出場することになります。北海道と東京を除けば1校も出場しない府県がある一方、一つの府県から複数校が選ばれる可能性もあるのです。
なお、春の甲子園では5年に1度「記念大会」があり、出場枠が四つ増えます。第95回の2023年は記念大会の年にあたるため、36校が出場します。ちなみに、春の選抜優勝回数の多い学校は、愛知県・東邦高校、愛知県・中京大中京高校、大阪府・大阪桐蔭高校と強豪校ぞろいです。
選抜枠には「21世紀枠」「明治神宮枠」も
「21世紀枠」はその名の通り、2001年(平成13年)に導入された選抜基準です。原則として、前年秋季の都道府県大会でベスト16(加盟校が129校以上の大会はベスト32)に入った学校のなかから、以下のような基準をもとに選びます。
●部員が少ない、設備が整っていないなど困難な練習環境を克服した
●ボランティア活動や地域貢献などが評価されている
「明治神宮枠」は、毎年秋に開催される「明治神宮野球大会」の優勝校を出した地区に、選抜枠を一つ割り当てる制度です。2003年(平成15年)に始まり、2023年大会での一枠は、大阪桐蔭高校の優勝により近畿地区が獲得しています。
夏の甲子園は「トーナメント戦」
夏の甲子園に出場できるのは、都道府県予選大会の優勝校です。ただし、北海道は南北、東京は東西で予選が分かれているため、都道府県数の47に2を足した49校が出場することになります。
夏の甲子園優勝回数の多い学校は、愛知県・中京大中京高校、広島県・広島商業高校、愛媛県・松山商業高校の順です。
予選は本大会と同じく、負けたら終わりのトーナメント戦です。厳しい予選を勝ち抜いた出場校は、まさに各都道府県の代表校といえるでしょう。47都道府県それぞれから出場するので、自分の出身地や居住地の代表を応援するなど、見る側にも熱が入ります。
春・夏の甲子園、その他の違いとは
春・夏の甲子園には、ほかにも違う部分があります。知っていると観戦がより楽しくなる豆知識を紹介します。
優勝校が持つ旗の違い
優勝校の選手たちが優勝旗を受け取るシーンは、春・夏ともに大会のクライマックスです。優勝旗の色は春と夏とで異なっており、春は「紫紺の大旗」、夏は「深紅の大優勝旗」と呼ばれています。春の甲子園には、夏には存在しない準優勝旗もあります。
なお、現在使用されている夏の優勝旗は、第100回の記念大会となった2018年(平成30年)に、60年ぶりに新調されたものです。先代優勝旗と同じ西陣織の「つづれ織り」の技術を使い、約1年半かけて完成しました。
入場にも違いがたくさん
開会式の様子も、春と夏とで違っています。特に選手が入場するシーンは大きく異なるため、注目するとよいでしょう。
主な違いは以下の2点です。
●入場行進曲
●プラカードを持つ人
入場行進のときの曲は、夏では必ず「大会行進曲」を使います。一方の春では、前年のヒット曲や話題曲のなかから選ばれます。2023年の入場行進曲は、back numberの「アイラブユー」です。
また、夏では甲子園の地元にある西宮市立西宮高校の女子生徒がプラカードを持ちますが、春は出場校の生徒が担当します。例年、野球部のマネージャーや控え部員、生徒会長などが登場するケースが多いようです。
高校球児たちの熱い戦いを楽しもう
春と夏の甲子園はどちらも、多くの選手にとって、一生に一度あるかないかの大舞台です。負けて悔し涙を流す選手も多く、応援する側もつい感情移入してしまいます。
この機会にそれぞれの大会の違いを知り、高校球児の情熱や名プレーを堪能しましょう。
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構成・文/HugKum編集部