太平記とは?
鎌倉時代から南北朝時代、さらに室町時代へ、時代が移り変わっていった頃。鎌倉幕府が滅亡していく混乱のそのときを描いたのが『太平記』です。この作品は、誰が作ったのでしょうか。
作者も成立年も不詳の作品
『太平記』の作者はわかっていません。成立した正確な年も不明です。
ただし『太平記』は全40巻にもおよぶ大作。そのため、多くの人が制作に関わり、ある程度の長い期間をかけて作られたものとみられています。1300年代中頃には21巻あたりまでの部分ができていたのではないかと考えられています。
国: 日本
作者:不詳
発表年:不詳
おすすめの年齢:(現代語訳の場合)小学校高学年以上
作者はどんな人?
『太平記』の作者はわかっていませんが、小島法師(こじまほうし)という人物が、『太平記』の制作に深く関わったと注目されています。そのほかに、玄恵 (げんえ)という人物も作者の有力なひとりとして考えられています。小島法師は1374年、玄恵は1350年に亡くなっています。
いつの時代の話?
『太平記』の舞台は、鎌倉時代の末期から、南北朝時代、そして室町時代。特に、鎌倉幕府が滅びて室町時代に移り変わるまで、1318年から1368年までの50年間におよぶ南北朝時代の混乱を中心に描いています。
全40巻の『太平記』は、以下のような3部構成でできています。
- 第1部(1巻~11巻)後醍醐天皇の即位から鎌倉幕府の滅亡まで
- 第2部(12巻~21巻)南北朝時代の混乱
- 第3部(23巻~40巻)足利尊氏と足利直義の対立、3代将足利義満の登場まで
22巻は16世紀の時点で欠落しています。その理由として、天皇や武家にとって不都合な内容だったことから削除されたのではと言われていますが、真相はわかっていません。
物語のあらすじ|「詳しく」&「簡単に」2バージョンでご紹介
では『太平記』のあらすじについて、「詳しく」と「簡単に」の2バージョンでご紹介します。
詳しいあらすじ(ネタバレあり)
1318年、後醍醐天皇が即位します。当時は、鎌倉幕府が政治を握っていた時代。しかし、以前のモンゴルの襲来によって、鎌倉幕府は弱っているところでした。そこで、後醍醐天皇は天皇が政治を主導できるように、このチャンスを逃すことなく、討幕の計画を企てます。
日野資朝、日野俊基とともに鎌倉幕府を滅亡させようとしますが、討幕の嫌疑にかけられてしまうのです。ひとまず後醍醐天皇は冤罪で済んだのですが、またその後に再び討幕の計画を立てていきます。しかし後醍醐天皇は密告されてしまい、京都から逃亡します。
そうする間、「笠置山の戦い」のほか、各地で反乱なども勃発するのです。そして新田義貞が鎌倉幕府を裏切り、足利尊氏の息子とともに鎌倉幕府を攻め、ついに鎌倉幕府は滅びることとなったのです。
鎌倉幕府を倒した後醍醐天皇は、「健武の新政」を開始します。しかし武士が嫌いだった後醍醐天皇は、政治から武士を排除していこうとします。ただ、鎌倉幕府の滅亡に尽力したのは武士たちの力もあったわけで、それにも関わらず武士を排除しようとする政策に、次第に武士たちの不満は高まります。その中心人物となったのが、足利尊氏です。
足利尊氏は光明天皇にはたらきかけ、征夷大将軍に任命されたのです。後醍醐天皇は、足利尊氏などの武士がバックについている光明天皇には勝てないと、奈良の吉野に逃れます。ここに、京都(北)は光明天皇と足利尊氏、吉野(南)は後醍醐天皇が統治する南北朝時代が始まりました。またこれと同時に、武士を中心とする室町幕府もできあがりました。
足利尊氏は弟の直義とともに政権を握るのですが、二頭政治は内部の争いをもたらしていきます。これが「観応の擾乱」。そして足利尊氏が亡くなった後は、2代目将軍足利義詮が後継となり、最後は死去し細川頼之が管領就任して物語は終わります。
