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【連載第四回】今回のテーマは「消しゴム」です
なお:連載第三回のテーマは「鉛筆」でした。鉛筆ときたら次は「消しゴム」ですよね!
他故:はい、準備万端です。でも本論に入る前に、まず消しゴムについて知っていただきたいことが2点あります。
消しゴムはゴムじゃない?!
他故:消しゴムは「ゴム」という名前が使われていますが、現在では大半がPVC(ポリ塩化ビニル/塩ビとも呼ばれる)という樹脂素材で作られています。
なお:「ゴム」なのに「ゴムじゃない」って、不思議ですね。
他故:私の小さい頃はまだゴムでできた消しゴムも多くて、消したい部分を擦ると消えるというよりも塗り広げられるような、全体がぼやっと黒くなるものでした。
なお:ああ、それなら私の子どもの頃にも。デザイン重視だったり鉛筆のお尻についている消しゴムによっては擦っても消えないなと困ったことがありましたよ。
他故:他に最近では「エラストマー」という素材の消しゴムも見かけるようになってきました。写真のように「非塩化ビニル」やそのまま「エラストマー」と商品に表記されていることが多いです。
消しゴムに巻かれている紙、スリーブ
他故:もう一つ、今回たくさん出てくる「スリーブ」という用語がありますので説明をしておきます。「スリーブ」とは、消しゴムに巻いてある紙のことをいいます。
なお:商品名などが書かれている紙ですね。
他故:このスリーブには大きく2つの役割があります。一度新品の消しゴムをスリーブから出して消してみてください。
なお:使い始めの消しゴムで試しましたけど、ぐにゃぐにゃとたわんでしまって消しづらいです。力を入れすぎるとそのまま折ってしまいそう……。
他故:それを防ぐために消しゴムはスリーブに入れられ、補強をして使いやすくしているのです。
なお:なるほど
他故:もう一つは、消しゴムの材料に関係があります。PVCでできている消しゴムには可塑剤というPVCを柔らかくしてくっつける成分が含まれます。そのおかげで消しゴムはよく消えるようになったのですが……。消しゴムも消しカスも、プラスチックに触れていると溶けてくっついてしまうという性質があるのです。そこで紙で包んで守っているというわけです。
お悩み1:消しやすい消しゴムは?
他故:字の消えやすさの指標である「消字率」は、PVC製の白が一番高くなっています。ですので、「消しやすい消しゴム」を探すときの確認事項として
・白い消しゴム
・国内メーカーの消しゴム
・PVC製。場合によって、エラストマー製
の3点を挙げます。
次に、「どのように消しやすいか」によっておすすめが変わってきます。
1a:濃い鉛筆でもよく消える
1b:握りやすい
1c:狙ったところだけを消すことが出来る
なお:確かに、それぞれに違いがありそうですね。
他故:では、それぞれにぴったりの消しゴムをピックアップしていきます。
1a:濃い鉛筆でもよく消える
他故:「鉛筆で書いたものがなぜ消しゴムで消えるのか?」を説明します。鉛筆で紙に書いたとき、紙の表面に鉛筆(黒鉛)の粒がくっついている状態になります。そして、鉛筆で書いた上を消しゴムで擦ると、崩れた消しゴムが紙の上の粒を包み込むので書いたものが消えます。
なお:この間、娘の鉛筆を借りて使ったのですが「B」とつく鉛筆は数字が大きくなるにつれて柔らかく濃く書けますね。
他故:そうなんです。2Bよりも4B、4Bよりも6Bの方が芯が柔らかく、同じ強さで紙に書いた場合、紙の上につく黒鉛の粒の量が多くなります。そのため、より多くの消しゴムを消費して黒鉛の粒を包み込む必要が出てきます。
レーダー小学生学習用消しゴム/シード
