天気予報で耳にする「放射冷却」とは。仕組みや関連する現象を知ろう【親子でプチ科学】

冷え込みが強まる季節になると、天気予報で「放射冷却」という言葉を見聞きするようになります。放射冷却の仕組みや気温が下がる条件を知っておくと、気象情報をより理解しやすくなるでしょう。
放射冷却のメカニズムや関連現象を分かりやすく解説します。

「放射冷却」とは

「放射冷却」について、本来の意味を知らない人も多いのではないでしょうか。まずは言葉の定義をおさらいしましょう。

物体が熱を外に出して冷えること

放射冷却とは、物体が熱を外に「放射」して冷える現象を指す言葉です。すべての物体は熱を放射する性質を持っているため、放射冷却は日常生活の中で普通に見られます。

沸かしてから時間が経つほどお風呂のお湯がぬるくなったり、食卓に並べた熱々の料理が冷めてしまったりするのは、放射冷却によるものです。朝起きたときはまだ温かい布団も、放っておくと冷たくなります。

また、満員電車や混雑したデパートなどで熱気を感じるのは、人がそれぞれ熱を周囲に放射しているためです。

気象用語として知られる

放射冷却という言葉を、天気予報で初めて知った人も多いでしょう。この場合は、地面の熱放射によって気温が下がる現象を指しています。

日中は太陽に暖められている地面も、夜になると熱を放射して温度を下げようとします。このとき、地表近くの空気も一緒に冷やされるため、周囲の気温が下がるという仕組みです。

地面の放射冷却が強ければ、それだけ冷え込みが厳しくなり、生活にさまざまな影響を及ぼします。このため、放射冷却が強まると予想されるときは天気予報で情報を提供し、防寒対策を促しているのです。

地面で起こる放射冷却の仕組み

天気予報で見聞きする放射冷却は、地球が自然に起こしている現象です。地面の放射冷却の仕組みを、詳しく見ていきましょう。

地面の放射冷却は毎日起こる

地面の放射冷却は毎日起こっています。天気予報で伝えられていなくても、暑い夏でも暖かい地域でも、必ず起こっているのです。

地球は常に一定量の赤外線を、熱として宇宙へと放射しています。しかし、昼間は太陽が出ているため、太陽から受け取る熱が地球から放射される熱を上回り、地面は暖まります。

逆に、夜は太陽の熱がないため、地面は冷えていく一方です。このように、地面は「太陽熱で暖まること」と「熱を放射して冷えること」を、毎日くり返しています。

ただし、暖まったり冷えたりする際の気温の幅は、季節や地形、当日の気候などに左右されます。放射冷却が起こるから冷え込むのではなく、放射冷却が強まる条件が揃ったときに冷え込みが激しくなると覚えておくとよいでしょう。

放射冷却が強まる条件

放射冷却は、以下の3条件が揃うと強まります。

●夜に晴れている
●乾燥している
●風が弱い

上空に雲が多い日は、雲が地面の放射熱を吸収し、その一部を再び地面に向けて放出します。お風呂にフタをすると冷めにくかったり、布団をかけて寝ると暖かかったりするのと同じで、雲が地球にとってのフタや布団の代わりになっているのです。

そのため、夜に晴れていて放射熱を遮る雲がないことが、放射冷却が強まる第一の条件といえます。また、湿った空気も雲と同じ役割を持つため、空気が乾燥していることも放射冷却が強まる条件です。

風の強さは気温の低下に影響します。風が弱い日は地面近くの空気が周囲と混ざらないため、どんどん冷やされていきます。

晴れて湿度が低く、風が弱い日ほど、放射冷却が強まって冷え込みが激しくなると覚えておきましょう。

放射冷却がもたらす現象

地球上では、放射冷却がもたらすさまざまな自然現象が見られます。主な現象について、発生しやすい季節や条件などを見ていきましょう。

放射霧

放射冷却が強まると、地表付近の空気中の水蒸気が水滴となって、霧が発生することがあります。この霧は「放射霧」と呼ばれ、秋から初冬にかけて内陸の盆地でよく見られます。

放射霧が発生しやすい時間帯は、冷え込みがもっとも強まる早朝です。日の出から1~3時間経ち、地表付近の空気が暖められると、自然に消滅します。

晴れて風が弱い日は、夜明けとともに霧が地表を白く覆う、幻想的な光景に出会える可能性が高いでしょう。

放射霧の出現しやすい京都府亀岡市では「「丹波霧」とも呼ばれる。

季節外れの霜

霜は空気中の水蒸気が土や植物の葉などに付着して、氷の結晶となったものです。放射冷却が強まり、地表付近の空気や土の温度が0℃近くまで下がると発生します。

もともと気温が低い冬の霜は特に問題ありませんが、春から初夏の「遅霜(おそじも)」や、秋から初冬の「早霜(はやじも)」は、農家にとって大敵です。

このため、放射冷却が異常に強まり、季節外れの霜が降りる可能性が高まるときには、気象庁が早めの対策を呼びかけています。

激しい寒暖差

地球上に、1日の寒暖差が激しい地域とそうでもない地域があることは、多くの人が知っていることでしょう。こうした昼と夜との気温差にも、放射冷却が大きく関わっています。

例えば、砂漠は空気が乾燥していて雲が少ないため、夜になると放射冷却によって急激に気温が下がります。日中は太陽が強く照りつけ、暑いイメージのある砂漠ですが、夜は想像以上に寒いのです。

周囲を山に囲まれた盆地も空気の出入りが少ないため、昼に気温が上がりやすく、夜は下がりやすくなります。前述の放射霧が盆地で発生しやすいのも、地形が関係しています。

「天空の城」と呼ばれる竹田城址(兵庫県朝来市)の雲海。放射霧による雲海に城跡が浮かんで見える。

気候や地形に左右される放射冷却

放射冷却は、一般的に地面の熱放射によって周囲の気温が大きく下がるときに使われる言葉です。地面の熱放射は毎日起きていますが、気温の下がり具合は雲や風の有無、湿度によって変わってきます。

「晴れていて風が弱いから、明日の朝は寒くなるかもしれないね」などと親子で予想してみると、放射冷却への理解をより深められるかもしれません。くれぐれも暖かくして、無理のない範囲で夜の空を見上げてみましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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