簡単なあらすじ(ネタバレなし)
後醍醐天皇が即位した1318年から物語は始まります。武士による鎌倉幕府が政治を握るなか、後醍醐天皇は天皇が政治の実権を握れるよう、鎌倉幕府を倒すことを計画します。ここから鎌倉幕府が滅び、やがて南北朝時代、室町時代へと時代が進んでいきます……。
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太平記の主な登場人物
『太平記』の主な登場人物をご紹介しましょう。
後醍醐天皇
『太平記』の第1部と第2部で中心となる人物。第1部は、後醍醐天皇の即位から物語が始まり、第2部では建武の新政の失敗と崩御までが描かれています。
足利尊氏(あしかが・たかうじ)
鎌倉幕府に仕える将軍のひとりでしたが、鎌倉幕府を滅亡させた人物です。もともと足利高氏という名前でしたが、後醍醐天皇から「尊」の一字を授かり、足利尊氏の名前になりました。
楠木正成(くすのき・まさしげ)
鎌倉時代から南北朝時代にいた武将。圧倒的な勢力を持つ鎌倉幕府を倒し、後醍醐天皇の勝利を導いた影の立役者。
新田義貞(にった・よしさだ)
現在の新潟県にあたる上野国の豪族だった武将。後醍醐天皇側につき、謀反を起こした足利尊氏と対立します。
太平記が読み継がれている理由
今からはるか昔につくられた『太平記』が、なぜ今も読み続けられているのでしょうか?
全40巻の大作
『太平記』は全40巻にもなる大作です。第1部から第3部までの構成で、しっかりと時代背景が描かれているため、読みごたえもたっぷり。歴史好きの人なら必ず読みたくなる魅力であふれています。
大河ドラマ・小説にも
『太平記』は、大河ドラマやテレビドラマでもおなじみの存在かもしれません。『太平記』をもとに、ドラマや小説に取り上げられてきたことからも、その人気の高さがうかがえるでしょう。
怨霊を鎮めるためにタイトルがつけられた?
『太平記』では、たたりや災いをもたらす「怨霊(おんりょう)」がたびたび登場します。これは、『太平記』の舞台となった時代に、敗者が怨霊となって勝者に仇をもたらすと恐れられていたから。
例えば、後醍醐天皇が崩御した後、京都で疫病が流行るなどして、それは後醍醐天皇の怨霊が不穏なことを引き起こしたのではないかと言われていたのです。そのため、怨霊を鎮め、平和を表す「太平」という言葉が、物語のタイトルにつけられたのではないかと言われています。
名作「太平記」を味わうなら
『太平記』を現在の言葉で味わってみませんか? おすすめの本・マンガ・DVDを紹介します。
『太平記』
推理小説やミステリー小説で知られる森村誠一が描いた『太平記』。戦乱の世を激しく生きた英雄たちを追ってみましょう。
『ワイド版 マンガ日本の古典20 太平記』
劇画界の第一人者であるさいとうたかおが描く『太平記』です。マンガで物語を読んでいくことができます。
『大河ドラマ 太平記 完全版』
大河ドラマの『太平記』を見られるDVD7枚セット。迫力ある映像とともに、ドラマで歴史を学んでいけます。
歴史好きならぜひ読もう
50年にも及ぶ激動の歴史を描いた『太平記』。なぜ鎌倉幕府は滅び、次の時代が始まっていったのか。そんな歴史について、深く知ることができる作品です。
歴史好きはもちろん、そうでない人も日本の歴史に興味を持つきっかけになるかもしれません。40巻の大作ではなくても、簡単にまとめられたタイプやドラマ版などから見てみてもいいかもしれないですね。
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文・構成/HugKum編集部