このシリーズは2B/4B/6Bと3種類の鉛筆の濃さが書かれていて、それぞれ2つずつデザインが展開されています。
この3つの大きな違いは「消しゴムの崩れやすさ」です。6Bが最も崩れやすく、消した時に崩れる消しゴムの量が多くなっています。つまり、先ほどの消える仕組みの話の通り、崩れる量が多いと多くの黒鉛の粒を包み込める。ということです。
なお、6Bの鉛筆で書いた線を2B消しゴムで消すこと、またその逆も可能です。ですが、それぞれの鉛筆の黒鉛量に合わせてチューニングされているので、お子さんが使っている鉛筆の濃さに合わせて選択すると無駄なく使えそうです。
【たこなおのプラスアルファ情報】
シードのレーダー消しゴムは関西を中心に有名な消しゴムです。消しゴムは意外と地域性があるのです。この消しゴムを包んでいる包装フィルムは、ノーマルのレーダー消しゴム同様に、ひねるだけで簡単に開けることができる便利な開封方式を採用しています。
モノ学習用消しゴム/トンボ鉛筆
一個で2B/4B/6Bすべてに対応している消しゴム。濃く柔らかい鉛筆芯で書いた文字でも少ない往復回数でよく消えます。
スリーブには左端に2本のすべり止めのラインが入っていて持ちやすくなっています。
通常のモノ消しゴムと比べると縦の長さが短く、横幅や厚みがあります。これは小さなお子さんの手でも扱いやすく、使用時に総合的に安定するサイズを研究した結果から導き出された大きさで作られています。
【たこなおのプラスアルファ情報】
消しゴム本体が折れにくくするためにスリーブの角を丸く落としている点はノーマルのモノ消しゴム譲りのデザインです。
1b:握りやすい
Clutto くるっと/プラス
消しゴムを専用のケースに入れ、リップクリームのようにお尻の部分を回して出し入れする新しい形の消しゴムです。ケース入りなので、使い始めから終わりまで、握りやすさと使いやすさが変わりません。
また、断面が幅広の6角形状をしていてコンパクトな本体は、手の小さなお子さんでも扱いやすくなっています。
【たこなおのプラスアルファ情報】
この商品はPVCではなく、エラストマー製で硬いタッチですが、しっかり握ることのできるケースが効いていて細かい部分も広い部分も消しやすいです。
エアインキッズ/プラス
軽い力で濃い文字も消すことができる吸着力の強い樹脂を開発して、小学生が使うことの多いB〜2Bの鉛筆に対応した消しゴムです。
しっかりと握れるようにスリーブの左端にはエンボス加工の滑り止め付き。小学生の消しゴムの持ち方と指の長さを調査し、消しゴムを握る上でポイントとなる人差し指の長さをもとに、最も安定する持ち方に適したサイズを導き出した握りやすさ抜群の一品です。
【たこなおのプラスアルファ情報】
スリーブにミシン目が入っていて消しゴム本体が減ったら切って短くできるのですが、お名前欄が残るよう配慮されたデザインになっています。
1c:狙ったところだけを消すことが出来る
ピュアスリム/サクラクレパス
半透明なのが目をひく、縦幅8mm、横幅13mm、高さ90mmという細長い消しゴム。「文章の中の一文字だけを消したい」時にピッタリのサイズで、字の大きさが揃って小さく書けるようになって、くる中〜高学年におすすめです。
【たこなおのプラスアルファ情報】
消したい部分を狙いやすいスリムサイズで、軽い消し心地です。消しカスが糸状にまとまるので、つまんで捨てやすい特徴があります。
カドケシ/コクヨ
消字性能はPVCに劣りますが、カドケシの複雑な形状はエラストマーでないと作り出すことができません。全部で28ヶ所ある角で一文字や一部分をとにかく徹底的に細かく消したいというお子さんのためにいかがでしょうか?
