赤血球の基本:小さな赤い世界旅行者
まずは赤血球の基本情報について解説していきましょう。
赤血球とは
血液は「赤血球」「白血球」「血小板」「血漿」の4つの成分で構成されています。そのひとつが「赤血球」で、血液中の血液細胞の一種です。
赤血球のおもな成分はヘモグロビンです。ヘモグロビンは、鉄の原子一個をもつ赤い色素「ヘム」が、球状のタンパク質である「グロビン」と結合したものです。
赤血球の見た目と特徴
赤血球の大きさは、直径7~8μm(1μm=1mmの千分の1)です。お米1粒が8mm程度ですから、その千分の1くらいの小さなものです。
形は、中央部分が凹んだドーナツのような円盤状です。この形により効率よく酸素と結合でき、狭い毛細血管などを素早く通り抜けるために自在に形を変えて通過しやすいというメリットがあります。
体の中での赤血球の数
赤血球の数の基準値は、血液1μLに対して中成人男性は427万〜570万個、成人女性は376万〜500万個です。幼児だと約690万個の赤血球が体の中に存在しています。
赤血球が担う大切な役割
赤血球は、人間が生きる上で重要な役割を担っています。どんな役割があるのか見ていきましょう。
酸素の運搬:肺から全身へ
赤血球は、酸素を全身の組織に運ぶ役割を担っています。赤血球中にはヘモグロビンというタンパク質がふくまれています。ヘモグロビンにはヘムがあり、ヘムには鉄がふくまれているという構造です。それに酸素が結びつくことによって、赤血球は酸素を運ぶことができます。
二酸化炭素の排出:細胞から肺へ
赤血球は、細胞から二酸化炭素を回収する役割もあります。
赤血球中には炭酸脱水酵素という酵素があります。それによって二酸化炭素は重炭酸イオンに変化し、重炭酸イオンは塩素イオンと交換されて赤血球の外に出ます。また、二酸化炭素の一部はヘモグロビンに結びつきます。末梢の毛細血管でこうした工程を経て肺に戻り、二酸化炭素を排出します。
赤血球の生涯:生まれから消失まで
赤血球には寿命があります。誕生から旅の終わりまで、その生涯を解説していきましょう。
骨髄での誕生
赤血球が生まれる場所は骨髄です。骨髄には赤色骨髄(せきしょくこつずい)と、黄色骨髄(おうしょくこつずい)があり、造血機能が活発なのは赤色骨髄のほうです。
赤色骨髄には、血液細胞の元になる幹細胞「造血幹細胞」があります。造血幹細胞は赤血球だけでなく、白血球、血小板、リンパ球など、すべての血球に分化できる能力を持つ細胞です。この造血幹細胞が細胞分裂を繰り返し、いろいろな血球へと変化します。
ちなみに、赤血球が1日で造られる数は約2,000億個です。
旅の終わり:年寄りの赤血球は脾臓や肝臓で役目を終える
赤血球の旅の終わりは、脾臓や肝臓です。ただし旅を終えるのは、古くなった赤血球だけ。脾臓や肝臓では古くなった赤血球だけが選別されてマクロファージの一種である「クッパー細胞」に食べられ、生涯を終えるのです。
クッパー細胞は、食べた赤血球にふくまれるヘモグロビンのなかから鉄分を取り出して骨髄に送ります。送られた鉄分は、新しい赤血球を作るために使われます。
赤血球の寿命
赤血球の寿命は約90〜120日です。赤血球は脾臓や肝臓で役目を終えたのち、胆汁としてリサイクルされます。
赤血球の健康:どうやって元気に保つ?
赤血球を元気に保つ方法をご紹介していきましょう。
鉄分やビタミンB12の重要性
赤血球を元気に保つのには、鉄分が鍵となります。赤血球に含まれるヘモグロビンは、体内に含まれる鉄分が減少すると減ってしまいます。そうすると酸素を運ぶ能力が低下し、頭痛、息切れ、疲労感といった症状や、運動機能の低下を招いてしまうのです。
鉄分のほかにも、ヘモグロビンなどの材料になるビタミンB12やタンパク質、葉酸、鉄分の吸収を高めるビタミンCも大切です。
鉄分、ビタミンB12、タンパク質、葉酸、ビタミンCといった栄養素をふくむ食べ物を、動物性食品・植物性食品をバランス良く組み合わせて食べるようにしましょう。
鉄分を多く含む食べ物:レバー、赤身肉、マグロ(赤み)、サンマ、ほうれん草、サニーレタス、牡蠣、ひじきなど
ビタミンB12を多く含む食べ物:貝類、青魚、岩のり、レバーなど
たんぱく質を多く含む食べ物:肉類、魚介類、卵類、大豆製品、乳製品など
葉酸を多く含む食べ物:ブロッコリー、枝豆、ほうれん草、海藻類、キヌア、きな粉、ドライマンゴー、煎茶など
ビタミンCを多く含む食べ物:ピーマン、キウイフルーツ、ブロッコリー、菜の花、煎茶、焼き海苔など
赤血球増加のサインと注意点
赤血球は多すぎても問題となります。赤血球が増加すると血液の粘調度が増加し、狭心症、脳梗塞、血栓症といった病気を引き起こす恐れがあります。
一方の赤血球減少のサインは、疲労感や動悸、呼吸困難、顔面蒼白、頭痛、めまいなどが挙げられます。このような症状が出た場合には貧血が疑われますので、前述した鉄分、ビタミンB12、タンパク質、葉酸、ビタミンCといった栄養素を積極的に摂取しましょう。
健康的な生活習慣と赤血球の質
赤血球にも質の良し悪しがあります。質の良い赤血球は、色が濃く形が整っているものです。一方、質の悪い赤血球は、色が薄く、小さかったり形が歪んでいたりします。赤血球の量と質が低下すると、貧血を招くため注意が必要です。
また、喫煙することで赤血球は酸欠状態になってしまいます。喫煙によって一酸化炭素を大量に吸い込むと、赤血球が増加し、血液がドロドロの状態になる恐れがあります。
赤血球の質をよくするためにできることのひとつが運動です。運動することで、赤血球の生産を活発にすることができます。これは運動によって内臓機能が回復し、鉄分の吸収を高められるためです。適度な運動を習慣づけましょう。
良い質の赤血球にするために、以下のような生活習慣を心がけましょう。
●食事で、鉄分、ビタミンB12、タンパク質、葉酸、ビタミンCといった栄養素を積極的に摂る。また赤血球の柔軟性を向上させる効果がある、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を多く含む食べ物を摂取する(いわし、さば、さんまなどの青魚)。
●適度な運動をする。
●禁煙する。
生きていく上で重要な役割を担う「赤血球」
赤血球には肺から取り込んだ酸素を全身に運んだり、細胞から肺へ二酸化炭素を排出したりする役割があります。これは、人間が生きていく上で重要な役割です。また骨髄で生まれた赤血球は約90〜120日もの間、体の中を絶えず動きまわり、古くなると脾臓や肝臓で役目を終えます。
そんな一生を過ごす赤血球は、小さな赤い世界旅行者です。赤血球を元気に保つためにも、食事に気をつけて適度な運動を心がけましょう。
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文・構成/HugKum編集部