縄文時代の貝塚からも出土するアワビの貝殻は、古くから食材としてだけでなく、貝殻を装身具などに加工されてきました。生でも、干しても栄養満点で、人気の高い食材です。高価なので食べる機会は限られるかもしれませんが、じつはご自宅でおいしく調理する方法が、案外簡単なんですよ。
アワビとは
伊勢神宮での神事にも使用される食材としても名高いアワビは、ミミガイ科の大形巻貝です。
アワビの顔
アワビに限らず、巻貝には基本的に顔があり、眼、口も存在します。これが一時SNSで話題になったことがありました。
青みのある離れがちの目と、縦に開いたタラコ唇、そして触覚のような器官をもつことから、それはまるで「ウルトラマンに出てくる怪獣のよう」とたちまち騒然となりました。
お茶目とグロテスクの中間にあるその顔は、「食材として受け付けられなくなる」という声もあるため、ここでは写真の掲載を控えます。もしも、活きアワビを見かけた際には勇気を出して、身の尖った部分を確認してみてください。そのお顔を拝むことができますよ。
食べ方
アワビはワサビしょうゆで刺身としていただく他、酒蒸し、塩蒸し、煮物などが一般的です。現在では、かんぴょうのように外縁部から長くむいて乾燥させたものが多くみられます。
韓国ではアワビ粥が有名で、滋養強壮効果をもつヘルシーな食材として人気です。
トコブシとアワビ
アワビにそっくりな貝があります。どんな貝なのでしょうか? また、どこが違うのでしょうか?
トコブシ
日本での最高級アワビといえば、クロアワビですが、その小型種がトコブシです。つまり、トコブシはアワビの一種なんです。
生食することはほとんどありません。小さい姿を生かして殻付きのまま甘辛く煮しめる他、殻をはずし、つけ焼きや佃煮風に煮て用います。
アワビに似ている貝
むき身にするとアワビにそっくりで、その名も「アワビモドキ」と呼ばれる貝があります。
以前は回転寿司店などでアワビとして出されることもありましたが、現在は「ロコガイ」や「チリアワビ」の名で呼ばれ、同一には扱われません。また、こちらはアッキガイ科の二枚貝です。
アワビの下処理
それでは、ご自宅でアワビをさばく手順をみていきます。
塩で洗う
肉の表面にたっぷりの塩をかけ、よく洗います。
黒い色が出てきますが、気にせずにしっかりと洗ってください。殻側も洗ってくださいね。
身をはがす
殻から身をはがす工程をみていきます。
用意するもの
貝むき用のナイフがあれば便利ですが、スプーン、食事用ナイフなどが代用できます。おろし金の柄を使用する、という声もありますから、金属製の薄く尖ったもの、もしくはしゃもじなどでも使えます。
貝柱の位置を確認
アワビの貝柱は、殻の中央にあります。殻が薄い方に口、厚い方に肝が入っています。
貝柱をはがす
殻の薄いほうを手前、厚いほうをむこうになるように置いてください。
その中央やや左よりから、用意したナイフなどを差し込みます。貝柱が貝から剥がれていきます。
これを、中央右から入れると、内臓を破ってしまうことが多いので注意してくださいね。
殻から身をはずす
次に、貝の向きを変えます。殻が薄いほうを上にして左手で持ちます。
右手で身を持ち上げると、中央に貝柱があり、取り囲むようにヒモ、手前に黒い肝があることが確認できます。ヒモは殻に吸着しています。そのままやさしく引っ張って、肝と一緒に身を殻からはずしてください。
これで、殻と身がはずれます。
可食部を切り分ける
アワビの身は、柔らかい部分と固い部分に分かれるため、食感ごとに部位を切り分けます。また、食べられない口部分をはずしましょう。
ヒモと肝をはずす
殻にくっついていた側を上に向けてください。包丁で、ヒラヒラしたヒモと、黒い部分にあたる肝を切り取ります。手でも簡単にはずれますよ。
口を切り取る
アワビの尖った方の先端に、赤く固い口がついています。これは固くて食べられないため、取り除きます。包丁で三角形に切り取って、口を取り除いてください。
最後に、もう一度洗いながら、貝柱の周りのヒモなどをきれいに取り除きます。
貝柱を切り取る
貝柱は、他の身と固さが異なるため、切り離します。お刺身でいただく場合は、スライスしてお召し上がりください。
殻
殻の外側は成長につれ動植物が付着して汚れますが、内側は美しい真珠光沢があります。螺鈿(らでん)細工や、真珠養殖の核に用いられる他、眼病の薬として用いられるものです。
柔らかく焼くアワビステーキ
ここからは、フライパンでステーキに仕上げる工程をみていきます。
焼き方
アワビステーキに仕上げます。オリーブオイルと白ワインで焼き、ほんの少しのにんにく、塩、こしょうで味をつけます。
材料
アワビ 150g
オリーブオイル 大さじ1(もしくはバター10gでも)
白ワイン 大さじ1.5
【A】
にんにく(すりおろして小さじ1/2ほど)
塩 ひとつまみ
こしょう ひとつまみ
焼き方
【1】にんにくをすりおろしてください。
【2】アワビに格子状の細かい切り込みを入れて、柔らかい焼き上がりを目指します。深さは5㎜程です。
【3】熱したフライパンにオリーブオイルを熱し、アワビをのせます。貝柱も一緒に焼いてください。両面に焼き色をつけるように加熱します。
【4】白ワインを加え、フタをして中火のまま加熱してください。加熱時間の合計は4分ほどです。アルコールが飛んだら、アワビを取り出します。
【5】フライパンは火をつけたまま、【A】と、包丁でたたいた肝を入れて全体をなじませます。
【6】お皿にアワビを盛り付け、フライパンのソースをかけてください。
アワビの値段
アワビは、獲れる産地も様々。大きさもそれぞれ違います。価格はいわゆる「時価」で、ここではあくまでも例としてご参考にしてください。
アワビには天然と養殖があります。80~90g位で、10cmに満たない大きさのもので、国産の天然ものは1個1400円前後、養殖は700~900円ほどで見かけられます。時期や産地によっても、値段が大きく変化します。
高級活アワビ 殻付き
Mサイズ、Lサイズが揃い、それぞれ500gまたは1㎏を選ぶことができます。ご家族や、集まる人数によって選んでください。
青森県 津軽海峡産 活あわび
津軽海峡産の、活蝦夷あわび、120g前後のサイズ1個、もしくは3個のどちらかを購入できます。産地直送の冷蔵品ですから、到着日を計画して注文してください。届いたその日のうちに調理が理想的です。
記念日にはお家でステーキを
高級食材アワビについて、下処理の方法を中心にみてきました。本当に簡単にできるので、ぜひチャレンジしてみてください。
味付けがシンプルでも旨味が強いので、お家で焼いたステーキもなかなか味わい深いものです。記念日などに、思い出に残る味になるかもしれません。
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構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)