【たこなおのプラスアルファ情報】
2003年に商品化されたこの消しゴムの特徴は「カド」が多いこと。今までにない形の製品で、発売当時には日本中が驚き話題になりました。
「グッドデザイン賞」など様々なデザイン賞を受賞。ニューヨーク現代美術館(MoMA)のミュージアムショップで販売されるといった話題が記憶にある保護者の方も多いはずです。
お悩み2:消しゴムが割れてしまう・折れてしまう
他故:消しゴムが割れたり折れたりするときは、主に力の入れすぎが原因です。ですが、各社でもできるだけ割れないよう・折れないように工夫をしています。
アーチ消しゴム 小学生学習用100/サクラクレパス
しっかりとした厚みがあって小学生でも持ちやすく、硬めの素材とカーブを描いた商品名にもなっているアーチ形状のスリーブが、消しゴムの折れにくさを高めています。
【たこなおのプラスアルファ情報】
折れないアーチデザインはオリジナルのアーチ消しゴム譲り。この商品はオリジナルのアーチ消しゴムよりやや小ぶりで、小学生が使う箱形筆箱にもすっきり収納できます。
モノタフ/トンボ鉛筆
消しゴム本体とスリーブ、両面からのアプローチで折れにくくなっている消しゴムです。試しに消してみるとこの消しゴムの硬さは一発でわかります。硬く、しなりにくくなるように原料の配合を調整し、消しゴムが割れたり折れたりする原因となっているスリーブへ食い込むことを防いでいます。
また、スリーブの向かって左側、消す時に使用する方の断面が特徴的な斜めのカットになっていて、スリーブが消しゴムにかかる負担を分散させています。
【たこなおのプラスアルファ情報】
硬くてしなりにくい、従来のモノ消しゴムとは違う新配合の専用消しゴムを搭載。より効果的に使うため、指を置くときに目印になる青い三角マークもお子さんにはわかりやすいですよね。デザインも黒を基調としていて、かっこよさが引き立っています。
お悩み3:スリーブの処理法
なお:スリーブって消しゴムを使い続けていくと少しずつ邪魔になってきますよね。私が子どもの頃だと、消しゴムの大きさに合わせて切る派と、折り込んで消しゴムの大きさに合わせる派がいました。かなりの年月が経っていますけど、今でも処理法に悩む方が多いみたいですね。
他故:はじめに説明した通り、スリーブはそもそも消しゴムを保護するために大切な役割を果たしています。ですが、消しゴムが小さくなってきた時にはスリーブも処理をした方が使いやすくはなります。お悩み1・2に登場した中で、スリーブを処理しやすく工夫した製品がありますので紹介しますね。
3a:スリーブにミシン目が入っているもの
スリーブにミシン目が入っていて、簡単に長さを調整できるものです。スリーブは厚みのある紙でできていることが多いので、場合によっては年齢の低いお子さんには難しいかもしれませんが、手できれいに切れるよう工夫がされています。
今回、ご紹介したものの中では
・モノ学習用消しゴム/トンボ鉛筆
・エアインキッズ/プラス
・ピュアスリム/サクラクレパス
・アーチ消しゴム 小学生学習用100/サクラクレパス
・モノタフ/トンボ鉛筆
が該当します。
3b:スリーブを切る必要がないもの
・Clutto くるっと/プラス
先程もお話ししましたが、くるっとは消しゴムが樹脂製のケースに入っていて、リップクリームのようにお尻の部分を回すことで消しゴムを出し入れします。そのため、スリーブの処理は不要です。ケースが工夫されているため、残りわずかなところまで消しゴムを使い切ることができる環境にもやさしい商品です。
終わりに
消しゴムはリーズナブルなお値段で入手できます。それぞれに消し心地や持ちやすさなど異なりますので、ぜひお子さんと消し比べて、自分に合うものを選べるといいですね。
次回も、あなたからのお悩みにお答えしていきます!
たこなお文具情報室 Instagram
静岡県浜松市生まれ。
【ブンボーグA(エース)】としてもSNSで活動中。
きだてたく氏、文具王・高畑正幸氏とともに、文房具のことを話し始めると止まらないトークライブユニット「ブング・ジャム」を結成。定期的にトークライブを行うほか、雑誌連載、ムック本での文具情報コーナーへの参加など活動。文具三賢人の一人である。筆記具やノート、その他持ち運ぶことのできる文房具全般に興味を持っている。文房具について語りだすと止まらなくなる。
北海道札幌市生まれ。
ラジオパーソナリティを軸として、動画出演&編集、Webマガジンへの執筆など広範囲で「文房具」情報をご紹介する【文房具プレゼンター】として活動。社会人になったときに両親から贈られた万年筆に、黒以外の様々な色のインクをいれて使えることを知り、一気にインクコレクター(インク沼)になる。ご当地インクが特に大好物。一人ムスメ(2015年生まれ)の母親としての視点から文房具を観察し、レビュー記事を執筆している。
過去の連載はこちら
第一回 筆入
第二回 お名前付け
第三回 鉛筆
文・構成/たこなお文具情報室(他故壁氏・ふじいなおみ)