幼児から読解力をつけるなら「Show&Tell」を!アメリカなどの園や小学校でのやり方を紹介

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ひとえに「読解力」といっても、現代の子どもたちに必要とされる読解力には多くの方向性が求められます。文章を理解し表現するまでの力を身につけるのは簡単なことではありません。

絵本の編集者であり、子どもの教育について取材を行っている筆者が、幼児から読解力を家庭で養うために、「語彙力+共感力」で土台を作り、Show&Tellという手法で「表現力」を養うことで総合的な読解力につなげていく知見を得ましたので、ご紹介します。

読解力に必要な3つの力とは

これからの子どもたちには、思考力や論理力など多くの力が問われますが、その土台はなんといっても読解力

読解力って?

文章を読んで理解する力と考える人も多いと思いますが、現在問われている読解力は、テキストを読んで理解するだけでなく、それをもとに考え自分の意見を言う能力までを含み、日本の子ども達は、「考え、意見を言う」という部分を特に苦手としています。

3つの力とは

読解力を培うには、語彙力→共感力→表現力のステップで、3つの力の土台が必要です。これらの土台は一朝一夕で身につくものではありません。

筆者は、子どもたちに対して日々読み聞かせ活動や絵本紹介を行っていますが、いろいろな言葉を知っていてたくさんの本も読めるけれども、自分が考えていることを話すことは苦手というタイプの子に何人か遭遇しました。そんなとき、いくつかの幼稚園やインターナショナルスクールの取り組み「Show&Tell」などを見学する機会がありました。そこで得た知見が3つの力だったのです。

3つの力を身につけるためにはどうしたらいいのでしょうか。順番に説明をしていきます。

【ステップ①】親子の会話で「語彙力」を

まず初めに、子どもの語彙力を高めるには、まず親子の会話を充実させることが重要と考えます。

語彙力とは

文章を理解するには「多くの言葉の種類を知る」=語彙力が必要となります。

未就学児のうちは、親が先回りして「こういうことね」と代わりに言ってしまうこともあると思いますが、できるだけ「くやしくて泣いちゃったのかな? 断られて悲しくて、泣いちゃったのかな?」など、いろいろな表現のヒントを与えてあげて、子どもが自分の気持ちに一番しっくりする言葉はなんなのかをたどってあげてみて。

特に、「うんざりする」「ほっとした」「心細い」など、気持ちや感情をあらわす言葉・心情語を意識して、会話をやり取りすると、「自分を表現するにはこんなに多くの言葉があるんだ」と語彙力が増えるとともにコミュニケーション力の取得にもつながります。

言葉遊びも効果的

例えば、「今日のおやつは、なんでしょう?」と質問して「ふわふわしている?」「中には何が入っている?」など、いろいろなやり取りをしていくと、その物を表現する語彙がどんどん使われていきます。

【ステップ②】読み聞かせで「共感力」を

絵本の中には、日常ではなかなか経験できない様々な状況やパターンの物語があります。絵本の読み聞かせを通じて、それらを知ることで「こういうとき、相手はこう思うのか」「この人には、こういう面もあるのか」など、相手の立場を考えられるようになり、共感力につながります。

共感力とは

他の人の状況や感情を理解する力が「共感力」です。共感力を高めることで、相手やテキストが伝えたいことをスムーズに理解できます。

『しろちゃんとはりちゃん』(たしろちさと・作/絵 ひかりのくに)という絵本は、白うさぎのしろちゃんと、はりねずみのはりちゃんが、お互いの考えのずれや、相手が何を考えて行動しているのだろうと想像するさまが描かれています。

『しろちゃんとはりちゃん』(たしろちさと・作/絵 ひかりのくに)

『いちにちおもちゃ』(ふくべあきひろ・作/かわしまななえ・絵 PHP研究所)では、「おもちゃになったらどんな気持ちなんだろう?」と、相手の立場と入れ替わるとどう感じるかを想像することができます。

『いちにちおもちゃ』(ふくべあきひろ・作/かわしまななえ・絵 PHP研究所)

