目次
3~4年の知識があやふやだと、5~6年の算数はより難しくなってしまう
ついこの間までスラスラと解けていたのに、急に難しく感じる高学年の算数。割合や速さといった難しい単元が出てきて理解が追い付かなかったり、わからないところをそのままにして苦手意識が強くなったり。さらにこの時期は思春期の入り口ということも相まって、親子で振り返ることが難しく感じられるかもしれません。そんな状況でも確認できる、ちょっとした振り返りのコツや、苦手克服ポイントを見てみましょう。
3~4年生の「割合」につながる単元を思い出せるかな?
3年生の振り返りの記事では「3年生で学んだ割り算が5年生の割合につながっていく」とお伝えしました。割り算は四則計算の一つですが、文章題では2種類の問題が出てきます。それは「均等に分ける問題」と「全体の中にひとつあたりの数がいくつ含まれているかを考える問題」。まずここをしっかり思い出せるかどうか、とても大事なポイントです。
次に4年生の単元で割合につながる箇所についてです。ここでは「倍の考え方」が割合に直結することを見てきました。
子どもの頭から落ちているな、と思ったら3~4年生の「割り算」や「倍の数」を軽く振り返っておくと安心です。前回の3~4年生の振り返り記事を参照してみてください。
「単位あたりの大きさ」は割合の地固め的単元
「ひとつあたりの大きさから」「単位あたりの大きさ」へシフトチェンジ
それでは5年生の算数を見ていきましょう。割合につながっていく単元でまず取り組むのが「単位あたりの大きさ」です。3年生で出てきた「ひとつあたりの大きさ」は、「1個あたり」「1㎡あたり」のような「単位あたりの大きさ」で解く問題になり、込み具合や人口密度などを解いていきます。
まずは下の問題を見て見ましょう。
これは「込み具合」の問題です。上の式は「1㎡あたりの人数」を出していて、(A)は1㎡あたり0.0625人、(B)は1㎡あたり0.056人。(A)のほうが(B)より人数が多いので「(A)のほうが混んでいる」と言えます。
数の意味や式の意味は子どもの口から出てくることが大事
ここで大事なのは、式の中の数字が何を表しているのかを言えること。「『25÷400』の『25』って何の数?」と聞いたとき子どもは「(A)の場所にいる人数」、「400」なら「(A)の場所の広さ」と答えられるでしょうか。ここからスタートして、「25人を400㎡で割れば、1㎡あたりの人数が出る」と式の意味まで言えたら考え方の確認はパーフェクト。
とはいえ突然聞いたり、詰問調になると子どももムッとする年頃なので、「これ解いてみなさい」という指示ではなく「これってどうやって解くんだっけ、お母さんわからなくなっちゃったからちょっと教えて」のような空気感がおすすめです。「答えが合っているかより、問題をどう考えたか、どう式を立てたか」を確認するのが目的、と頭の隅においてくださいね。
「単位あたり」の「単位」を変えても式が立てられる?
ところで、上の問題では「1㎡あたりの人数」で出しましたが、「一人あたりの広さ」を出すことでも求められます。答えを一つ出したら終わりではなく、「ほかの考え方はあるかな?」と聞いて別の式にもチャレンジしてほしいと思います。「単位あたりの色々な考え方を使えると思えることも大切ですし、その体験は成長する中で「物事にはいろいろな見方がある」と知る機会にもなります。算数って奥が深いですよね。
ちなみに、上の問題を「一人あたりの広さ」で比べる場合は、
(A)400÷25=16 一人あたり16㎡
(B)500÷28=17.857…… 一人あたり17.857㎡
となります。つまり(A)の方が一人あたりの広さが狭いので、こっちの方法で考えても「(A)の方が混んでいる」となります。
このように単位あたりの大きさは、何の単位をもとにするかによって式が変わります。「この数の意味って何かな?」「何を求めるの?」「どの単位あたりの大きさを出すの?」など声をかけて、言葉に詰まったら問題文をたどって「ガソリン1Lあたりの距離を出すんだよ」などのヒントを出したり、数字替え問題で解き慣れるよう促してみてください。
実は「速さ」も単位あたりの大きさを考える単元
公式の丸覚えより、意味を覚えた方が解きやすい
さぁ、いよいよ「速さ」です。「速さ」といえば「距離÷時間=速さ」という公式を懸命に覚えるイメージがありますが、実は「単位あたりの大きさ」を求める単元です。時間には「1時間」「1分」「1秒」という単位があり、それぞれの単位あたりの大きさを考えます。整理すると以下のようになります。
●1時間あたりに進む道のりは「時速」
●1分間あたりに進む道のりは「分速」
●1秒間あたりに進む道のりは「秒速」
こう見ると「単位あたりの大きさ」だということがお分かりいただけると思います。文章題のときも、覚えている公式に当てはめるより「(進んだ距離)を(かかった時間)で割ると1時間あたりに進む距離が出る。これが速さ」と基本の意味が頭に入っているかどうかが肝心です。
公式は便利ですが、何を求めるかが少し複雑になったときに式が浮かばなくなる子どもが多くいます。でも意味が入っている子は、そうした混乱は逆に少ないのです。「速さ」は、じっくり考えることを優先していい単元。どうしても時間内に解くことが気になりますが、スピードはあとから上げられるので、はじめから「速く解くこと」を子どもに課さなくてもいいのでは、と思います。
では、速さの問題を考えてみましょう。
いちばん速い動物を探す問題です。黒板では「1分あたり進む距離」から一番速い動物を見つけようとしています。ここではいぬが1分あたり225m進むことから、いちばん速いのはいぬと分かりますね。
ではこちらの問題はどうでしょう。
これは距離を求める問題です。「1時間あたりに進む距離」が4kmだから3時間歩くなら……と考えると上の式になりますね。
「時速4kmで散歩をしているAくんが3時間歩き続けました」は言い換えると下のような式の意味になります。
速さ × 時間 = 距離
(ひとつ分) × (いくつ分)
1~2年生のかけ算の振り返りにも出てきましたが、これはかけ算のそもそもの意味になります。「速さ×時間=距離」と覚えてなくてもかけ算の基本の考え「ひとつ分×いくつ分」が分かれば解けますよね。だから数や式の意味のほうを言えることが大事になります。大事というか簡単になると言ってもいいかもしれません。
問題、数の意味、式を言いたくなる声かけとは?
