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コロナ禍以降、イヤホンの使用時間が増えた人は全体の約3割!
「イヤホン・ヘッドホンの長時間使用と“イヤホン蒸れ”」に関する調査を行ってみると、新型コロナ禍以降、イヤホンの使用時間が約3人に1人の割合で長時間化していることがわかりました。
全体的にイヤホンの利用時間が増加している中でも、リモートワークやオンライン会議などを多く行う20代〜40代のいわゆる“働き盛り世代”の約4割以上が長時間化している傾向がありました。
また、イヤホン・ヘッドホンの一日の平均使用時間について、1割以上が3時間超えと長時間化しており、中には12時間以上使用している人もいるという結果が!
子どもも注意が必要!”イヤホン蒸れ”とは?
新型コロナ禍以降、ライフスタイルが変わりイヤホンを日常的に使用する生活に。「外耳トラブルはコロナ禍で約3倍になっており、そのうち、約7割が外耳炎です」と語る大場俊彦先生に、急増する外耳トラブルについて詳しくお聞きました。
「年々気温が上昇しており、猛暑日が続き、さらに湿度も高いのでジメジメすることが特徴である日本の夏。細菌や真菌が好む環境であることから、特に注意が必要です。実際に夏は冬に比べて外耳炎の症状で来院する方が増加します。そのため、夏は“イヤホン蒸れ”による外耳炎に特に注意が必要です。
“イヤホン蒸れ”に関しては、オンライン授業や動画視聴、ゲームなどでイヤホンを長時間使用しているのは大人だけでなく、子どもも同様。子どもたちにも十分“イヤホン蒸れ”の危険性があります。家庭の中でも、一緒にいるのにイヤホンやヘッドホンで別々の音を聞いているという状況もありますよね。お子さんの耳も気をつけましょう」
“耳蒸れ”についても、約51%の人が気になると回答。実際にイヤホン・ヘッドホンを長時間使用している人ほど、外耳炎と診断された方が多い傾向にありました。
イヤホンを使用することが日常化している今、イヤホンの付け過ぎによる外耳トラブルは、他人事とは思ませんね。
密閉型イヤホンの付け過ぎによる「外耳炎」とは?
「外耳トラブルにも種類があり、外耳に湿疹ができて、かゆみが起こる『外耳湿疹』。さらに悪化すると『外耳炎』になり、出血を伴う場合もあります 。それがさらに悪化すると 『外耳道真菌症』になります」
外耳炎とは?
鼓膜の外側のいわゆる耳かきで触れる“外耳”に細菌や真菌(カビ)が広がることで、かゆみやはれ、音のこもりなどの症状が出る炎症のことです。耳穴は小さな穴のため、症状は強く、治療がしにくい部分です。痛みを感じてから受診する方が多く、その時には外耳湿疹または外耳炎のなりかけになっていることがほとんど。1 週間ほどの投薬で治るケースが多いですが、外耳道真菌症になると完治するまでに3週間ほどかかることも。耳かきなどの物理的な強い刺激により起こることもありますが、イヤホンを装着することにより耳が密閉され、外耳が高温多湿で細菌の好む環境になり発症するケースも多いです。ほかにも、耳の汚れも細菌の温床になります。
耳掃除は月に1・2回程度!イヤホンの使いわましもN G
「基本的に、耳は耳垢が自然と外へ出てくる仕組みになっていますので、過剰に綿棒や耳掻きなどで刺激を与えると傷ができ、そこに細菌が増殖して外耳炎になることもあります。耳掃除は月に1・2回程度にとどめ、あまりいじらないようにしておいた方が良いのです。
また、イヤホンの使い回しも耳の健康にはよくありません。耳にはたくさんの細菌がいて、自分の耳の右と左でもその数は違います。イヤホンを使い回すことは、自分の耳の菌を他の人に移すことにもなり、菌は移るたびに強くなりますので、とても危険な状態になります。イヤホンの貸し借りはしない方が良いでしょう」
外耳トラブルが起きにくいイヤホンの選び方
「外耳トラブルを引き起こさないためには、外耳が高温多湿になることを避けることが重要です。密閉型イヤホンを長時間利用することも発症する可能性があるため、長時間使用する場合はこまめに休憩を挟み、耳を休ませてあげてください。
また、夏は密閉型イヤホンの使用をなるべく控えることも予防につながります。オープンイヤー型などの、耳をふさがないイヤホンを使用して、外耳道を解放しておくことが望ましいです。
ほかにも、イヤホンを清潔に保つようにしましょう。イヤホンの材質に合わせて定期的にメーカーの推奨方法で掃除を行うこと、菌を移動させないためにも、イヤホンを人に貸さずに自分専用にすること、左右を確認し正しく使用することも大切です。
子どもから大人まで、さまざまな世代が罹患している外耳炎。注意していてもイヤホンを付けなくてはいけない状況は多々あると思います。耳に違和感がある時は、早めに専門機関を受診し、適切な治療を受けるようにしてください」
記事監修
大場俊彦先生|医療法人社団慶友 慶友銀座クリニック 理事長・院長 医学博士
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の専門医として、慶應義塾大学病院、東京都済生会中央病院といった東京都心の基幹病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科の医師として経験を経て、現在は医療法人 社団慶友 慶友銀座クリニックの理事長を務める。 補聴器に関しては専門的に研究を行い、米国と英国と日本の特許を取得している耳のスペシャリスト。
<調査概要>
調査名 :イヤホン・ヘッドホンの長時間使用とイヤホン蒸れに関する調査
調査方法:インターネット
調査地域:全国
調査期間:2023 年 6 月 26 日(月)〜6 月 29 日(木)
調査対象:15 歳以上の全国の男女 2,165 名
調査主体:NTT ソノリティ株式会社
文・構成/鬼石有紀