こうした絵本を親子で読むことで「こういう気持ちだったのかも!」と楽しく相手に共感していくことができます。

【ステップ③】Show&Tellで「表現力」を

読解力を身につけるには「語彙力+共感力」で土台作りをし、最後は表現力を磨くことです。その方法でおすすめしたいのが、「Show&Tell」です。では、どのように行えば良いのでしょうか。まずは「表現力」の定義からご紹介します。

表現力とは

テキスト等の情報から考えたことを、的確に説明し伝えるには「表現力」を高める必要があります。

現在、子どもたちの読解力の中でも、この「自分の考えを表現する」部分が低いそうです。そのため文部科学省方針でも今後「自分の意見を述べたり書いたりする機会を充実する」という改善策を推進しています。

参考:文部科学省資料PISA(読解力)の結果分析と改善の方向(要旨)

「Show&Tell」って?

アメリカなどの幼稚園・小学校で行われる、自分の好きなものや興味のあることについて発表する活動のことです。自分の好きなことについて、どう言えばみんなにわかりやすく伝えられるのかを考えることで、表現力が身につくと考えられているそう。

私は、インターナショナルスクールで実際にその様子を見学したことで、Show&Tellによって表現力が大きく伸びていく子どもたちを目の当たりにしました。子どもたちは「自分の好きなこと・もの」についてなら、持っている言葉をフル活用して能動的に話すのです。

家庭で「Show&Tell」を行ってみよう

小さな子からも取り組むことができるので、ぜひ家庭内でも挑戦してみてください。

Show&Tellのやり方

1.テーマ

何について発表するのか、親子でテーマを考えましょう。「好きな食べ物」「お気に入りのおもちゃ」など、身近なものでよいので、「好きなもの」「興味を持っているもの」の中で、その子にとって話したくてたまらないものを探しましょう。

2.発表

決めたテーマについて、家族の前で発表してもらいます。このとき、好きなものや、それに関連したものを見せながら説明すると、実物を描写できるので話しやすく、「どう説明すればいいかな?」とその子も語彙力を駆使して説明することができます。台に乗ってもらうなどセッティングを工夫すると、子どもの気分も盛り上がります。

3.質問

最後に、その子に、発表してくれた物・ことについて質問しましょう。「どんなところが好きなの?」「それはいつから好きなの?」など質問することで、さらにその物についての考えも深まります。終わった時には拍手してしめくくると、その子の達成感にもつながります。

このように、たとえば夏休みの旅行から帰ってきた後、「旅行で一番楽しかったことは何だったでしょうか?」というテーマで発表してもらったり、好きなものの中でも「今日食べたものの中で、一番おいしかったものは何でしょうか?」などテーマを細分化すると、漠然とした考えが明確となり発表もしやすくなります。

伝えることの楽しさを体験して、プレゼン力の土台に

Show&Tellでは自分が発表したことに他の人が応えてくれることで、「伝えることの楽しさ」が体験できます。それは自己肯定感につながり、プレゼン力の土台にもなります。伝えることが楽しいと思うようになると「どうやって話したら、もっと伝わるかな」「こういう説明の工夫をしたら、みんながわかりやすいんじゃないかな」など、語彙力や共感力を総動員して表現を工夫するようになり、さらなる効果が生まれます。

日常のなかで、読解力は育める!

現代の子どもたちに求められる読解力には、「理解する」「考える」「表現する」という要素が必要です。それらの土台をどう育むかを紹介しましたが、
・語彙力
・共感力
・表現力

はこのように、親子の日常生活で意識して取り組むことができます。

ふだんの会話や、日常生活のルーティーンなどに組み込むことで、これからの時代により大切になってくる「読解力」の基礎を幼児のうちから培っていきましょう。

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教えてくれたのは…

 
徳永真紀❘フリーランスの児童書編集者
児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。7歳と5歳の男児を相手に「読み聞かせとは何ぞや」を問う日々。最近は幼稚園・小学校でも読み聞かせおばちゃんとして活動中。絵本ナビスタイルにて「絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力」を連載中。

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