もし、式がうまく言えない場合は下の三つの声かけを参考に、単位あたりの数、速さ、割合、百分率、濃度などの出し方を説明できるか見てあげてください。
「この問題は何を考える問題なの?」
「この数って何の数?」
「式の意味教えて」
「子どもは速さが苦手」と分かっていたら、春休みに基本的な問題、よく間違える苦手な問題を1問ずつ、先の声かけで一緒に伴走しながら解かせてみてください。部分的にでも言えたなら「そこはわかってるんだね。いいね。じゃ、こっちはどうだろう」と伝えて、考える過程を肯定しながら進めてみましょう。わからない子どもと一緒に進めるのはイライラしますが、わかっているところをほめていると伴走しているこっちも少し落ち着きます。答えが出なくても式が言えたらOKなので、ぜひやってみてください。
割合を考える基本は割り算、かけ算
「比べる数(量)」「もとになる数(量)」「割合」の意味を確認しよう
さぁ、いよいよ小学生算数の最大難所、「割合」です。これまで低学年から割合につながる知識をつなげることを意識しながら解説してきたので、割合に向けて何を準備してきたのか、頭の隅に残っているといいなと思っています。その一番大きなキーワードをこれまでの言葉で言うと、「ひとつあたりの数」「単位あたりの量」になります。これが割合では「もとになる数(量)」と呼ぶようになります。
言葉は変わると何か全く別世界のような気がするかもしれませんが、基本的にはこれまでさんざんやってきた「全体の中にひとつ分がいくつあるのか」という割り算の考え方を使います。何を問うかによってはかけ算も使いますが、基本の考えは「もとになる数(量)」×「いくつ分」。これまで習った知識を使って新しい考え方を学ぶのが算数、と何度もお伝えしてきましたが、割合は特に割り算の感覚が重要になってきます。
難しさの先入観を捨てて考えてみよう
「そうは言っても割合は難しいのでは」と思うかもしれませんが、これまで読んでくださった方は「問題の意味に合った式を立てる」ことが公式より大事ということが分かっていると思います。考え方が見えさえすれば式が立つ――繰り返しになりますが、そこを踏まえて次の基本問題を考えてみましょう。
割合の根本の意味を整理しよう
そもそも「割合」は、ある量をもとにして、くらべる数(量)はもとにする数(量)の何倍なのかを表した数です。
割り算の単元の言葉で言い換えると、くらべる数(量)にもとになる数(量)がいくつ分入っているのか(何倍か)を考える問題で、式の意味は、
くらべる数(量)÷もとにする数(量)=割合
となります。振り返りの最大のポイントは、問題の中から「どれがくらべる数(量)」で「どれがもとにする数(量)」なのかを言えること。「単位あたりの量」「速さ」でもお伝えしましたが、数の意味を言えるかどうか、上の問題1、問題2それぞれの「くらべる数(量)」「もとにする数(量)」が何にあたるか、お子さんにぜひ聞いてみてください。
【問題1の考え方と答え】
「くらべる数(量)」……音楽クラブの人数30人
「もとにする数(量)」……クラスの人数40人
※この二つを言えたらばっちりです! あとは計算をするだけ。
(音楽クラブ30人)÷(クラスの人数40人)=割合
30÷40=0.75 答え 0.75倍
【問題2の考え方と答え】
「くらべる数(量)」……音楽クラブの人数30人
「もとにする数(量)」……科学クラブの人数10人
※この二つを言えたらばっちりです! あとは計算をするだけ。
(音楽クラブ30人)÷(科学クラブ10人)=割合
30÷10=3 答え 3倍
もう1問見てみましょう。
「どれがくらべる数(量)」で「どれがもとにする数(量)」か、理解できていますか?
【問題1の考え方と答え】
「くらべる数(量)」……20円
「もとにする数(量)」……100円
20÷100=0.2 答え0.2倍
【問題2の考え方と答え】
「くらべる数(量)」……?円
「もとにする数(量)」……100円
「割合」……0.2倍
100×0.2=20円 答え20円
ところで、問題1の0.2倍を百分率で表したら「20パーセント」ですね。百分率は割合の表し方のことで、0.01倍が1%(1パーセント)。ほかには「歩合」と言って「割」「分」「厘(りん)」で表す方法もあります。表現方法の違いだけなので、忘れかけていたら軽く見ておくか問題を解いておくとすぐに思い出せるでしょう。
最大難所「割合」の前につまずきがある場合は前の学年から確認を
ここまで割合を中心に5年生の単元について考えてきました。割合の問題はほかに「濃度」「打率」などがありますが、基本の意味は同じなので、どの数が何にあたるかをよく考えて式を書けるかがカギとなるので、一つずつ問題をじっくり読んで式を作ってみてください。
「どこを見直したらいいのか全然わからない」と苦手がふくらんでいる方は、つまずきの場所が今の学年とは限らないので、ぜひ1〜4年生の記事も参考にしてみてください。「『倍』の考えでつまずいている」「四角形の特徴があやしかったかも」など、苦手の芽が見えたらしめたもの。それだけで克服法が見えてきますよ。