熱伝導とはどういう現象?
熱伝導は、熱が伝わる仕組みの一つを指す言葉です。どのように伝わるときに、熱伝導と呼ぶのでしょうか。他の伝わり方もあわせて見ていきましょう。
温度が高い方から低い方へ熱が伝わる現象
熱伝導とは物体の内部に温度差があるときに、高温部から低温部へと熱が伝わる現象です。また、熱伝導は同じ物体の中だけでなく、触れ合っている二つの物体同士でも起こります。
例えばやかんを火にかけてしばらくすると、火に触れている底の部分だけでなく、やかん全体が熱くなります。うっかり触って、やけどしそうになった経験を持つ人もいるでしょう。やかん全体が熱くなるのも、触った手が熱く感じるのも、熱伝導によるものです。
物体の持つ熱は、主にその物体を構成している原子の振動によって発生します。振動が激しいほど熱く、少ないときは冷たい状態です。物体の一部が温められると、そこだけ原子が激しく振動します。
原子同士はつながっているため、振動は隣の原子にも伝わっていきます。熱伝導は、このように原子の振動によって熱が伝わる仕組みを指す言葉です。
熱伝導以外の熱の伝わり方
熱伝導のように、熱が高い方から低い方へ移動する現象を「伝熱」といいます。伝熱には熱伝導の他に、「対流」と「熱放射」があります。
対流は、流体(気体や液体のこと)の移動により熱が伝わっていく現象です。流体には、温度が上がると軽くなって上昇する性質があります。暖房を長時間つけていても部屋の上の方ばかり温まり、足元が冷えるのは空気の対流が原因です。
熱放射は、赤外線などの電磁波によって熱が運ばれる現象です。電磁波が熱を持っているわけではなく、物質に吸収されることで熱が生じます。
熱放射は物質を介さないため、真空でも熱が伝わるのが大きな特徴です。なお、太陽の熱が地球に届くのも、電磁波のおかげです。
熱伝導率とは何を表すもの?
熱伝導の仕組みとともに、押さえておきたい言葉の一つに「熱伝導率」があります。熱伝導率の考え方や、物質による違いを見ていきましょう。
熱伝導のしやすさを数値で表す
熱伝導率は、物質の熱の伝わりやすさを数値化したものです。厚さ1mの素材において、両端の温度差が1としたときに、その素材の1平方mの面積に1秒間で流れる熱量のことで、単位は「W/m・K」が使われます。
熱伝導率が高い物質ほど、熱がよく伝わると覚えておきましょう。
熱伝導率は、基本的に固体・液体・気体の順に高く、固体の中でも物質によって大きな開きがあります。特に金属は熱伝導率が高く、すぐに熱くなったり冷たくなったりします。
熱伝導率は物質によって決まっている
熱伝導率は物質ごとに決まっており、わざわざ計算して求める必要はありません。同じ物質でも、温度や密度などの条件によって差が出ることはありますが、そこまで大きくは変わらないと考えてよいでしょう。
条件が同じ場合、物質ごとの熱伝導率には下記のような特徴が見られます。
●プラスチックや木材:金属の1/100以下
●空気:プラスチックや木材の1/10程度
●水:氷の1/4程度
●ガラス:水とほぼ同じ
ガラスは硬い物質ですが、実際には固体ではなく「凍結した液体」です。そのため熱伝導率も、液体の水とあまり変わりません。
熱伝導率がもっとも高い金属は?
他の物質に比べて圧倒的に熱伝導率が高い金属にも、それぞれ熱の伝わりやすさに大きな違いがあります。もっとも熱伝導率が高い金属は銀で、銅・金・アルミニウムが以下に続きます。
一方、鉄やステンレスは熱伝導率が比較的低いです。銀と鉄の間には約5〜8倍、ステンレスとの間には約28倍もの開きがあります。
なお、地球上でもっとも熱伝導率が高い物質は、ダイヤモンドです。ダイヤモンドは金属ではありませんが、銀の約2~5倍も熱伝導率が高いことが分かっています。
熱伝導率を利用した身近な製品
物質の熱伝導率の違いは、さまざまな製品に応用されています。身の回りにある事例を見ていきましょう。
断熱材
家の壁などに使われる断熱材は、空気の熱伝導率の低さを利用しています。空気は熱を非常に通しにくいため、空気を含んだ物体を壁に入れることで、外気の温度が家の中に伝わりにくくなり、室温を快適に保てるのです。
ただし、空気だけではいずれ対流が起きてしまうので、動かないように閉じ込めておく必要があります。
羽毛布団やダウンジャケットが暖かく感じるのも、羽毛の間に空気がたっぷりと含まれているためです。断熱ガラスや発泡スチロールの保冷箱も、全て同じ原理です。
アイスクリーム用スプーン
アイスクリームが固く凍ってしまい、食べにくく感じた経験がある人も多いのではないでしょうか。特に、買ったときにもらえる木やプラスチックのスプーンを使っていると、なかなか溶けない上にスプーンが折れてしまうこともあります。
固いアイスクリームを食べるときは、アルミニウム製のスプーンを使ってみましょう。アルミニウムは熱伝導率が高いので、手の熱がすぐにアイスクリームに伝わり、その部分だけ溶かしてくれます。スプーンが触れていない場所は溶けないため、柔らかくなり過ぎる心配もありません。
実際に、アルミニウムとその他の素材のスプーンとで、手に持ってから先端の温度が上がるまでの時間を比べた実験も行われています。
鍋の持ち手部分
鍋やフライパンの中には、持ち手部分だけプラスチックや木のような熱伝導率の低い素材を使ったものがあります。
もし鍋の持ち手が本体と同じ金属だった場合、調理中に持ち手まで熱が伝わって熱くなり、素手では持てません。そのため持ち手部分だけ、他の素材を使って持ちやすくしているのです。
ただし、火加減や加熱時間によっては持ち手が思ったより熱くなっている可能性があるため、触るときは十分注意しましょう。
素手で触れないほど熱くなってしまったときや、持ち手部分が金属の場合は、鍋つかみや乾いたタオルを使うと安全性が高まります。鍋つかみやタオルに含まれる空気が、手に熱が伝わるのを遅らせてくれる仕組みです。
熱伝導は意外と身近にある現象
熱伝導は、物体の内部や二つの物体間で起こる熱の移動を指す言葉です。何かに触って熱い・冷たいと感じるときは、触った物体と肌の間で熱伝導が起きています。
熱の伝わりやすさは物質によって大きく異なり、その違いを利用した製品は身近にもたくさんあります。実際に身近なものを温めてみたり触れてみたりしながら、親子で学んでみるのもよい経験になるでしょう。
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構成・文/HugKum編集部