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難所は単位あたりの大きさや割合を分数で考えること
「単位あたりの大きさ」がさらに複雑になる6年生算数
ここまで5回にわたって学年末の振り返りポイントをお伝えしてきましたが、最後に6年生です。
6年生算数の難所はずばり「分数」。特に分数で割合を考えるときにつまずく子どもが多くいます。なぜだと思いますか? 実は、「分数」はもともと割り算を表したもの。例えば「1/2」は「1÷2」、つまり全体を1としたとき二つに分けた数です。それをあたかもひとつの数のように扱うからややこしい。分数を使った割り算は「割り算を表した分数を使ってさらに割り算?」と混乱してしまいます。
具体的に問題を解いてみましょう。
単位あたりの大きさの考え方は下記のとおりです。出てくるたびにしつこく確認しましょう。
単位あたりの大きさは、
「もとになる数(量)」÷「いくつぶん」=「ひとつぶん(=単位あたりの大きさ)」
という割り算の基本的な考え方で求めることができましたよね。そして、上の問題を仮に、「12㎡」を「2dL」でぬれるペンキだとすると、「1dLあたりにぬれる広さ」は「ひとつぶん」にあたるわけですから、
「ぬれる広さ」÷「ペンキの量」=「1dLあたりにぬれる広さ」
となります。整数で考えれば簡単なのに分数になると途端に知識の引き出しがびくともしないことも出てきます。それは、そもそもの割り算の性質を完全に身につけていなかったということになります。しくみや意味を考える習慣は、知識をつなげて引き出しやすくするための潤滑油のようなもの。ここを確実にする方が算数は簡単になりますよ。
「比」は割合を表す方法の一つ
割り算を表す方法には、分数以外に6年生で学ぶ「比」もあります。「比」は「割合」を表す方法の一つで、もともとの量の大きさを切り離して2つの数量の割合を考えます。例えばある長方形を「縦は横の40%」と言うより「縦と横の長さの比は2:5」と言ったほうがわかりやすいですよね。2つの量の関係が簡単に表せる反面、抽象度は高くなります。
では下の問題を見てみましょう。
この問題は全体を決まった比に分ける問題です。ゆいさんと弟が「3:2」ということは、ゆいさんの分は「1mを5つに分けた3つ分、つまり3/5」、弟は「1mを5つに分けた2つ分、つまり2/5」ですね。
詳しい式を書くと以下のようになります。
100÷5×3=60 …… 1mを5つに分けた3つ分
100÷5×2=40 …… 1mを5つに分けた2つ分
分数で表すと、
100×3/5=60 …… 1mを5つに分けた3つ分
100×2/5=40 …… 1mを5つに分けた3つ分
となります。式の意味は見えていますか? 比は割合なので、やや混乱気味の子どももいるかもしれませんが、問題や式をかみ砕いて考えるうちに解けるようになります。
図形「円」「比例・反比例」に出てくる「決まった数」が重要な訳
6年生の図形では「円」が出てきます。円周率が「3.14」ということで、必死に計算をしながら面積を出していた、という親世代も多いかと思います。
また、円の性質や面積のあとに「比例と反比例」という単元が登場します。「一方の値が2倍、3倍……となると、もう一方の値も2倍、3倍……になるのが比例」、「ある数が2倍、3倍……になったとき、もう一方の数は1/2倍、1/3倍……になる関係は反比例」と言います。
「決まった数」は中学関数で「定数」になる
このふたつの単元にはある共通のキーワードが隠れています。それは「定数」。定数は、小学生のときには「決まった数」と呼びますが、中学の関数につながる重要なワードなので気に留めておくといいですね。
円の場合は円周率が「決まった数」。円というとおうぎ形や複合図形の面積を出すことに目が行きがちですが、定数のような抽象度の高い考えが出てくるのは、少しずつ中学校数学の準備をしているからなのです。学校が変わってもやはり算数の世界は途切れることなくつながっていくことを知っておいてほしいと思います。
小学生算数は「割合」「図形」の知識を体系的に身につけようとしている
各学年の算数の振り返り、いかがでしたでしょうか。結局小学生算数とは「割合」「図形」の知識を体系的に身につけようとしている教科だということが分かったと思います。
子どもが算数を苦手なのは、前の学年で学んだ知識がつながることを知らずに、どの単元もそこで完結すると勘違いしているところに原因があるから。5~6年生は一気に難しくなりますが、各学年のどこがつながっていくのかを意識するだけでも単元のハードルが下がります。その意味でも各学年の振り返りはとても大切なので、ぜひお子さんの声を引き出しながら確認してみてください。